【DAZN月間ベストプレーヤー】「チームメイト、ファン・サポーターの皆さんの後押しのおかげ」。ヴィッセル神戸・古橋亨梧インタビュー

注目してもらいたいプレーは「トラップ」

――9月のDAZN月間ベストプレーヤーに選ばれました。9月はリーグ戦で5ゴール。8月は負傷で欠場した時期があったので、その鬱憤を晴らすような活躍でしたね。

「選んでいただき、ありがとうございます。得点ができるのも、チームメイトにのびのびプレーさせてもらったり、ファン・サポーターの皆さんの後押しのおかげなので、まずは感謝したいです。自分が点を決めることでチームが勝てるのは、すごく嬉しいです。本当に周りのおかげだなと感じます」

――5ゴールの内訳は、9月9日の川崎フロンターレ戦、9月23日のサガン鳥栖戦の2ゴール、9月26日の北海道コンサドーレ札幌戦の2ゴールでした。右足、左足、裏への飛び出し、ドリブルで独走、コンビネーションからとバラエティ豊かでしたが、その中からひとつ、お気に入りのゴールを選ぶとしたら？

「うーん、どれも選びたいですけど……。札幌戦の1点目かな。左サイドでDF（酒井）高徳さんとMFアンドレス（イニエスタ）のワンツーが綺麗に決まって、ニアにFWドグ（ドウグラス）が飛び込んでくれて。そのおかげで僕が空いたスペースに入れたので」

――それは、意外なセレクトでした。自分ひとりでフィニッシュまで持ち込むようなゴールがお気に入りなのかな、と思っていたので。チームとして崩すことにも喜びを感じるんですね。

「そうですね。あれはすごく綺麗な崩しだったので、気持ち良かったです。あの形はヴィッセル（神戸）の強みだと思いますね」

――古橋選手と言えば“スピード”という印象が強いですが、シュートのバリエーションが豊富で、右足でも左足でも決められてミドルシュートもある。それに、ファーストタッチやボールの引き出し方もうまいと思います。スピードばかり注目されるのは、嫌なのでは？

「いや、そんなこともないですけど（苦笑）」

――スピード以外に、どんなプレーに注目してもらいたいですか？

「なんですかね……。トラップですかね。まだまだミスが多いんですけど、トップスピードに乗った時のファーストタッチは、たまにいいトラップができるので（笑）」

――たまに（笑）。

「正直、すごく感覚的というか。足下に来るボールじゃなくて、届くか届かないかくらいのボールの時に、すごくいいトラップができることが多くて。何も考えずに足を伸ばしたら、いいところに付けられた、という感じですね」

――じゃあ、センスなんでしょうね。

「いえいえ、そんな。センスなんて全然ないです（苦笑）」

――ボールの引き出し方もうまいと思います。チームに素晴らしい出し手が揃っているのも大きいのでしょうけど、裏を取るタイミングはかなり意識されているように感じます。

「そうですね。うちはタイミングさえ良ければ、パスが出てくるので。逆に、パスが出て来ない時は、僕の足が止まっていたり、先に動いてしまってオフサイドポジションにいたりする場合。だから、もっともっとタイミングを合わせていかないといけないな、と思っています」

――イニエスタ選手との連係もかなり成熟しているように見えます。イニエスタ選手に操られるだけでなく、古橋選手からワンツーを要求したりする場面も多いですよね？

「意識して要求している時もあれば、意識してない時もあります。やっぱり僕はFWなので、ゴールを決めたいという気持ちがある。それで、相手がアンドレスであっても、要求していると思います」

「点を決めているからこそ、次の試合が大事」

――プロになって4年目、J2のFC岐阜から神戸に引き抜かれ、レギュラーになって日本代表にも選ばれました。順調にステップアップしている印象ですが、急激にステージが上がり、周りのレベルも高くなったことに対して、戸惑いはありませんでしたか？

「今も毎日、戸惑いしかないですね」

――今も、ですか？

「今も苦しんでいます。岐阜に拾ってもらって、大木（武）さんと出会って、1年目の開幕からずっと使ってもらって。1年目はシュートをけっこう外して、チームに迷惑をかけることが多かったんですけど、2年目はみんなにも助けてもらって決められるようになってきた。それで、ヴィッセルに声を掛けてもらって移籍したら、レベルがさらに上がって。2年目の去年は結果を残すことができましたけど、思うようなプレーができないことも多かったですし、今もシュートを外すことが多い。自分が決められないばかりに、チームが負けた試合もたくさんあるので、自分はまだまだだな、本当に下手だなって、いつも思っています」

――次の試合では点を取れるだろうかといった不安やプレッシャーとも戦っている？

「そうですね。考えないようにはしていますけど、やっぱり考えちゃいますね。FWは結果を残してナンボ。どれだけ悪いプレーをしても、結果さえ残せば評価されるところもあるし、点を取れなくなったら、ポジションを奪われてしまうんじゃないか、という怖さもあります。点を決めているから天狗になるんじゃなくて、点を決めているからこそ、次の試合が大事、と思うようにはしています」

――今、特に伸ばしたいと思っている部分は？

「やっぱり、ゴール前の狭い所、スペースでのボールの引き出し方だったり、パスを受けた時のファーストタッチや身体の向きは、まだまだ改善しないといけない。あと、シュートをしっかり枠内に入れることですね。ゴールの上とかに外すんじゃなくて、しっかり枠に入れる。それをもっと意識していかないといけないな、と思っています」

――9月にはトルステン・フィンク監督が退任して三浦淳寛監督が就任しました。監督交代後に3連勝を飾りましたが、どの部分が変わりました？

「フィンクさんの時もいいサッカーをしていたと思うんですけど、アツさんになって、プレスに行く時と、ブロックを敷く時のメリハリがはっきりしたと思います。攻撃に関しては、もともと自信を持っているチームなので、攻守の歯車が噛み合ってきたのかなと感じます」

――最後に、残り試合に向けた意気込みを聞かせてください。

「リーグ戦に関しては先を見るんじゃなく、1試合1試合大切に戦っていきたいと思います。先発の11人、ベンチの7人、コーチ、スタッフ、試合に絡めていない選手も含め、全員が同じ方向を向いて戦っていくので、ファン・サポーターの皆さんは僕たちを信じて、応援してもらえると嬉しいです。その先にはACL（AFCチャンピオンズリーグ）があります。ヴィッセルはアジアナンバーワンを目指しているチームなので、リーグ戦をいい形で終えて、ACLに臨みたいと思います。個人としては15ゴール、さらに20ゴールと決めていければ。チームのためにゴールを決めたいですし、アシストもふた桁に乗せたいと思うので、頑張りたいです」

――古橋選手って、すごく謙虚というか、「チームのために」「皆のおかげ」という言葉がよく口をついて出ますね。

「ありがとうございます（笑）」

――やはり苦労人というか、岐阜に拾ってもらって、神戸に引っ張り上げてもらったことへの感謝が常にあるからですか？

「そうですね。岐阜や神戸の人たちだけでなく、今サッカーができているのも、育ててくれた親のおかげですし、もっと言えば、サッカーを普及してくれた昔の方々のおかげでもありますし、スタジアムまで足を運んでくれる方、リーグを運営してくださる方がいて、僕たちはサッカーができる。そう考えると、感謝の気持ちを忘れてはいけないなって。特にファン・サポーターの皆さんには、僕たちがいい試合をすることで、少しでも幸せな気持ちになってもらえたらな、と思っています」

文・インタビュー  飯尾篤史

1975年生まれ。東京都出身。明治大学を卒業後、週刊サッカーダイジェストを経て2012年からフリーランスに。10年、14年、18年W杯、16年リオ五輪などを現地で取材。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』、『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』などがある。

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