アルゼンチン人監督ホルヘ・サンパオ氏(64)が、フットボール界の現状について語っている。
これまでにチリ代表、アルゼンチン代表、セビージャ、サントスなどを指揮してきたサンパオリ氏。ポゼッションスタイルのフットボールを信条とする南米の名将は、2023年4月にフラメンゴ監督に就任したものの同年9月に成績不振によって解任され、現在はフリーとなっている。
今もブラジルに住んでいるサンパオリ氏はスペイン『マルカ』とのインタビューに応じ、フットボール界の現状について意見を述べた。ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティがチャンピオンズリーグ準々決勝でレアル・マドリードに敗れたことは、彼にとって受け入れ難いことだったようだ。
「マン・シティがレアル・マドリードに敗れた。その事実を消化するには苦労を強いられたよ。マドリードは彼らを上回るチームのレベルを下げてしまうんだ。あの試合は本当に苦しんだ。私はペップとフアンマ・リージョを応援していたからね」
「グアルディオラはノックアウトラウンドで苦戦しているが、それでも世界のナンバーワンであり続けているよ。最高の選手たちを擁していることを超越したところでね。私は彼のほかミチェル、ミケル・アルテタ、シャビ・アロンソ、デ・ゼルビ、チャビ・エルナンデスのことも好んでいる……。彼らはペップのメソッドを踏襲しつつ、独自の道を進んでいる」
現代フットボールは「あまりにフィジカル的で驚きのない見え透いたプレーに終始している」「高インテンシティーがテクニックを犠牲にしている」「相手の長所を潰す戦術が蔓延している」とも指摘されるが、サンパオリ氏は現在、多くの試合を見ていても「フットボールはそこまで見ていない」と語る。
「フットボールを見ているかって? フットボールはそこまで見ていない。“フットボール”はそんなにやっていないからね。しかし試合はいっぱい見ているよ。私の人生の中で、これだけ多くの試合が開催されていることはなかった」
「シティ、ミチェルのジローナ、アルテタのアーセナル、シャビ・アロンソのレヴァークーゼンはかなり見ている……。彼らはコレクティブなプレーの中で、最も自由を担保しているチームだ。そのほかのチームは競ってはいるが、それ以上は何もしていない。現代フットボールはかつてないほど競い合っているが、それでフットボールが魅力的になっているとは言えないね」
サンパオリ氏は、グローバル化がフットボール、もっと言えば各チームの画一化や均質化をもたらしているとも指摘した。
「フットボールにおける愚の骨頂はグローバルだね。このシステムは私たち全員を似たものにしてしまった。スーパーカルチャーがスモールカルチャーのアイデンティティーを破壊しているんだ。今の時代は勝利することに迫られ、プレー自体に価値が与えられなくなってしまったんだよ」
「今は誰もプレーについて話さない。どんな形であっても勝たなくてはいけないんだ。悲劇的なのはユースチームの監督ですら、1部リーグの監督と同じように勝利を義務付けられていることだね。両監督の目標はまったく別であるべきなんだよ」
「そういった姿勢は、選手を悪い方向に教育してしまう。試合に負ければ人生の敗者になり、社会的にも阻害されて、誰もその選手と一緒にはいたくなくなる。成功主義はすべてを困難なものにしてしまうんだ」
かつてはビエルシスタ(マルセロ・ビエルサ信奉者)とされたサンパオリ氏だが、現在はグアルディオリスタ(グアルディオラ信奉者)やリジスタ(リージョ信奉者)を名乗っている。
「監督としての私は攻撃的プレー、ポジショナルプレーに心酔している。以前の私はビエルシスタだったが、今はグアルディオリスタかリジスタだ。リージョと知り合ったとき、私はプレーアイデアの修正を図ることにしたんだよ」
「ビエルサとペップの違い? ビエルシスモ(ビエルサ主義)の攻撃コンセプトはよりダイレクトだ。できるだけ速くゴール前のゾーンに侵入することを目指す。その一方でグアルディオリスモ(グアルディオラ主義)はポジショナルプレーと呼ばれ、選手たちには明確な自由がある。もっと連係を大切にして、中盤での共存が生命線となるね。ビエルシスモはよりダイレクトで、守備はマンマーク。リジスモはゾーンディフェンスを活用する」
サンパオリ氏は、将来的にラ・リーガで再び指揮を執る可能性を否定しなかった。
「スペインで監督がしたいか? 間違いなくイエスだ。私はラ・リーガが好きだ。最初にあそこで指揮を執った2017年と比べて、経済的なレベルはかなり下がったが、しかしそのフットボールは偉大だよ」
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