ローマの指揮官ジョゼ・モウリーニョが19歳の逸材MFベンジャミン・タヒロヴィッチを手塩にかけていることは、長らく前から明らかだった。遡ること昨年11月13日のトリノ戦でセリエAデビューを飾ったタヒロヴィッチ。「トップチームの練習に参加し始めてから大きな成長を見せている」とスペシャル・ワンが語ったように、まもなくセリエAの舞台で先発出場のチャンスも訪れるはずであることを予感させていた。
FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022開催によるリーグ戦中断期間中の日本ツアーにおいて、ポルトガル人指揮官は、名古屋グランパス戦および横浜F・マリノス戦で愛弟子を連続して先発起用。リーグ戦再開へ向けた準備を進めると、再開初戦となる今年1月4日、タヒロヴィッチの運命の瞬間がやって来た。
若きスウェーデン人MFは、スタディオ・オリンピコで行われた第16節のボローニャ戦において試合開始からピッチに立ち、念願のセリエA先発デビューを果たしたのだった。Getty
ベンジ・タヒロヴィッチとは何者か?
タヒロヴィッチは2003年3月3日、ストックホルムに生まれ、AIKのサッカースクールでキャリアを歩み始めた。そして2017年のユルスホルム移籍を経て、2020年にスウェーデン3部のヴァーサルンドに加入すると、チームの中心選手へと成長。スーペルエッタン(スウェーデン2部リーグ)への昇格に貢献した。するとローマは、モウリーニョの後押しを受け、すぐさま逸材の確保へと動いた。
2021年冬の移籍市場終盤にローマへの移籍が決定したタヒロヴィッチ。ボスニア・ヘルツェゴビナにルーツを持つ若きスウェーデン人FWは、憧れの存在であるエディン・ジェコ(2021年8月にインテルへ移籍)とチームメートになれることに心を惹かれ、ローマ以外のチームへの移籍は望んでいなかった。入団直後には、両親と同じサラエボ出身のセンターフォワードと真っ先に記念撮影を行ったことも必然と言える。
スウェーデン3部からの飛躍
タヒロヴィッチは、スウェーデン3部のクラブから世界に名だたるセリエAの名門ローマへと衝撃的な電撃移籍を果たした。本人は「楽しくもあり、ショッキングでもある」ステップアップだったと振り返るが、モウリーニョ指揮下のローマは昨シーズン、UEFAカンファレンスリーグを制してクラブ史上初となるヨーロッパタイトルを獲得しており、スウェーデン人MFはまさに夢の舞台へと大きな飛躍を果たしたと言える。
19歳らしいフレッシュさと健全な強引さを持ち合わせ、地方のクラブ出身らしく、常に笑顔を欠かさず、謙虚で礼儀正しい姿勢を見せる。それでも「ローマにやって来たのだから、ユニフォームが学校やピッツェリアに飾られるような選手になりたい」と語るなど、野心も内に秘めている。(C)Getty Images
兄の背中を追いかけて実現した夢
ベンジャミンがサッカー界において、これほどのレベルに到達できた背景には、兄アディの存在がある。幼いベンジャミンは、試合や練習のピッチにおいて自身の背後でDFとしてプレーする兄を尊敬し、サッカーへの情熱をかき立てられた。そんな彼がローマ移籍後、ホームシックになり、無許可で2週間にわたってスウェーデンに“逃避”して罰金処分を受けたことは、想像に難くない。
その後、ローマに戻った19歳は、プリマヴェーラ(U-19)において最高レベルのプレーとパフォーマンスを披露して才能を輝かせると、ついにはメンターであるモウリーニョが率いるトップチームへの昇格を果たした。
「僕はこのために人生をかけて努力してきた。夢が叶った」と語ったタヒロヴィッチ。だが若きMFは、さらなるステップアップを目指す。まるで偉大なカンピオーネ(王者)のように「僕の長期目標はバロンドールを獲得することなんだ」と壮大な夢を掲げ、はるか遠くを見据えている。
文・マウリツィオ・ペッリエッロ/イタリア人フリージャーナリスト。『ダゾーン・イタリア』のほか『Tgcom24』などにも寄稿。
タヒロヴィッチのセリエA先発デビュー戦ハイライト
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