カネロがスーパーミドル級4団体制覇に向けて大手をかけるのか──。
5月8日(日本時間9日)、米テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムでスーパーミドル級3団体王座をかけて、WBAスーパー&WBC王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)とWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(イギリス)が対戦する。今回は直前情報を交えたプレビューをお届けしよう。
両者は昨年春にも対戦の話がありながら、新型コロナウイルスの影響で試合は流れた。その後、ミドル級とスーパーミドル級のタイトルを保持していたカネロが当面のターゲットをスーパーミドル級に絞り、昨年12月にWBAスーパー王者だったカラム・スミス(イギリス)に勝利してWBAとWBCの2冠王者に君臨。一気にサンダースとの3団体統一戦が行われる運びとなった。
現地時間6日、主催のマッチルームボクシングは当日のAT&Tスタジアムには7万人の観衆が集まると明らかにした。これは観客動員数のアメリカにおける屋内イベント記録、6万3352人を更新するのだという。これまでの記録は1978年、かのモハメド・アリがレオン・スピンクスとの再戦でマークした数字だった。
またしても勲章を一つ増やしたカネロは30歳という年齢でキャリアの充実期を迎えている。昨年には長くパートナーシップを結んでいたゴールデンボーイプロモーションズを離れてフリーエージェントとなり、独自の路線を歩み始めた。そのやり方は一世代前のスーパースター、フロイド・メイウェザーのように時に傲慢に映ることもあるが、それがスーパースターというものなのだろう。カネロは「オレが中心」とばかりにスーパーミドル級4団体制覇に突き進んでいる。
一方のサンダースは注目度からいえばカネロの足元に及ばないとはいえ、トップボクサーとしての地位を着実に築いてきた。20歳でアマチュアからプロに転向し、6年後の15年12月、アンディ・リー(アイルランド)を下してWBOミドル級王座を獲得。3度の防衛を成功させる間、WBA王者だった村田諒太(帝拳)との対戦話があったことは記憶に新しい。その後、クラスを上げて19年5月にWBOスーパーミドル級王座に就き、2度の防衛を成功させた。ここまで30戦して30勝(14KO)と全勝をキープしている。
戦前の予想はカネロ有利という見方が大勢を占める。しかし今回ばかりは2月に3回TKO勝ちしたアブニ・イルディリム戦のようなイージーな試合にはならないだろう。その理由はサンダースに実績がある上、このサウスポーがなかなかの曲者だからである。
サンダースは決して好戦的ではなく、スタンスを広くとって斜めに構え、懐を深くしてディフェンスを重視しながら試合を進める。しっかり戦略を立て、試合の流れに応じてゲームプランを組み立てるのがうまい。サンダース自身、「この試合は頭脳が勝敗を分けるだろう。パワーでも筋肉でも技術でもない」と試合前に答えている。
オールラウンダーのカネロに対しても、身長とサウスポーという利点を最大限にいかして戦うことになるだろう。自分からはなかなか仕掛けず、フェイントを駆使して距離をキープする。ブーイングが起きてもお構いなしだ。カネロをいらつかせ、ジャブで探りを入れながら前に出てきたところにカウンターを合わせようとするのではないだろうか。
試合前にサンダースは「リングが小さすぎる。まるで電話ボックスのようだ」と試合で使われるリングの大きさにケチをつけた。ジャッジがすべてアメリカ人であることにも不満を示し、カネロ陣営に対して揺さぶりをかけた。サンダースはリングの外でも“頭脳派”と言えるかもしれない。
それでもなお、カネロに分があると見るのは、駆け引きの面でもカネロが上回ると考えるからだ。カネロはこれまで58戦、4階級にわたってトップ選手と拳を交えており、サンダースの挑発にやすやすと乗るとは思えない。スピードの差をいかしてまずはガードの上からサンダースを叩き、ポイントをしっかり獲得しながら徐々に有効打をねじこんでいくのではないだろうか。判定になっても構わない。その気持ちがカネロに余裕をもたらすだろう。
カネロはこの試合に勝てば秋にもIBF王者、カレブ・プラント(アメリカ)との4団体統一戦が見込まれる。順当にカネロが勝利するのか、それとも「たまにはアンダードッグが勝ったほうがボクシングのためにはいい」と不敵に言い放つサンダースがアップセットを起こすのか。7万人の観衆が見守る中、対照的な両者が雌雄を決する。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
サウル“カネロ”アルバレスの戦績
- 国籍:メキシコ
- 生年月日:1990年6月8日
- 身長:175.3cm
- リーチ:177.8cm
- 対戦数:58試合
- 対戦記録:55勝1敗2分、37KO
ビリー・ジョー・サンダースの戦績
- 国籍:イングランド
- 生年月日:1989年8月30日
- 身長:180.3cm
- リーチ:180.3cm
- 対戦数:30試合
- 対戦記録:30勝0敗、14KO
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カネロ vs サンダースのファイトカード
カード | マッチデータ |
---|---|
カネロ・アルバレス vs.ビリー・ジョー・サンダース | WBC、WBA、WBOスーパーミドル級タイトルマッチ |
エルウィン・ソト vs.高山勝成 | WBOジュニアフライ級タイトルマッチ |
キエロン・コンウェイ vs.スレイマン・シソクホ | ジュニアミドル級 |
フランク・サンチェス vs.ナギー・アギレラ | ヘビー級 |
マーク・カストロ vs.アービング・マシアス・カスティーヨ | ジュニアライト級 |
キーショーン・デイビス vs.ホセ・アントニオ・メザ | ライト級 |
ケルビン・デイビス vs.ヤン・マルサレク | ウェルター級 |
クリスチャン・アラン・ゴメス・デュラン vs.TBA | ウェルター級 |
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
日時(日本時間) | カード | 詳細 |
---|---|---|
5月9日(日) 9:00 | カネロ・アルバレス vs.ビリー・ジョー・サンダース | スーパーミドル級3団体統一戦 |
5月16日(日) 3:00 | ハーパー vs.チェ・ヒョンミ | WBC、WBA世界女子Sフェザー級王座統一戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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