【ELGOLAZO × DAZN NEWS 連動企画（後編）】識者二人が見た6月シリーズの戦果 Vol.3 GHANA。〜上田、悔いが残る夜。強みを生かせず、生かされず〜 ｜ キリンカップサッカー2022

相手の布陣もマイナスに作用

悔しさだけが残る夜になった。

「チャンスをもらえたら、100％の力を発揮したい。自分の特長を出していきたい」

そう意気込んで臨んだガーナ戦。ポジション争いに割って入っていくために結果が欲しかった上田綺世は、A代表初ゴールを決めた久保建英や前田大然のような歓喜の瞬間を生み出せないまま、80分に交代を告げられた。シュートは前半のヘディングと、後半に相手に寄せられながら放った2本のみ。周囲に自身の特長をよく知る東京五輪組が並びながら、シュートシーンを多く作り出すことができず、アピール成功とはならなかった。もちろん、この1試合ですべてを評価するのは時期尚早だろう。ただ、W杯のメンバー入りをかけたサバイバルという点では、限りあるチャンスを一つ失ってしまったのも事実だ。

今回の6月シリーズでは、FWの主軸である大迫勇也が不在。この4試合のテーマの一つが、その大迫勇に続くストライカーのテストであることは誰の目にも明らかだった。そのため、パラグアイ戦とブラジル戦に出場できなかった上田は、このガーナ戦を大きなチャンスと捉えていたはずだ。しかし、結果を残すことはできなかった。相手がどこであれ、どんな短い出場時間であれ、「ストライカーならチームを勝たせるためにゴールを取るもの」と言い続けてきた男からすれば、当然納得できる試合ではなかっただろう。

上田にとって、相手が想定していた4バックではなく、3バックで挑んできたこともマイナスに働いた。上田はどちらかと言うとスペースでボールを受けるのが得意な選手だが、相手ゴール前の人数が多くなったことで、持ち味の動き出しがなかなか生きなかった。これは、「2CBと3CBではギャップのでき方が違ってくるので、スルーパスや縦パスを受けるシーンを作るのが難しい。綺世もその辺にやりづらさを感じていたのではないか」という柴崎岳の言葉にも表れている。それならばポストプレーで活路を見いだしたかったが、そこでもつぶされることが多く、前線で起点になることもできなかった。

チャンスはまだある

(C)Atsushi Tokumaru

クロスへの入り方は決して悪くなかった。あと一歩のところで触れはしなかったが、ゴールになった三笘薫のクロスに飛び込んだ場面は一つのヒントになる形だった。堂安律も「もっとクロスを上げてあげたかった。彼（上田）の強みは空中戦や一発でいけるところ。試合前にそういう話し合いもしていたので、もう少し彼を助けられたかなと思う」と試合後に言及している。上田の強みを生かす方法は周りの選手たちも理解している。あとは、そういった状況をいかに多く引き出せるかだ。

今回のシリーズにおいて、FW陣で目に見える結果を残したのは、前田とパラグアイ戦で先制点を奪った浅野拓磨の二人のみ。そう考えれば、この一戦でチャンスがついえたわけではない。次にピッチに立ったとき、このガーナ戦でうまくいかなったことをどれだけ修正できるか。自身の価値を高めるためには、やはりゴールを奪うしかない。

林 遼平

1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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