6月のベストヒーロー賞にはFC東京の若き日本人ストライカー、FW田川亨介を選出した。FC東京に加入して3年目、ブレイクの予感を感じさせる22歳のレフティーはここまでキャリアタイの4ゴールを記録。東京五輪代表メンバーから外れた翌日、落選の悔しさをバネに決めたゴールは彼にとっても忘れられない一発になったはず。後半戦は力強く、そして泥臭くゴールを積み重ねることを誓う。
東京らしさを取り戻した6月
ーー6月のリーグ戦では3連勝でした。振り返っていかがですか?
チームとしてもう一度“東京らしさ”を取り戻すため、体現するために、監督が先頭に立ってチームを鼓舞してくれました。選手もそれに応えようという気持ちで毎試合臨んでいたので、その結果、3連勝できてよかったです。
ーーすべて無失点での勝利という点にも大きな意味があると思います。
ゴール前でキャプテン(東慶悟)をはじめ後ろの選手がみんな体を張ってくれて、相手にやらせていませんでした。そういう姿を見てチームの士気も上がりました。前線の選手も頑張ろうという気持ちになったと思います。まさにそういうところが“東京らしさ”だと感じましたね。
ーー田川選手のプレーを振り返ると、第19節・徳島戦のゴールが最も印象的です。相手のビルドアップに猛然とプレスを仕掛け、相手DFからボールを奪っての先制点でした。
あの試合は前からどんどんプレスに行こうと話していました。スタメン11人がその意図を理解してキックオフから連動して戦うことができていました。たまたま僕がゴールを決めましたけれど、僕が取らなくてもいずれああいう形は作れたと思うほど勢いがあったので、守備の連動はすごく良かったです。
ーーボールを奪ってからGKをかわすまで、すべてが冷静でしたね。
その前の試合(横浜FC戦)でも同じような場面があって、そこではGKとの1対1を外してしまっていたので、シュートの瞬間は外したときのことが蘇ってきましたね(笑)。ただ、横浜FC戦後に、他にアイディアはないかなと考えていて、それが徳島戦ではうまくかわすという選択肢につながりました。その反省を活かせたのが良かったですね。徳島戦でも外していたらドロ沼にハマりかけていたと思いますけれど、何とか生き延びました(笑)。
泥臭いゴールも増やしていきたい
ーーあの試合は東京五輪代表メンバー発表の翌日でした。落選という結果を受けて、どんな想いで試合に臨んだのでしょうか。
メンバー発表はアウェイ徳島への移動中でした。最初は自分への怒りや悔しさがふつふつと湧きましたが、試合まで時間はあったので『これは点を取って見返すしかない』と考えました。徳島戦では最初からガツガツ行ってやろうという気持ちで入ったので、結果を出すことができて本当に良かったです。
ーー『点を取りたい』ではなく、『点を取る』という気持ちでピッチに入ったということですか?
いつも取ってやろうという気持ちでいます。ただ、あの試合はまた違った気持ちがありました。
ーーチーム戦術を徹底して、自分の持ち味を出しての泥臭いゴールでした。だからこそより気持ちや思いが伝わってきました。
泥臭いゴールは想いが伝わると思っています。これからもそういったゴールもどんどん増やして自分の価値を上げていきたいです。
ーーそれに何よりチームメイトがうれしそうに見えました。
いつも通りですよ(笑)。でも、落選直後に『まだチャンスあるでしょ』、『もうないですよ』みたいなやり取りがあって、それで和んだというか、僕としてもそうやっていじってくれて助かりました。特に年上の選手に感謝です。
ーー東京五輪は目指していた舞台だったと思います。どう位置付けていましたか?
メンバーに入ることができれば、正直自分の価値は上がったと思います。さらにそこで活躍すればサッカー選手として成長する近道だとも思っていました。そのチャンスがなくなったことは残念ですけれど、それは東京で活躍すればいい話。チームで結果を残せば、次のステップや日本代表も自ずと見えてくる。そのチャンスが一つ消えただけであって、まだ他にもチャンスはあるはずなので、次こそはつかめるように練習していこうと思っています。
ーーそのような考えにはどうやって切り替えたんでしょうか?
もともと切り替えは早いほうで、そんなに深くは考えないタイプです。今回のことも自分の中では消化できています。ただ、やっぱり徳島戦のゴールは大きかったですね。おかげで吹っ切れました。それに日本代表という新たな目標ができました。今はワールドカップという目的に向かって、気持ちは切り替えられています。
印象に残っている豊田選手の劇的ゴール
ーーここからシーズンは後半戦に突入します。どんなプレーを見せたいですか?
個人としてはだいぶ手応えはあります。だからあとはどれだけ結果を出せるか。そこを突き詰めてやっていきたいと思っています。
ーーそのために大事にしていることはどんなことでしょうか?
最近考えているのは、スピードに乗った状態でフィニッシュの精度を上げること。相手の背後を取るまではすごく良いので、あとはゴール前でのトラップからのシュートを大事にしたいです。やはりトップスピードの状態から急に止まることは本当に難しい。そこは自分の中で感覚をつかんでいくしかないですね。今はまだ考えてプレーしている状態なので、自分の中に染みついて感覚でプレーできるようにしていきたいです。
ーー序盤戦は打てば入りそうな雰囲気もありましたが、それとはまた違う感覚ですか?
今のほうがチャンスは多い感覚で、手応えもあります。あのときは勢いや流れがよくて、打てば入っていました。運だけでなく、実力でどれだけ決められるかというところに持っていきたいです。
ーー田川選手にとってのヒーローや、思い描くヒーロー像はありますか?
昔から憧れとかはあまりないです。難しいですね(笑)。でも、豊田(陽平)選手は“ザ・ストライカー”ですよね。僕はサガン鳥栖U-18のときから見ていて、ここぞというときに点を取る姿が印象に残っています。それは『すごいな。持っているな』と思っていました。本当に最後の最後、アディショナルタイムの終わりにゴールを取っている姿を何回も見たことがあります。そういう選手はかっこいいと思いますね。
ーー田川選手は劇的なゴールを取ったことはありますか?
アディショナルタイムに決めたことがあるかな。プロ2年目の(18年J1第5節)名古屋戦ですかね。FWの選手はいつも最後の最後で決めてやろうと狙っています。拮抗した試合で勝ち切れなかったらFW陣の責任だと思うので。まだ、東京に来てからそのような劇的なゴールがないので、東京では泥臭く取ってヒーローになります!
文・インタビュー 須賀大輔
1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。現在、ELGOLAZOでは柏レイソルと横浜FCの担当記者を務めている。
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