昨季は9ゴールをマークしたチームの得点王だが、今季は主戦場を一昨季と同じボランチに移し、開幕3連勝を果たす福島の原動力となった。かつては高校選手権の得点王に輝いた生粋のストライカーも、今季でプロ12年目。福島ではチーム最長の在籍7年目を迎えている。好調の理由に加え、さまざまな経験を重ね、変化してきた思いについて聞いた。※エル・ゴラッソ本紙より転載。
アシストもいいなと思うようになってきた
(C)J.LEAGUE
――明治安田生命J3リーグKONAMI月間MVP 受賞おめでとうございます。
「チームの調子がよかった中で、まさか選ばれるとは思っていなかったです。(このような賞は)プロになってからは初めてなので、素直にうれしいです」
――ボランチを主戦場に1ゴール2アシストの活躍でした。好調の要因はどこにあると感じていますか。
「まずはチームの調子がいいというのが一番です。チームみんなの調子のよさが、自分の調子のよさにもつながっているかなと思います」
――印象に残っているプレーはなんでしょうか。
「開幕戦(・今治戦/1◯0)のPKですね。開幕戦の雰囲気の中、アウェイやったんで、相手GKに対する声援も大きかった中、なかなかのいい緊張感の中で決めることができてよかったです。終わってみたら長いシーズンの1試合ですけど、アウェイで難しい試合を勝ち切れたことがそのあとの試合にもつながっていると思うので、開幕戦を獲れた意味でも大きかったなと思います」
――第2節・沼津戦(5◯0)では、素晴らしいスルーパスでアシストも記録しました。
「昔はアシストより点のほうがよかったんですけど、年を取ってきたからか、アシストもいいなあと思うようになってきました。あのときはボランチからシャドーに移っていたんですけど、(延)祐太がしっかり決めてくれたんで、いいところにパスを通せてよかったです」
――沼津戦ではCKからアシストするなど、プレースキックでも存在感がありました。
「やっぱりセットプレーで点が取れたら大きいですし、キッカーの質が7、8割くらい大事になるので、そこにいい責任感をもちながらやれています。日々練習もしているので、もっと得点につなげていければいいなと思います」
――セットプレーを蹴ることは、福島にくるまであまりなかったですよね。
「去年、一昨年、そのくらいからですね。プロに入ってからは全然蹴っていなかったです。(滝川第二)高校時代は蹴っていて、高3のときは結構FKも決めていたんですけど…だから、決めたいですね(笑)。沼津戦は5-0で勝ったんですけど、一回FKのチャンスがあって、その一個をしょうもない感じで蹴ってもうたんで、個人的には何日間か悶々としていました。次のチャンスは決めたいと思います」
ハットさんに託されたボランチで
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――チームとしては新体制1年目で開幕3連勝でした。どこに強みを感じていますか。
「監督がハットさん(服部年宏監督)に代わって、相手を見ることもそうやし、味方を見ることもそうやし、いろいろな状況を見てプレーすることを練習から強調してやっていて、徐々にみんなができるようになってきています。ハットさんは『チームのために戦う』ということも言っています。もっともっと高めるところもありますけど、個人どうこうよりも、全員がチームのために戦えていることがスタートダッシュにつながっていると思います」
――服部新監督は岐阜時代にともにプレーしており、樋口選手のこともよく知っていると思います。ボランチとして、自分の役割についてはどう感じていますか。
「福島は若い選手が多く、僕にはもう若さがないので、どっしり構えてというか。ハットさんは(現役時代と変わらず)冷静で、本当にいろいろなところを見ていますけど、僕も常に落ち着いて冷静にプレーすることを意識していますね」
――ボランチ出身の服部監督にこのポジションを託されるというのは、信頼も感じます。
「最初は(昨季と同じ)シャドーをやっていたんですけど、開幕前に大夢(鎌田大夢/現・仙台)が抜けたこともあって、そこでボランチをやった感じでした。一昨年もボランチで、どのポジションでも自分にできることをやってきたつもりですが、ボランチとしてはハットさんがやっていたことをできればいいなと。もちろんまだまだですけど、チームのためにやるということです。やっぱりボランチは攻守に関わるポジションなんで、まずは守備から、試合の流れを見てバランスを考えながら、どっしりプレーしたいなと思っています」
――やりがいや手ごたえはいかがですか。
「ずっと動いている感じもしますし、(シャドーに比べて)守備でやることも多いですが、いい感じにボールが取れたり、それがいい攻撃につながったりする場面もあって、そこはボランチをやっていていいなあと思います。でも、得点やアシストのこだわりは捨てていないです。ボランチからでも得点に絡むプレーはできますし、ボランチが得点に絡めるチームは強いチームやとも思うので、やることをしっかりやって、得点にも絡んでいければと思っています」
――生粋のストライカーだったころからさまざまな経験を積み、福島でプレーの幅を広げています。今後はどんな存在になっていきたいですか。
「1年1年一生懸命やってきたつもりではいて、その積み重ねがここまで10年以上やらせてもらってきた理由やとも思っています。ただ、年や経験を重ねてきた以上、若手と一緒のプレーでもダメやし、いろいろ経験してきたからこそのプレー、これがいい表現なのか分からないですけど、いまは“味のあるプレー”がしたいなと思います」
“福島のために”。その思いは強くもっている
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――在籍年数としても7年目になりました。福島に対する思いも強くなってきたのではないでしょうか。
「もちろん最初にきたときは20代前半やったので、僕もまた(個人で)上にいってやろうという気持ちで、こんなに長くいるつもりはなかったですけど、長くいる中で、今年で在籍年数もチームで一番になりましたし、年を重ねるにつれ、“福島のために”という思いはあります。僕がきたときと比べてもチームとして成長しているし、可能性はまだまだ広がっていく。“このチームで上にいきたい”という気持ちは福島の選手みんながもっていますけど、その中でも(人一倍)強くもっているつもりです。
そういったところは、ハットさんも言っています。昔の自分もそうやったので偉そうには言えないですけど、(J3に多い)若い選手の“個人が”という(ギラギラしたいい)部分を“チームとして戦う”ところにつなげられれば、それが福島のためにもなるので、このチームで上にいきたいです」
――農業部の部長を務めるなど、樋口選手はピッチ外の活動でも精力的です。
「地震からの復興で、選手が作った福島のものを届ける活動をずっとやってきた中で、サッカー以外でも“福島のために”というのはあります。僕がくる前からやっていたことではありますが、(当時は)いまの農業部という形ではなくて、一昨年くらいからより力を入れるようになりました。去年は取り上げてもらえることも多くなったので、一つの成果は出たかなと思います。美味しいものがたくさんあるんですよ。例えば農業部では果物もやっていて、一回食べてもらえれば、ホンマに福島の果物の美味しさも分かってもらえると思うので、ピッチ外の活動も含めて、福島を知ってもらえるようにやっていきたいと思います」
――最後に、今季の目標を教えてください。
「目標はチームのJ2昇格です。まずはいいスタートを切ることができ、今回は僕がこの賞をいただけましたけど、シーズンが終わるまでいい調子を保って、福島の選手が毎月この賞をいただけるようにできれば、チームも優勝してJ2に上がれていると思います。去年、福島にきて初めて上位争いができました。(J2)ライセンスは取れませんでしたけど、最後まで昇格を争えるラインで戦えた中で、このチャンスはなかなかないと感じました。岐阜のときやったら残留争いを経験していますが、昇格争いは簡単にできることではなくて。だから福島が去年、今年といい流れできている中で、このチャンスを逃したくない気持ちもあります。“これがあれば昇格できる”というものがあれば何百万円でも買いたいですけど、そうもいかないので(笑)、ひたすらチームとして戦っていきたいです。個人個人がチームのために。そこのチームとしての目標を全員がブラさずやっていくことが一番大事やと思います」
取材・文:エル・ゴラッソ編集部
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