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バルセロナ

【コラム】ずっと待ち続けた“強過ぎるバルセロナ”の復活!このクラブのことを知らないフリックが仕掛けた素敵な裏切り

DAZN NEWS
【コラム】ずっと待ち続けた“強過ぎるバルセロナ”の復活!このクラブのことを知らないフリックが仕掛けた素敵な裏切りGetty Images
【欧州・海外サッカー コラム】カタルーニャ出身記者がバルセロナ復活に思うこと。

‘Entorno’(周辺)は、1992年にヨハン・クライフが考え出した概念だ。彼は、「ドリーム・チーム」が敗北を喫した際、ある役員が余計なことに口を出していると指摘するためにこの言葉を使った。簡単に言うと、バルサ(FCバルセロナ)では騒がしさが耐え難いもので、皆が意見し、皆が指揮を執りたがるということだ。この「Més que un club(クラブ以上の存在)」という表現も、バルサのこの複雑で落ち着かない現実を暗示している。カタルーニャのこの組織では、徹底した民主主義が様々な批判の声を引き出し、クラブの動向に対する監視が絶えないのだ。

ハンジ・フリックは、この「周辺の怪物」に気づかれないように、まるで幽霊のようにバルサにやってきた。彼はバルセロナを知らず、バルサでプレーした経験もなく、バルセロナのメディアと何の関係もなかった。彼はただ、この青と赤のクラブの崇拝者だった(しかも重要な点として、彼はバルサを率いていたときに8ゴールを叩き込んだことがある)。

時には目立たず、むしろ外部の者のように見えることが、最良の自己紹介になることがある。厳しい監督の世界ではよくあることだ。選手たちは、態度には出さなくても、自分たちの監督が誰で、どういう振る舞いをし、どんな欠点があるかを知っている。監督が偉大な存在なら、彼らは慎重に対応するが、もし躊躇すれば、すぐさま攻撃にさらされるのだ。フリックと接点のあったのは、テル・シュテーゲン、ギュンドガン、レヴァンドフスキだけで、それ以外の選手たちは彼の初動に注目していた。

そして、早速「周辺」は新監督に対して批判の刃を研ぎ始めた。シャビ・エルナンデスの屈辱的な退任が生々しい傷跡を残していたため、「悪化すればするほど良い」というバルサ的な自己破壊の精神が蔓延していた。ドイツ人の到来は煙幕、補強策、不本意な代替と見られていた。

フリックはメディアが好むクロップではなかった。彼の履歴には、直近1年間のブランクが記されており、最後の指揮経験はドイツ代表監督として迎えたカタール・ワールドカップのグループステージ敗退で終わっていた。バイエルン・ミュンヘンの2019-20シーズンでのチャンピオンズリーグ優勝(無敗での優勝)という輝かしい業績が、時間の経過とともに薄れかねないリスクもあった。

しかし、皮肉なことに、ドイツ人監督は、オランダ派(ライカールトやファン・ハール)でもなく、かつてバルサのユニフォームを身にまとった者(グアルディオラ、ルイス・エンリケ、クーマン、シャビ)でもなく、さらにロッカールームの重鎮たちの承認も得ていない(タタ・マルティーノ、エルネスト・バルベルデ)にも関わらず、瞬く間にバルサ支持層の心を掴んだ。これは「周辺」に初めての亀裂が生じたのではないだろうか。そう見える。

フリックのバルサを語るには、シャビ時代の欠点を振り返るのが早い。今のチームは、刺激的で、貪欲で、激しく、勇敢だ。カンプ・ノウ(今のモンジュイック)では長らく見られなかった資質であり、かつ守旧派が擁護する「スタイル」を持たなくても、これを見事に活かしている。

この意味で、フリックは誰よりも進んでいる。彼は選手たちに仕事への情熱を注入し、その情熱は感染している。6シーズンをバルサで過ごしたクロアチア人のイヴァン・ラキティッチは、バルサの「MSN」が2015年に三冠を達成した後、勝利に飽き、競争心を失ったと口にしている。

シャビが指揮した初シーズン、スーペルコパとリーガのタイトルを獲得したが、メッシが去った後、チームは再び競争を学んだものの楽しむことはなかった。1-0の勝利は不完全で、ほぼ苦悩に満ちていた。勝利は瞬間的な必要に応じたもので、最後の偉大なバルサのように楽しみながら勝てたなら、簡単に気を緩めてしまう。しかし、競争するだけで楽しめなければ、勝利は苦痛となる。昨シーズンのバルサは、競争も喜びもなかった。

今のバルサは、喜びと確信をもとに取り組んでおり、もちろん規律もある。昨年は力尽きたように見えた選手たちが、今やヨーロッパでもトップ5の選手に数えられている。イニゴ・マルティネス、ペドリ、レヴァンドフスキ、ラフィーニャといった選手が改善された姿で再登場するなど、誰が予想しただろうか。

この奇跡の象徴がブラジル人ラフィーニャだ。彼はサイドから離れ、10番の役割を担い、特にキャプテンとして信頼を得たことで、本当のリーダーに成長した。バイエルン相手に達成したハットトリックは、彼の秘めた可能性を証明するものであり、両足でのシュート、ゴールキーパーをかわすプレー、致命的な一撃が可能であることを示した。

さらにドイツ人監督はカンテラ(下部組織)の選手たちに多くの出場機会を与え、危機の時代においてもマシアの持つ価値を高めた。他の選手が不足しているため、若手に頼らざるを得ないことに関しても、不満は一切出していない。それどころか、「キミッヒを加入させたい」という声が数か月も聞かれた時期にも、フリックはカサドに「君が自分のキミッヒになれる」と伝えていたのだ。

ラミーネ・ヤマルは別格の存在だ。フリックは彼を厳格な規律のもとで育て、彼がこのグループの中でも真に際立つ才能であることを認識しながらも、他の選手同様、慎重に起用している。バイエルンの元監督は真面目で公正な人物であり、選手たちは彼の判断を受け入れ、自身の能力を最大限に発揮するようになった。グン・ドガンが去ったり、テル・シュテーゲン、デ・ヨング、アラウホといった主力選手が負傷しても、言い訳をせず、嘆くこともなかった。その欠場がほとんど気にされないという事実が、彼の成果を物語っている。

フリックは陰で動き続け、控えめに笑い、グループを毅然と率い、いずれ現れるであろう批判の声に耳を貸さないことが賢明だろう。クラシコで勝とうが負けようが、「周辺」は休むことなく、瞬く間に天国から地獄へと転落させる。こうした自己破壊的なクラブだが、今日では一軍のパフォーマンスの良さゆえに微笑んでいる。

しかし少なくとも今、バルサは笑っている。フリックのチームが良いプレーを、本当に良いプレーを見せて、その帰結として勝利しているために。今夏、フリックの招聘に納得する人はごく少数で、当の本人はそんなバルサの事情や“エントルノ”について、まったく知らないままやってきた。だが何をすべきかを誰よりも理解していたのは、この“期待外れ”の新指揮官にほかならなかったのだ。