【ELGOLAZO × DAZN NEWS 連動企画（前編）】識者二人が見た6月シリーズの戦果 Vol.2 BRAZIL。〜単発のミドルゾーン～バイタル。速攻の仕組みが必須〜 ｜ キリンチャレンジカップ2022

勢い任せではこじ開けられない

守勢の展開は想定内だった。時間帯によっては、前から奪いにいく場面もあれば、攻撃でも低い位置からビルドアップを実行し敵の深部に進入しようとしていた。能動的なトライをブラジル相手にできたこと自体、有意義なものだったと言える。

それでも、多くの時間で日本は自陣に釘付けにされた。「どれだけ耐えて守り、速く攻めてゴールを陥れるか」。これが、日本がブラジルに勝ち得る“ホンネ”のゲームプランだった。よって最少得点差での敗北という結果は、守備面では及第点が与えられる。課題は、森保一監督も試合後の会見で単刀直入に答えた「攻撃力」であることが明らかだった。

伊東純也の“縦”は防がれ、三笘薫の突破も封殺された。古橋亨梧の相手DFの裏を突く“ラインブレイク”もほぼ皆無だった。

いずれも、理由は彼らのアクションがどれも単発的だったことである。カウンターと一口に言っても、現代のそれは連動性を伴うものが多い。ボールを高い位置で奪ってからのショートカウンターならば、奪取の勢いそのままにゴール前までなだれ込むことできる。一方、自陣低い位置からのロングカウンターの場合は、勢い任せでは攻撃が断絶してしまう。ならば、ここで仕組みや狙いを明確に形作れるかが、生命線となる。

実際にこの試合で日本は自陣ゴール前付近でボールを奪ったあと、何度も敵の“即時奪回”からの回避をトライした。ただ、多くのシーンでブラジルの巧妙かつ圧の強い守備に屈するか、そのプレッシャーも影響してか単純な技術ミスで再びボールを失ってしまった。

森保監督は「相手のプレッシャーを外す部分はもっと上げていかなければいけない」と話した。個人の打開力に言及したようにも聞こえるが、前に進む術は何も個の強度や技術だけによるものではない。ここでいま一度見直したいのが、カウンター時に中盤から前線の受け手になる選手がとるべき“立ち位置”。ポジショナルプレーの文脈から、特に最近はビルドアップ時の位置取りについて議論は深まっている。さらに一歩踏み込み、攻守が高速度で入れ替わるいまのフットボールにおいては、トランジション（切り替え）の場面でも即座に視野と頭脳を駆使し、適切な立ち位置から前線やオープンスペースにパスを送り込んでいかなければならない。

コレクティブな速攻を作れるか

今回不在の大迫勇也のような安定したポストマンを前線に立たせる有効性も、あらためて再確認できたと言える。速攻を打つにしても、時間を作れる選手は貴重だ。しかし、属人的な解決よりも、いまいるスピードアタッカーたちが仕掛けやすい局面を意図して作ることができるかがより建設的だ。それは、W杯まで時間がない中でもいかに普段の練習や実戦で、チーム全体で意識を共有、統一できるかにかかっている。

コレクティブな速攻の仕組み作り。これはドイツ、スペイン相手にも必ず不可欠になる。カウンターがうまいチームになれるか。カタールW杯に向けた、日本の宿題だ。

文・ エル・ゴラッソ日本代表担当　西川結城

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の日本代表担当記者兼、事業開発部統括マネージャー。過去に名古屋、川崎F、FC東京担当を歴任。名古屋担当時代に本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その他雑誌『Number』や新聞各紙にも寄稿する。

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