【ELGOLAZO × DAZN NEWS 連動企画（後編）】識者二人が見た6月シリーズの戦果 Vol.4 Tunisia。〜露呈した準備不足。三笘が指摘する“個頼み”の現状〜 ｜ キリンカップサッカー2022

課題はリードされたあとの戦い

手も足も出なかったわけではない。前半の決定機を決め切れていれば展開は大きく変わっただろうし、単純なミスから失点していなければ苦しい状況に追い込まれはしなかったはずだ。ただ、結果は0-3の完敗。サッカーはすべてのことを想定した上で戦う必要があるが、この敗戦はW杯に向けてただただ“準備不足”を露呈しただけだった。

顕著に表れたのが、“先にリードを奪われた際の攻撃”だ。森保一監督率いる日本の強みは守備だと言えるが、そこが破綻して先に得点を奪われてしまうと、極端に攻撃が単調になる傾向がある。その影響が“戦術・伊東”や“戦術・三笘”といった言葉を生み出し、彼らの個での打開にすべてを賭けざるを得ない状況を作り出してしまっている。

今回のシリーズでは、6日に行われたブラジル戦と今回のチュニジア戦でまったく同じ状況が起きた。リードを奪われて以降は三笘薫の個に頼る場面が続き、結果、最後まで崩し切ることができなかった。完全なる1対1であとわずかのところまでいく突破は見事。ただ、そこまでいきながら得点が取れないとなれば、もちろん個のレベルアップが必要と言われてしまう。状況に応じた仕掛けの判断に課題はあるが、ここまで十分な力を示している三笘だからこそ、チームの問題点を提示しなければいけなかった。

「チームとしてボールを持ったときにニアゾーンを取りにいくこととか、そういうバリエーション自体が少ない。今回は長期間だったが、そういうところでチームとしての組み立てをやっていかないと、毎試合こういうふうな流れになってしまう。自分が（ドリブルに）いくだけになって、カウンターを受けるというのは、本大会ではやってはいけない。チームとしてどういうふうに攻めていくのかは、決まりごとではないが、決まったものをもっていないといけないと思う」

自主性+チーム単位の狙いを

これまで森保監督が選手たちに自主性を求めていたのは、誰もが知るところ。そのやり方が決して間違っているというわけではないし、選手個々が個人戦術で相手を上回れるようになれば、それに越したことはない。しかしながら、残り時間が短い中で、W杯でベスト8以上を狙うのであれば、個人戦術にプラスしてチームとしての作り込む部分がなければ、世界の強豪国と相対していく上で厳しい道が待っているだろう。

「今回は、コミュニケーションを取りながら、チームとしての戦術のところでもある程度、相手に対する狙いはあったが、狙いの細かさは全然足りてないと思う。まだフィールド内の選手たちでの対応力が足りないし、そこはいろいろな人たちで議論しながらやっていく必要がある。僕自身もそこを選手とスタッフといろいろ話しながら、構築していければいいと思う」（三笘）

残り5カ月。事前合宿は短く、海外組が集まって遠征するタイミングも残り1回しかない。今回の問題提起をターニングポイントにできるか。時間は着実に迫っている。

林 遼平

1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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