世界を驚かせる大逆転劇となった“ドーハの奇跡”。FIFA ワールドカップ カタール 2022グループE第1節のドイツ代表戦で日本代表が勝利できた要因を分析した。
この試合のターニングポイントを求められた解説の戸田和幸氏が「一言で表現できますかね?」というように逆転勝利に要因は様々だ。その中でも戸田氏は「45分間の我慢」を紹介した。
この試合の日本代表は、ボールを保持するドイツ代表に押し込まれる場面が目立った。ドイツは最終ラインを3枚にし、日本の右サイドではダビド・ラウムが高い位置を取って、ジャマル・ムシアラとのコンビで押し込んでいく。さらにトップ下のトーマス・ミュラーが右サイドに張り出してセルジュ・ニャブリとの関係性を強化するなど、ピッチをワイドに使う攻撃を見せた。
前半45分の戦いぶりついて戸田氏は「保持が20%を下回っていることからもわかるように、かなり苦しかった。前半はうまくいってない場面が多かった」と、日本代表が戦術的な問題を抱えたまま戦っていたことを指摘する。
しかしそれは後半への布石だったようだ。
「うまくいっていない中で、前半の途中に変更してもよかったはず。しかしそれを我慢して、ハーフタイムに変更することを決断した。この決断をいつするかが重要。前半に変更してしまうと、ハーフタイムでドイツに対策されてしまう。だから森保監督はハーフタイムまで我慢した」
後半に入ると日本は冨安健洋を投入して3バックにシステムを変える。さらに三笘薫、浅野拓磨、堂安律、南野拓実などアタッカー陣を次々と送り込むと、堂安が同点ゴールを奪い、浅野は決勝点を挙げた。
「日本はそれほど長く3バックでプレーしていない。だからドイツも対応するのが難しかったはず。もしかするとこれは元々日本が持っていたプランかもしれない。前半をどれだけロースコアで粘れるかだった」
圧倒的に押し込まれながらもロースコアで我慢した選手たち。その苦しい状況を目の当たりにしながらも後半の逆転に向けて戦術的変更を我慢した指揮官。2つの我慢によってもたらされたドーハの奇跡だった。