3ポイントシュート攻勢で、初戦に続く100点ゲーム
アジアカップのグループリーグ第2戦、日本はシリアを相手に117-56と圧勝した。
試合開始直後のプレー、富樫勇樹からパスを受けた吉井裕鷹を経由して、左コーナーに開いたルーク・エヴァンスの3ポイントシュートで日本が先制する。すぐに渡邊雄太も続き、ここから日本の『3ポイントシュート・ショー』が開演した。
渡邊とエヴァンスのゴール下での得点に警戒してか、シリアのディフェンスはアウトサイドを手薄にしてもインサイドに人数を割いた。サイズはあるがフットワークでは劣るだけに、外を打たれてもリバウンドをきっちり抑えて良い攻めに繋げる狙いだったのだろうが、日本は思い切り良く3ポイントシュートを打っていく。必ずしもシュートタッチ自体は良くなくても、外でシンプルにパスを回すだけでオープンになる状況を生かして打ち続けた。
これは先発メンバーが下がっても変わらない。早々にコートに送り出されたセカンドユニットでは富永啓生が3本の3ポイントシュートをねじ込んだ。
29-9と大量リードを奪った第1クォーター、日本の3ポイントシュート成功率は43.8%(16本中7本成功)。シリアは第2クォーターになってようやくディフェンスを変えて外のシュートをケアし始めるが、一度調子に乗った富永はその外からディープスリーを立て続けに決めて、得点のペースを落とさない。
簡単にトランジションに持ち込み、ワイドオープンのチャンスを作れる状況が気の緩みを生み、ディフェンスがルーズになる場面もあったが、渡邊とエヴァンスがコートに戻るとゴール下の圧力が戻ってシリアの得点を止める。ディフェンスの要となる2人のパフォーマンスに呼応するように、ガード陣の前からのプレッシャーも激しさを取り戻し、綻びをすぐに消した。
須田侑太郎を始め、若手がアピールに成功
ここで日本の勢いをさらに加速させたのが須田侑太郎だ。2日前のカザフスタン戦では10分の出場で9得点を挙げたものの、3ポイントシュートは6本打って成功わずか1と調子が上がらなかった。それでもこの試合後、ヘッドコーチのトム・ホーバスは自ら須田の名前を挙げて「須田は今日決められなかったが、すごく良いシューターです。彼も経験を積んだし、いずれ決まり始めます」と、彼への期待を語っていた。
その須田が早々に勝敗を決する働きを見せる。第2クォーター途中に投入されると、がら空きとなった右コーナーから打てるチャンスを確実に決めて最初の得点を記録。ここからシリアの緩慢なディフェンスローテーションを突き、良いスポットへと一早く到達する須田に、テーブス海が、渡邊が、エヴァンスが、富樫が的確なアシストを送る。迷わずキャッチ&シュートを沈め続けた須田は、第2クォーターだけで3ポイントシュート7本を決め、最後はファウルを誘ってフリースロー3本を獲得。このすべて決めて24得点を挙げた。
前半を終えて68-27と、この時点で日本は勝利をほぼ手中に収めた。3ポイントシュート成功率は第1クォーターの43.8%からさらに上げて78.6%(14本中11本成功)。ここが低調であれば、外を捨ててリバウンドから攻めに転じるシリアにチャンスがあったかもしれないが、全くそうはさせなかった。第2クォーターほどの成功率はさすがに維持できなくても、第3クォーターも10本中4本の3ポイントシュートを決めて、日本はリードを広げていった。
第4クォーターの日本は、渡邊を始め主力をベンチで休ませたが、アピールが必要な若手がそれぞれ持ち味を発揮。220cmの相手センターに苦戦していた若い井上宗一郎も得点を挙げ、現状ではポイントガードの3番手であるテーブスも、第2クォーターではパスファーストだったがこの終盤はシリアのインサイドに切り込みフィジカルで渡り合う、富樫や河村とは異なる個性をアピールした。
最終スコアは117-56。2点シュートの試投数21に対して3点シュートは52と、とにかくアウトサイドから打ちまくり、最終的に51.9%(52本中27本成功)と高確率で決めたことが圧勝の展開を作り出した。シューターが良く決めたのはもちろん、フィールドゴール成功36に対して34アシストと、個人で強引に攻めるのではなく、オフボールでの連動にパスワークが噛み合い、良いシュートシーンを作り続けた結果の高確率だった。
シューター陣の層の厚さがホーバスジャパンのポイントに
須田は3ポイントシュート12本中9本成功、ゲームハイの33得点を記録。富永も11本中7本を決めており、この『日本のスプラッシュブラザーズ』が勝利の立役者となった。
その須田は試合後の会見で、「一番は自分の役割だと認識して、自信を持って打てていること」とシュート好調の要因を語る。「このチームのキャンプが始まった時には躊躇していた部分があったんですけど、トムコーチと話す機会があった時に『須田の役割は3ポイントシュートだ』と明確に言ってもらって、その次の日から自信を持って打てて、それでシュートが入っています」
ホーバスも須田について「練習ではよく入っていて、それを試合で見ることができてハッピー」と満足気だった。
『シュートは水物』と言われるように、どれだけ有能なシューターでも決まらない日はある。チームとしては期待できるシューターを何人も揃え、試合の中でどの選手のシュートタッチが良いかを探り、その選手に打たせるセットプレーを組んで爆発を引き出すことが必要だ。
今の日本代表では西田優大が先発、2番手で富永がその地位を固めつつあるが、ここに並ぶシューター陣の層が厚くなれば、その日の調子に左右されずにチームとして安定したオフェンス力を出せるようになる。
ホーバスが女子日本代表を率いていた時期も、チームを代表するシューターは大会ごとに異なっていた。栗原三佳、宮澤夕貴、水島沙紀、三好南穂、林咲希……。女子の強さを支えていたシューター陣の層の厚さを男子でも再現できれば、大きな武器となる。
須田は走って跳べる身体能力の高さがあり、Bリーグではオールラウンドな活躍を見せているが、ホーバスが代表で彼に期待するのはその身体能力を生かしたディフェンスであり、オフェンスでは3ポイントシュート。その彼のシューターとしての台頭は、日本代表にとって非常に良い兆候だ。
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