現役時代にイタリア代表としてプレーしたアレッサンドロ・マトリ氏やリッカルド・モントリーヴォ氏、マルコ・パローロ氏と、元スイス代表のヴァロン・ベラーミ氏ら『ダゾーン・イタリア』の解説陣が「Tutti Bravi Dal Divano」の番組内で“イタリア代表”について語った。
失われた野心と価値観
かつて2011年から2015年にかけてアッズーリの一員であったマトリ氏は、当時の代表チームと、現在のルチアーノ・スパレッティ指揮下のチームを比較した。
「私にとって、イタリア代表に招集されることは最大の目標だった。自分の国の代表となり、ファンを1つにまとめる存在だからね。残念ながら出場数は多くなかったが、招集されるかもしれない雰囲気があった時は、ワクワクし、興奮していたよ。自分が招集メンバーの23人に含まれているのかどうか、発表が待ち遠しかった」
「だが近年、こうした感覚は失われつつある。以前は、すでに完成した選手を招集する傾向にあったが、招集メンバーが23人よりも多くなり、若手選手もテストで呼ばれるようになった。代表に対する野心、価値観が失われたように思う」
2010年FIFAワールドカップ(W杯)やEURO2012へ出場した経験を持つモントリーヴォ氏も、現在の代表に対する温度差を感じている。
「私は2006年W杯終了後の2007年に招集されたが、当時の招集人数は23人だった。そしてベンチに入れたのは18人で、残りの5人はスタンドに行かなければならず、ユニフォームすら与えられなかった」
「だからこそ、当時は代表戦へ出場することを切望していたものだ。現在は招集人数が27人になり、一定レベルのリーグで2シーズンの経験があることさえ、求められなくなった。そうなれば、当然、代表招集の価値は下がる。スパレッティにとって、最大のミッションは、選手たちの代表招集への意欲やハングリー精神を取り戻すことだ」
2014年W杯やEURO2016でイタリア代表の一員だったパローロ氏は、招集メンバーが増えたことで、チームとしてのアイデンティティがあいまいになったと指摘する。
「イタリアが良い成績を残せたのは、(チェーザレ)プランデッリが率いた時のEURO2012のように、常にグループとしてまとまっていた時のように思う。つまり1つのチームとして完成していた。招集が23人の時は、誰が呼ばれるか事前にみんながわかっていて、アイデンティティもはっきりしていた」
「しかし招集人数が増え、アイデンティティが失われ、代表の一員となることへの意欲も失われていったように思う。合宿所のあの雰囲気の中に足を踏み入れ、一緒に過ごすことからも、違いが生み出されていたと感じる」
(C)Getty images
続いて元スイス代表MFのベーラミ氏も、アッズーリの変化について、自身の見解を示した。
「元スイス代表として外部から見たかつてのイタリア代表には、アイデンティティがあった。偉大な選手たちが揃っていて、招集されるのは難しい。代表までたどり着いた選手は、本当に強い選手ばかりだった。その後、アッズーリに何らかの変化が起きたが、世代交代によるものなのか、誰でも呼ぶようになったからなのか、その背景はわからない」
「まず代表は、よいグループでなくてはならない。しかし選手たちが一定の年齢に到達すれば、若手よりもモチベーションの低い33~35歳くらいで選手を外すなどして、何かを変えていく必要はある。つまりスパレッティのようなリーダーを中心として再出発するのは、正しい道であるように思う」
イタリアのFW不足の背景は?
かつては、名だたるセンターフォワードを輩出し、FWの人材に溢れていたイタリア。しかし近年は、CFの才能の発掘に苦戦している。日本時間15日のマルタ戦および18日のイングランド戦に挑むスパレッティのメンバーの中で、誰が前線で中心的役割を担えるだろうか。
ベラーミ氏は、自身のチームメートでもあったジャンルカ・スカマッカの名前を挙げつつ、有望な選手の多くが移籍先の選択に失敗することで、才能の開花に手間取っていると指摘した。
「スカマッカは、並外れたクオリティを持っている。ただ、自身の能力を十分に発揮できていない。こうした選手たちの多くは、移籍先に失敗している。スカマッカはウェストハムへ移籍したが、失敗に終わった。正しい選択は、ジェノア→サッスオーロ→アタランタだったはずだ。他にも中間ステップを上手く踏めなかった選手たちは多い。そこで何か失うものがあるように見える」
「イタリアには、才能ある選手が数多くいるが、すぐにビッグクラブへ行こうと急いで選択して失敗している。選択ミスをしたことで、すぐさま重要な選手となれる機会を逃しているが、その数年間が重要なんだ。みんな上手い選手なので、いずれ目標に到達できるだろうが、こうした選択ミスが選手の成長にかなりの影響を与えているように見える」
Getty
また、『ダゾーン・イタリア』の解説陣は、アッズーリが先月、因縁の北マケドニアを相手にEURO2024予選でも苦戦したことに言及しつつ、ヨーロッパ全体のレベルが向上している点に注目した。
パローロ氏は「イングランド戦は重要なテストだ」と強調する一方、「ヨーロッパ全体の平均レベルが向上し、どの代表チームも強くなった」と指摘。すると、モントリーヴォ氏も、「才能ある選手が集まり、常識を超えているフランス以外、とびぬけたチームが見当たらない」と見解を示し、「イタリアは、調子の良い時は相手がどんなチームでも勝てるが、悪い時は、どんな相手でも負ける可能性がある」と述べた。
放送・配信予定
- イタリア vs マルタ : グループC 第7節
- 配信:DAZN
- キックオフ:2023年10月15日(日)日本時間3:45
- 会場: スタディオ・コムナーレ・サン・ニコーラ
- イングランド vs イタリア : グループC 第8節
- 配信:DAZN
- キックオフ:2023年10月18日(水)日本時間3:45
- 実況:野村明弘
- 会場: ウェンブリースタジアム
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