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【コラム】武藤嘉紀、必然のMVP。「最も価値のある選手」であることを証明し続けた一年

青山知雄
【コラム】武藤嘉紀、必然のMVP。「最も価値のある選手」であることを証明し続けた一年(C)J.LEAGUE
【国内サッカー・Jリーグニュース】Jリーグの年間表彰式「2024 Jリーグアウォーズ」が12月10日に横浜アリーナで開催され、連覇を果たしたヴィッセル神戸から武藤嘉紀が最優秀選手賞に輝いた。

12月10日に神奈川県内で2024 Jリーグアウォーズが開催され、連覇を達成したヴィッセル神戸から武藤嘉紀がベストイレブンとMVPに選出。リーグ戦37試合出場で13ゴール7アシストという結果を出し、J1全20クラブの監督と選手、選考委員の投票によって選ばれるベストイレブン、さらにはMVPの栄誉に輝いた。

必然のMVPだったと言っていい。

シーズン最終盤になると、取材現場でも「MVPは誰かな?」という話題になる。今年はリーグ優勝が決まる前から、ほぼ満場一致と言えるような状況だった。

「今年はよっちでしょ」、「圧倒的だったよね」、「武藤以外に考えられない」、「文句なしじゃない?」。そんな声が至るところで聞かれていた。

リーグ戦37試合13得点7アシストという素晴らしい成績でヴィッセル神戸のJ1連覇に貢献した武藤嘉紀。ゴールに直結する部分以外でもピッチで強烈な存在感を見せていた彼が大方の予想どおりにベストイレブンに選出され、そしてMVPに選ばれることになった。

ベストイレブンはJ1全20クラブの監督と選手、選考委員の投票によって選ばれる。そこで最多の166票を集めたのが武藤だった。実際に対戦した選手たちが投じた結果だからこその重みは言うまでもないだろう。そして最優秀選手賞=MVPは、ベストイレブンの投票結果を参考にした選考委員会によって彼の頭上に輝くことになった。

MVP──Most Valuable Player。最優秀選手。直訳すれば「最も価値のある選手」という意味になる。

選手間での最多得票数が物語るとおり、2024シーズンに見せたパフォーマンスは圧倒的だった。難しい局面で見せた決定的な仕事で何度もチームを救っただけでなく、前線からの力強いハードワーク、ゴールに向かう迫力は今シーズンの神戸を象徴するものでもあった。何より印象的なゴールが多いのは、彼の今シーズンの活躍を振り返る上で特筆すべきポイントだ。特に連覇に向かう終盤戦の活躍は目覚ましかった。

リーグ戦3戦未勝利という苦しい状況で迎えた第26節横浜F・マリノス戦では、1点をリードされた状況から2ゴールを決めて逆転勝利に導いた。チームはこの勝利から8試合で7勝1敗と右肩上がりに調子を上げて首位を追撃。一気に優勝争いへ加わることになった。5位で迎えた強豪との大一番での2つのゴールが逆転優勝の呼び水となったのは間違いない。

第31節のアルビレックス新潟戦では1点ビハインドで迎えた73分に同点弾を叩き込み、後半アディショナルタイムの逆転劇につなげた。大迫勇也のスルーパスに抜け出し、難しい角度から左足のワンタッチで決めたテクニカルなゴールは圧巻の一言だった。

そして武藤自身が「一番印象に残っているゴール」に挙げたのが、最終節を前にした第37節柏レイソル戦での劇的な同点ゴールだ。1点のビハインドで後半アディショナルタイムに突入したところで大迫勇也がPKを外し、絶体絶命の状況に追い込まれた中、90+10分に自力優勝の可能性をつなぐ一撃を見舞う。100分間を走り抜いた末、いったんはオフサイドと判定されながらもVARのフォローで得点が認められた。「これ以上大きな勝ち点1はない。自分では得点だと思っていなかったので認められて良かった。一番感情が爆発した」と振り返った。この一発が最終節にホームで迎える歓喜につながった。

4月には肋骨を骨折。「途中であばらを折って苦しい時期もあった」ものの、欠場することなくピッチに立ち続けた。ゴールやアシストだけでなく、強じんなフィジカルを武器に攻守でハードワークを続け、ゴールに向かう推進力でも圧倒的な存在感があった。天皇杯との2冠、チームの連覇達成に大きく貢献した武藤嘉紀。結果でも、数字に見えない部分でも、まさに自らが「最も価値のある選手」であることを証明し続けた一年だった。

文・青山知雄

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