ロベルト・マンチーニ率いるイタリアは、1年遅れで開催されたEURO2020でヨーロッパの頂点に立ったものの、数カ月後に行われたFIFAワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフで北マケドニアに敗れて敗退。2大会連続でW杯出場を逃すどん底を味わった。
イタリア代表指揮官は、アッズーリの再建を図る中、数多くの若手を抜てきしてきたが、センターフォワードの人材不足に悩まされている。今月、スタートしたEURO2024予選では、イタリア系アルゼンチン人のFWマテオ・レテギを南米から呼び寄せる策に出た。
そんなイタリア代表の状況について、『ダゾーン・イタリア』のステファノ・ボルギ記者がポッドキャスト番組「Night Cup」で見解を示した。イタリア人記者は、マンチーニがレテギの招集を説明する際に指摘したように、南米ではストリートサッカーが健在である一方、イタリアでは放課後にサッカーをして遊ぶ土壌が失われてしまったことが問題の根底にあると指摘する。
「イタリアのカルチョは問題を抱えている。プレースタイルもそうだし、アイディアの展開もそうだ。だが、それに加えて根本的な問題がある。まさにマンチーニが指摘した通り、道端でサッカーをする子どもたちがいなくなったことだ」
「道端と一括りにしたが、地域の公園のグラウンドや教会付属の青少年の施設などを含め、サッカーをして遊ぶ子どもたちがいなくなったことが、この議論の出発点と言えるだろう。マンチーニの話は、まさに真実だ」
「確かにサッカースクールはあるが、マリーシアの技術やサッカーのセンスなどは、公園などで日常的にサッカー遊びをすることから生まれる。私自身も教会付属の施設のチームで練習をしていた。5歳から25歳まで年齢の異なる若者が集まって、丸一日プレーしていたものだ。そこで情熱など、すべてが生まれたと言える。だがもはや現在は、その施設に誰もいない状況だ」
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消失した素朴なカルチョ
元インテル指揮官のアンドレア・ストラマッチョーニ氏も、同様の問題点を指摘している。サッカーを代表する偉大な王者たちは、かつて朝から晩までプレーすることで選手としてのDNAを身に着けたものだが、現代は難しい状況だ。
「一般的な話として、子どもたちの放課後の娯楽が変わったのだろう。1976年生まれの私の世代は、放課後にずっとサッカーをして遊んでいた。私自身も地域の教会の施設に通ってプレーしていたよ。ローマ出身の同世代の者はみんなそうだ」
「ファビオ・リヴェラーニは私と同じ施設に通っていたし、フランチェスコ・トッティやアレッサンドロ・ネスタ、マルコ・ディ・ヴァイオも別の施設でプレーしていた。みんなが放課後、地域で朝から晩までプレーして楽しんでいた。そうしてボールを触ることが、技術の根底にある」
「もはや純粋で素朴なサッカーは存在しない。だがまさにその素朴なサッカーこそが選手のDNAに刻みこまれるものなのだ。偉大なサッカー選手たちが道端でボロボロのサッカーボールを蹴り、キャリアをスタートさせていたことは、偶然ではないだろう」
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下部組織の指導法の問題
ただ、過去10年間でスマートフォンやオンラインゲームなどが急速に普及し、子どもたちの放課後の過ごし方が大きく変化したのは、イタリアだけではないはずだ。ボルギ記者は、イタリアの育成年代における指導方法にも「言うべきことが山ほどある」として問題点を主張。ストラマッチョーニ氏の意見を紹介した。
「サッカースクールにおいて、子どもたちに特化したコーチが少なくなっている。例えば、9歳から10歳とか、10歳から12歳とか、12歳から14歳などのグループに分けるが、成長過程にある選手たちと異なる野心や目標を持った指導者が担当する場合がある」
「すなわちトップチームを指導したいという目的があるから、子どもたちを指導しているという指導者たちのことだ。すると子どもたちに対して成人向けの指導をしてしまい、その年代において重要な基礎の部分がなおざりになってしまう。そうしたことは、後で学び直すことはできない。これはまるで、大学の教授や高校の先生が幼稚園で教えるようなものだ」
「それは違うんじゃないだろうか。幼稚園ではアルファベットを教えるべきなんだ。基礎を教えることに特化したコーチや監督が少なくなっているように感じている。大人に指導し、結果を出すことを目的としている者は、トップチームか、より年長の若者を指導するべきだ。これは非常に重要なテーマだと考える」
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