AFC U20アジアカップウズベキスタン2023における若きサムライたちの挑戦は、PK戦の結果として準決勝での敗退が決まった。ただ、彼らの戦いはまだこれで終わったわけではない。
試合終了後、チームの総務担当者は慌ただしく航空券の手配に追われていた。ウズベキスタンから日本に至る航路は限定的で、便数は少ない。このため、まとまった空席を探すのは難しいのだが「週末のJリーグに出場する可能性のある選手だけでも優先して帰してあげないといけない」(代表スタッフ)からだ。
逆に言えば、Jクラブ側から「早く帰ってきてチームの力になってくれ」と願われる選手が多数いるということでもある。
今回は、大会を彩った選手たちの中からJリーグでの活躍が期待される選手を紹介してみたい。主将を務めて攻守に奮戦したMF松木玖生(FC東京)のようにJ1でレギュラーとなっている選手もいるが、そうでない選手も数多い。期待も込めて、ピックアップしてみた。
現地の人々も魅了した「NAOKI」
(C)Getty Images
攻撃陣で最初に名前が挙がるのは、やはりFW熊田直紀(FC東京)だろう。
大会5試合で5得点は準決勝終了時点での暫定得点王でもある。その荒々しくもダイナミックなプレーぶりはウズベキスタンの現地の人々も魅了しており、女性の会場スタッフが「NAOKIと一緒に写真を撮れないかな?」と言ってきたり、カメラマンが「NAOKIのシャツが欲しいんだけど」と頼んできたりすることも。PK戦で熊田が登場すると、「NAOKIだ!」と中継スタッフが盛り上がったりもしていた。
他にも、準々決勝のU20ヨルダン戦後、アジアサッカー連盟(AFC)のスタッフはMOMの選考が不満だったようで、「絶対に18番が一番良い選手だろ? お前もそう思ってるだろ?」と言ってきたこともあった。
観ていて華のある選手なのは間違いない。今大会、二度にわたって“未遂”に終わっているバイシクルシュートにしても、そもそもこのアクロバチックシュートにトライすることが日常になっている選手は熊田以外だと『キャプテン翼』くらいだろう。特別な身体能力と空中感覚を持ち、実際にこの高難度シュートを決めてきた実績があってのプレー選択である。
「クロスに合わせるのは得意なんで」という言葉は一般的にヘディングシュートが得意という意味だが、熊田の場合は足でも頭でも「どっちでもいい」というタイプ。「高さとか強さの部分では通用した」と胸を張ったように、海外勢に当たられてもびくともしない身体的な強さと合わせて、クロスから点を取れるフィニッシャーとして機能し続けた。
もちろん「もっと決め切らないといけない」と反省の弁を残したように、すべてが完璧なプレーだったわけではない。前線からの守備という面も含めれば、「まだトップレベルには足りない」という評価をされてしまうかもしれない。ただそれを補って余りある魅力があるのも確かで、個人的にはJ1のピッチで早く観てみたい気持ちもある。
どうしてもJリーグのクラブはセンターフォワードに外国人選手を置きがちで、このポジションで若手ストライカーがチャンスを掴むのは難しい。セカンドトップタイプで起用される日本人選手は珍しくないが、J1で主軸を張る本格派の日本人FWは数えるほどしかいないのが現状だ。そして、その難しさゆえにストライカーが育たず、外国人ストライカーに頼ることになるという悪循環も生まれているように感じる。
熊田がその殻、あるいはその壁を破る選手になれるかどうかは当然ながら「ここから」の話である。
「チームで結果を出して信頼を掴まないといけない」
そう語る熊田にとって今大会の経験も財産になるかもしれない。かねてから「途中出場は難しい」と言っていたが、今大会は途中からでも出れば結果を残す選手として確実なインパクトを刻んだ。FC東京でも正直いきなりのスタメン確保は難しいだけに、まずは途中交代で結果を残していくしかない。その点で今大会の経験もきっと生きてくるはずだ。
味の素スタジアムに「熊」の咆哮が響き渡る日を静かに待ちたい。
文・川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開し、現在に至る。
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