かつてインテルやウディネーゼの監督を務め、その後はギリシャやチェコ、イランやカタールなど世界各国を渡り歩いたアンドレア・ストラマッチョーニ氏。昨シーズンは『ダゾーン・イタリア』で解説者を務めたローマ出身の指揮官が、フィールドプロデューサーのフランチェスコ・フォンターナ記者のインタビューに応じてくれた。
ストラマッチョーニ氏が見たユーヴェ、ラツィオとローマ
――ユヴェントスは昨シーズン、3位インテルに並ぶ72ポイントを獲得したが、前経営陣の不正問題により10ポイントが剥奪され、7位で終えた。UEFAによる調査が行われるなどクラブが特殊な時期を過ごしていることも踏まえると、矛盾するかもしれないが、2023-24シーズンはUEFAカンファレンスリーグ(UECL)に出場しない方がクラブにとって得策ではないだろうか。
ユヴェントスというチームである限り、私は賛同できない。数百万人のファンがいる世界中に名の知れたクラブなんだ。ヨーロッパの大会なら、UECLであっても、ヨーロッパの大会であることに変わらない。
重要なのは、どのようにプレーするかという明確なアイディアを持つことだ。優勝を目指したいのなら、それに見合った強く、厚みのある組織が必要だ。さもなければ、マウリツィオ・サッリのラツィオのように取捨選択し、欧州カップ戦では出場機会の少ない選手にチャンスを与え、若手を抜てきする。そしてリーグ戦に集中するなどね。
――ラツィオは、リーグ戦2位の好成績を収めたが、UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)で戦うためには、レベルの高い補強が求められることになるはずだ。
まったくその通りだ。昨シーズンは、試合中に交代要員がいないということもあった。ただ、サッリがいつも同じ13~14人ばかりを使っているという批判には賛同できない。ほとんど変えないということは、他の選手がそのレベルにないということを意味する。
チェルシー時代はそうでなかったはずだ。高いレベルの選手が16~17人くらいいたからね。現在のラツィオでは、レギュラークラスの選手をあと3、4人補強する必要がある。
――ローマとジョゼ・モウリーニョは、2023-24シーズンも共に歩むことを決めた。
ローマは、ラツィオのケースとは異なる。UEFAヨーロッパリーグ(UEL)が佳境に入ったところから、セリエAでポイントを取りこぼした。それでもジョゼの仕事は、極めてポジティブだったと言える。好きか嫌いかは別として、彼の指揮下で技術・戦術面に関して明確なアイデンティティが戻ってきた。
ローマの熱狂はものすごく、昨シーズンは何度もチケット完売になるなど並外れたものがあった。さらに2シーズン連続で欧州カップ戦の決勝へ進出したことで、ローマは名目上、ヨーロッパクラスの重要なクラブに戻ったと言ってもよいだろう。
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アタランタの“今夏のビッグディール”
――アタランタは、ジャン・ピエロ・ガスペリーニの元で8年目のシーズンを迎えることになる。
私はクロトーネで2年間一緒に仕事をしたが、彼はマエストロだ。あの時、ガスペリーニはユヴェントスの下部組織の指揮官を退任した後で、プロチームの監督として初めての経験に臨んだところだった。当時のチームでは、とある(イヴァン)ユリッチもプレーしていたよ。私の役割は、下部組織のスカウトだった。ローマに住んでいた私は、他の州まで足を運び、若手選手を発掘していたんだ。私にとって重要で素晴らしい経験だったよ。
ジャン・ピエロは、時代の流れに合った素晴らしい世代交代を行いながら成功を収め、アタランタの歴史を刻んだ。これが違いを作り出すんだ。それから戦術的な話をすると、彼の3-4-3のシステムは、非常に攻撃的であり、唯一無二と言えるだろう。
オーナーのほか、(元ディレクターのジョヴァンニ)サルトーリや(現SDのトニ)ダミーコの協力もあり、次から次へと賭けに勝利し、ほぼ常にリーグ戦で上位を維持することができた。最近、彼に会ったが、幸せそうだったし、やる気に満ちているように見えた。ラ・デア(女神の意味でアタランタの愛称)は常に存在感を示すはずだ。
――今夏、アタランタの育成部門責任者に元インテルのロベルト・サマデン氏が就任した。アタランタにとって、“今夏のビッグディール”と言えるかもしれない。
彼は若手に関してブルーノ・コンティに並ぶトップの存在だ。私はインテルで一緒に過ごした経験があるが、有能でプロ意識が高く、本当に最強の人物だ。ミラノからベルガモへ移ったが、その距離が近いことに注目するべきだ。彼はアマチュアのクラブも含めて、この地域について並外れた知識を持っているからね。
ところで彼の最大の功績を知っているかい? トロフィーを獲得することよりも、若者の成長を優先してきたことだ。もちろんスクデットやトルネオ・ディ・ヴィアレッジョのタイトルを持ち帰ること自体、素晴らしい成績ではある。だが、サマデンにとって、選手の成長は、優勝よりも決定的に優先すべきことなんだ。これが理解できない人はいるかもしれないね。
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みんなが気づかないイタリアの才能
――イタリア代表は、2大会連続でFIFAワールドカップ(W杯)出場を逃すなど、低迷が続いている。
イタリア代表やイタリアのカルチョについても話をするべきだろう。アッズーリには、数年前までいたようなカンピオーネ(王者)がいない。この状況を改善するためには、イタリア人サッカー選手を優遇するようなルール作りが必要だ。
UEFA U-21欧州選手権(イタリアはグループステージ敗退)は不運もあった。問題ははるか遠くに原因がある。例えば、イタリア国外出身の外国人選手がやって来て、強い選手に成長するのはよいことだが、プロ契約を結ぶ直前の16~17歳まで登録できないようにするべきだ。
簡単でないのはわかっているが、トップチームの20~22人や先発メンバー11人のうちの6、7割をイタリア人選手にするよう義務付けて優遇するべきだ。イタリアのあちこちで、みんなが気づいていない数多くの才能が眠っているはずだ。
――昨シーズンは、インテルやローマ、フィオレンティーナがそれぞれUCL、UEL、UECLの決勝へ進出したが、いずれもタイトル獲得を逃した。
イタリアのカルチョ全体の状況とは一線を画すエピソードだ。この3チームの決勝進出は、成功としてとらえるべきであり、拍手を送るべきだ。ローマは、おそらく決勝トーナメントで最高の試合を演じている時に、審判団に関して極めて不運だったと言える。
フィオレンティーナは試合の主導権を手にしていたが、ケガの代償を払った。インテルは試合前から敗色濃厚だったが、戦術で世界一のジョゼップ・グアルディオラを困難に陥れた。イタリアのチームは、他リーグのチームよりも予算が圧倒的に低いにもかかわらず、存在感を示すことができた。この調子で継続性を見せなければならない。
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