第2回目となる4月のベストヒーロー賞には、徳島ヴォルティスで活躍するFW宮代大聖を選出した。川崎フロンターレから期限付き移籍中の20歳FWは、今季すでにリーグ戦13試合に出場して5得点。4月では6試合に出場し3得点をあげて、今季昇格組である徳島を支えている。
新たな役割への戸惑いと適応
——4月は3ゴールを奪いチームの勝利に貢献しました。4月の活躍はどのように感じていますか?
自分が得点を取った試合が勝ちにつながっているのは嬉しいです。やはり前線の選手が決めるとチームの士気も高まりますし、チームの雰囲気も良くなる。欲を言えば、チームが苦しい状況の時に、もっと点を取れる選手にならないといけないとは思っています。個人としても、もっと上にいきたいと思っているので、そういうところで得点を取ることが大事かなと思っています。
——今年は最前線よりも2列目の真ん中や右サイドで出場することが多いと思いますが、そのポジションでの手応えはいかがですか?
あまりやったことのないポジションでしたけど、意外と考えることも多くて、面白いなと感じています。FWの選手と立ち位置を入れ替えたりしていいと言われていますし、流動的に動くことが大事なチームだと思うので、そこはポジションにとらわれるよりは、味方と相手を見ながらストレスなくやれているかなという感じです。
——自分の中でもやれることが増えてきていると。
ボールを引き出すところやチャンスメイクするところは、最前線とはまた違った役割があると思うので、そこは良い感覚としてあります。もちろん最初は中間ポジションで受けた時に少し戸惑ったというか、選択肢に困っていた部分がありました。ただ、自分の武器であるゴールに向かう姿勢が大事というか、自分の特徴を改めて考えたことで自分のプレーがやりやすくなったところがあります。ゴールに向かってプレーすることで相手の怖い存在になれると思いますし、そこは良くなっているところだと思います。
——そういったプレーの変化の中で、意識として変わってきているところはありますか?
ターンだけではなく、ボールを受ける位置や誰と駆け引きしているのかをより考えるようになりましたね。ゴールを奪うためのポジショニングというか、一列下がったとしても自分がゴールを取るためにどのポジションが良いかをよく考えています。
——第18節・セレッソ大阪戦のゴールはまさにゴールを奪うための動き出しから生まれたゴールだと思います。
あの得点の時はFWの選手が少し降りて奪った後だったんですけど、自分とFWの選手が入れ替わる形で自分が頂点になった。そこはいい流動性というか関係性だったと思います。ああいう場所でボールを受けたら自分はフィニッシュまでいける自信があるので、そういうところで受けられればもっとチャンスが増えてくるのかなと思います。
——あのゴールはシュートも見事でした。
ボールを受けるときに少し右足の方に来て、相手が密集しているのがわかったので、そんなに時間をかけられないなと。そこで咄嗟に打った感じです。こう来たらこうくるだろうという相手の足の動きのイメージで蹴ったという感じですね。
外国人監督・コーチから得た新たな刺激
——ちなみに今季から期限付き移籍で徳島に加わっているわけですが、新たなチーム、選手で驚いたことはありますか?
(岩尾)憲くんとは結構サッカーの話をするんですけど、いろんな考えを持っていて、最近も海外のサッカーで「この試合がすごく面白いよ」と教えてくれて。本当にこの人はサッカーが好きなんだなと思いました。周りを見渡すと、ひと癖ある人が多いなというのはありますね(笑)。
——今季、徳島は序盤戦にダニエル・ポヤトス監督が不在という状況はありました。その辺の難しさはありましたか?
オンライン上で指導してもらっていましたけど、現場でやっている自分たちとしては疑問が浮かんだときにすぐ質問できないことや、やはりオンラインの言葉だけだと100%伝わり切れないところはあったと思います。そこは難しさとしてありました。ただ、チーム全体で甲本さん(甲本偉嗣コーチ)含めて、「今やるのは自分たちだ」というふうに捉えてやっていたので、やらなければいけないことをみんなが整理して取り組んでいたと思います。
——現在はポヤトス監督が来日し、より強くするための試行錯誤をしている最中だと思います。
オンライン上で言われていたことが、「ああ、こういうことだったのか」とみんなが認識している状況だと思います。それをピッチ内で体現することが、まだ少しできていないと感じるところもあるので、そこはもっとみんなが理解して、プレーの意識を高めていけば、良くなっていくのかなと思います。
——外国人監督は初めてだと思います。新たな気づきがあったりしますか?
自分の芯というか、大事にしているものがある監督だと思うので、そこがすごくいいなと感じます。あとはマルセルコーチもそうですけど、自分の見ていなかった視野からアドバイスをくれるので、そこはまた違った刺激がもらえていて新鮮ではあります。
——改めて、今年その中で成長していると感じているところを教えてください。
試合の中の強度は、やはり試合に出ないと経験できないものだと思います。今まではこれだけJ1の舞台で長く出たことがなかったので、その強度は自分の中で理解してきています。自分のプレーを表現できてきているなとも感じるので、そこは本当にポジティブに捉えています。
理想はチームの流れを変えられる選手
——今回、宮代選手は月間ヒーロー賞に輝きました。自分の中のヒーロー像みたいなものはありますか?
自分の理想像にはなりますが、例えばチームが0-2で負けている時に、3得点を取れる選手になりたい。それは以前から自分の中で目標としてあります。だいたい0-2で負けている時は、チームが下を向いているというか、調子が全体的に上がらないゲームだと思うんです。そういう時に、一発で仕留めたり、チームの流れを変えられる選手は本当にメンタルが強いなと感じます。また、そういう中で技術を発揮できる選手、結果を出せる選手というのは本当に一流の選手だなと。そこは自分の中で本当に大きな目標として持っています。
——その理想像を思い描くようになったきっかけがあったのでしょうか?
小林悠さんですね。以前に川崎フロンターレとベガルタ仙台の試合で、前半のうちに10人になり2点のビハインドを負う試合がありました(2017年第29節川崎F3-2仙台)。その時に悠さんが2点を取って逆転勝ちをしたんですが、それを見て「あっ、これだ」と。その時に「こういう選手にならなきゃいけない」とグッときたんです。前から少し思っていたんですけど、その試合を見て確信したというか、こういう選手を目指さなきゃいけないと感じた試合でした。
——確かにあの試合の小林選手は打てば入りそうな雰囲気を醸し出していました。
もちろん一人だけの力ではないと思うんですけど、ああいうところで決め切る力や決め切れるメンタルを持っているのは本当にすごいなと思うし、目標にしています。
——そういう選手になるために、いま意識していることを教えてください。
本当に、チームが苦しい時に何をやれるかは練習から考えています。どうしてもネガティブな雰囲気が出てしまうと思うので、そこを吹き飛ばせるぐらいの存在感やプレー、姿勢を見せて、それが得点という形に現れればいいのかなと思います。
——今後に関してはどんなプレーを見せていきたいと思っていますか。
自分はゴールという形でチームの勝利に貢献したいと思っているので、これからも貪欲にゴールを狙っていきたいです。そして、チームを楽にしてあげたいという気持ちもあるので、一本一本のシュートにこだわって、得点を決め続けられればいいなと思います。
文・インタビュー 林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
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