“神の子”ことアルゼンチン代表FWリオネル・メッシの戴冠で幕を閉じたFIFAワールドカップ(W杯)カタール2022。イタリア紙『Il Giornale』は、約1カ月間にわたった戦いの中で生まれたさまざまなドラマを回想し、今大会を彩ったシーンを紹介した。
モロッコ代表ジャワド・エル・ヤミクのオーバーヘッドシュートや王者アルゼンチンのサウジアラビア戦の敗戦、長すぎるアディショナルタイムやポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウドの涙、史上初の女性主審などとともに、日本代表にまつわる2つのエピソードも選出された。
まずはエピソードの紹介に先駆け、スペインやドイツと同居するE組における日本代表の快進撃に言及している。アフリカ勢初のベスト4進出を果たした「モロッコの感動的な躍進が多くの人々の心に刻まれたはずだが、アジアで開催されたW杯におけるサムライブルーも引けを取らない」と指摘。「日本はドイツやスペインのような世界王者の2チームを倒すという不可能に見えた偉業を成し遂げた」と称えた。
ピッチ外の振る舞いが称賛された日本
その上で、森保一監督がベスト16のクロアチア戦で敗れた後に見せた“お辞儀”を、今大会を代表する”忘れられない瞬間”の1つに選出。「(PK戦での敗退に)監督はどのような反応を見せたのか? 選手たちへの応援を決して欠かさなかったファンへ向けて、深いお辞儀をしたのだった」と振り返った。
また森保監督の“お辞儀”だけでなく、「我々は日本の選手たちの美しいロッカールームや礼儀正しさを忘れることはないだろう」と述べ、チーム全体のピッチ外の振る舞いを称賛。同時に日本代表のピッチにおける実力も認め、「だが遠くない将来、日本はW杯においても実力を示すことができるはずだ。本当にあとわずかだ」と綴り、4年に1度のサッカーの祭典において、より重要な結果を出せる日が近いことを示唆した。
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続いてスペイン戦における田中碧のゴールシーンのVAR判定のエピソードも、大会を象徴するシーンの1つとして紹介されている。「テクノロジーを駆使したW杯になるはずだったが、物議を醸す判定もあった」と指摘。わずか“1.8ミリ”でインが認定された三笘薫の折り返しに言及し、「ファンが受けた印象と機械の判定に大きな差があった」と振り返った。
だが「みんなにはアウトに見えても有効なゴール」であり、「こうしたエピソードのおかげでサッカーの将来が決まる」と指摘。「好き嫌いは別として、テクノロジーはサッカーの一部であり、後戻りすることはない」との見通しを示した。
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伊メディア選出の“覚えておくべきW杯の瞬間”
また、イタリア『Sky Sport』もカタールW杯における「覚えておくべき瞬間」を特集。イタリア紙と同様に三笘の折り返しや「日本の礼儀正しさ」を挙げた。「『キャプテン翼』のようにW杯で優勝することはないかもしれないが、喜びを与えてくれた。折り紙を添えた美しいロッカールームを通して礼儀正しさも教えてくれた」と振り返った。
さらに「SF映画の筋書きのよう」なシーンとして、E組最終節の3分間、日本とコスタリカがスペインやドイツを相手にリードを保ち、強豪2カ国の同時敗退の可能性があった瞬間を挙げた。「列強2カ国の通過が当たり前と見られていた“死の組”において、ほぼ考え難いことが起きた。W杯らしい狂気だった」と綴った。