「トータルで考えても、やっぱり納得していない」
ここまでの自身のパフォーマンスを振り返り、鎌田大地は悔しさを口にした。
フランクフルトでの活躍もあって大きな期待を受けてカタールの地に入ってきたが、3試合で得点もアシストもゼロ。W杯前にチームの戦い方に変化が生まれたことも関係しているが、「僕自身の能力や力に疑いはないし、ここ数年やってきたことに対しても自信がある」と、この夢舞台で自身の力を証明しようと意気込んでいただけに、不甲斐ない出来に至っている現状を良しとしていない。
「自分自身もっとできるというふうに思っていたし、できないと駄目な選手だと思うので。ドイツ、スペインに関してはボールを握れる展開があまりなかった中で、ボールを触ってる回数も明らかに少なかった。あれだけ守備に走っていたら攻撃の時にパワーを出せないのは普通のことだと思うけど、やはりコスタリカ戦は良くなかったと思うし、もっとできると思っている」
「いつも言っているのは、僕はスペシャルなものを持っていないし、自分1人でどうにかできる選手ではない」と説明するように、もともと個人で打開してゴールを切り開いていくようなタイプではない。周りとうまく連動しながら前に出ていき、高い位置で違いを示すことに長けているのが鎌田である。
そのため今大会の日本が志向する攻撃よりも守備に重きを置き、いい守備からいい攻撃を目指していくスタイルだと、なかなかチャンスに絡む回数が減ってきてしまう。攻守のバランスの取り方が非常に難しいのだ。
それでも、1試合で評価がガラリと変わるのがサッカーでもある。特にW杯のような大舞台では、1つのゴールで一気にヒーローになることだってできる。だからこそ、結果が出ていないことに焦るのではなく、鎌田は目の前の試合に焦点を当てている。
「W杯というのは次の試合で1点でも決めれば、またすぐ全てが変わるだろうし、結果が全ての大会、結果で全てを変えられる大会でもあると思っている。もう1試合できることは自分にとってもプラスなことだし、チャンスが来たら決められたらいいなと思います」
過去を振り返っても、代表で考えれば決してエリートだったわけではない。何度も難しい時期を過ごしては、それを乗り越え、一歩ずつ前に進んできた。もちろん、ここで結果を残すことができれば最善ではある。ただ、結果が出ないからと言って全てが終わるわけではない。いま必要なのは何なのかをしっかりと捉え、クロアチア戦に挑もうとしている。
「このW杯で自分が活躍できなくても、日本が新しい歴史を刻めれば、僕はいいと思う。このW杯をすごく大事に思っている一方で、これがすべてではないというのもあるので。今は個人というよりもチームにフォーカスを当てて、日本のためにプレーできればいいかなと思います」
3度、挑戦して届かなかったベスト16の壁。その壁を乗り越えるためには、さらに先を見据える鎌田の力が必要だ。
文・ 林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。