日本代表MF鎌田大地が所属する7位ラツィオは日本時間4日、セリエA第11節で8位ボローニャと敵地で対戦。前半に作り出した好機を活かせずにスコアレスで折り返すと、後半開始直後、リーグ戦10試合連続無敗の相手に先制点を奪われ、そのまま0-1と敗れた。
鎌田は、リーグ戦7試合連続でベンチスタートとなったが、ボローニャが左サイドの2人を入れ替えた直後の81分、対面する右サイドでグスタウ・イサクセンとのセットで途中出場。マテオ・ゲンドゥージに代わって右インサイドハーフで試合終了までプレーした。
日本代表MFはミスによりボールを奪われたシーンがあった一方で、88分に自陣エリア手前でジョシュア・ザークツィーからボールを奪取し、味方のカウンターの起点になるなどのプレーも見せた。
伊解説陣が見たラツィオの敗戦
『ダゾーン・イタリア』で試合の実況と解説を担当したリッキー・ブスカーリャ記者は、鎌田らが投入された直後のプレーに注目。日本代表MFも加わった相手陣内でのラツィオの細かいパスについて「まるで蜘蛛の巣のようだ」と表現した。
しかしボローニャの堅守により攻めあぐね、同席した元イタリア代表DFのマヌエル・パスクアル氏は、「スペースを見つけるのは難しい。ボローニャは事実上、ほぼ4-5-1の形で引いて守っていて、そうなるとラツィオはサイドから攻めるしかない」と得点につながらなかったこのシーンを説明した。
またスタジオ解説を務めたラツィオOBのファビオ・バッザーニ氏も、スタディオ・レナト・ダッラーラにおける古巣の敗戦を分析した。
「今日の試合は、二面性のある奇妙な一戦だった。ラツィオの試合への入り方は良かった。素晴らしいプレスとボール奪取で試合をこじ開け、2-0と勝利したサッスオーロ戦と同じような立ち上がりだった。だが今日は、相手の脅威となることができなかった」
「前半のラツィオは、試合の主導権を握っていてボローニャが大きな困難に陥っているように見えたが、その時間帯を活かすことができず、収穫がないまま、後半開始直後に冷酷なゴールを決められてしまい、試合の運命が変わった。まるでチェスのように戦術的で拮抗した試合において、ボローニャの先制点が試合のバランスを動かしたと言える」
「その結果、ボローニャは大きな自信を得たうえ、守備ラインを下げてプレーすることが可能になり、ラツィオにとって厳しい試合になってしまった。ボローニャが引いて守り始めてスペースがないところに、ラツィオには縦を狙う選手がいなかった」
(C)Getty images
わずか9タッチで運命を変えた戦術の一手
さらにバッザーニ氏は、後半の開始直後のボローニャFWルイス・ファーガソンの得点シーンに注目した。チアゴ・モッタのチームは、試合再開からわずか9タッチでゴールネットを揺らしたが、元ラツィオFWは、この1プレーが戦術的に研究されたものであったと解説した。
「ゲンドゥージが最終ラインへプレッシャーをかけに前へ出た。すると中盤の要である(レモ)フロイラーはサイドへ開く。この動きに(ニコロ)ロヴェッラは対応できず、(マヌエル)ラッザリが連れ出される形になった。そうなると(アレクシス)サーレマーケルスの前にスペースが開く。ラツィオはマークをずらさざるを得ず、続いて(ファーガソンへアシストした)ザークツィーにもスペースが生まれた」
「このようにボローニャの選手たちが自由に動いて縦を攻めるシーンは、前半に見かけなかった。確実にチアゴ・モッタは、ハーフタイムにこの動きを研究したのだろう。ボローニャは異なる動きをしたことで、ラツィオに一撃を与えた」
(C)Getty Images
過密日程のラツィオに求められるリセット力
今シーズンはUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)に出場するラツィオだが、これまでUCL直前のリーグ戦4試合中3試合で敗北を喫している。日本時間8日には上田綺世が所属するフェイエノールトとの再戦が控えるほか、来週末にはローマダービーも迫る。バッザーニ氏は、ラツィオが過密日程をこなす中で、素早い切り替えが必要であると強調した。
「こうしたチームは、自らリセットできるようでなければならない。重要な成長路線を歩んでいたラツィオにとって、今日の敗戦は大きなブレーキとなってしまった。しかし直後に重要な2試合が控えていることもあり、リセットして切り替え、フェイエノールト戦へ臨めるようにしなければならない」
「今日、何かが機能しなかったのは明らかだった。しかし過密日程の中では、リセット力が求められる。すぐさま次戦へ集中しなければならない」
序列で鎌田を上回るゲンドゥージ
『ダゾーン・イタリア』の番組内では、ボローニャでの敗戦における「唯一の好材料がゲンドゥージだった」と紹介している。中盤の「序列で鎌田を上回り」、サッリのチームで「不可欠な存在」となりつつあるフランス人MFに、バッザーニ氏が見解を示した。
「ゲンドゥージは、新選手の中で最も調子を上げているように思う。特に彼はラツィオの中盤の特徴を補完できるものを持っている。当然だが、(アンカーの)ロヴェッラと(左IHの)ルイス・アルベルトを同時に起用したいのであれば、(右IHが)カマダでは苦戦してしまう。彼を支えられないと言うより、彼を起用できる条件がない。インテンシティを失うことになるからね」
「ゲンドゥージのプレーを見ていると、彼は誰よりも先に相手のセンターフォワードへプレッシャーをかけに行く。パワーがあり、フィジカルがある。ただ、シュートを狙いに行ったり、ゴールを大量に奪ったりする選手ではないため、当然ながらその代償もある。それでも大きな成長を見せているように思う。それにサッリのカルチョへすぐさま適応することは簡単ではないことを忘れてはならない」
(C)Getty images
鎌田大地に対するイタリア紙の評価は?
なお、現地の大手メディア各紙によるボローニャ戦の鎌田の評価は、出場が81分以降であったために「採点なし」となっている。イタリア紙『Corriere dello Sport』は寸評のみを掲載し、「(鎌田の出場で)リズムが変わったわけではないが、あの時点でラツィオ自体が苦戦していた」と同情的なコメントを寄せている。
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