4ベルトを懸けたスーパーファイト
女子世界タイトルの最多防衛記録を25まで伸ばしているメジャー4団体ウェルター級王者、セシリア・ブレークフスが15日（日本時間16日9:00）、米オクラホマ州タルサのリングに上がる。チャレンジャーは1階級下のスーパー・ライト級で世界タイトルを保持するジェシカ・マキャスキル。試合はブレークフスが保持するウェルター級4団体（WBA、WBC、IBF、WBO）のベルトすべてがかけられる。
記録ずくめの女王〝ザ・ファーストレディ〟ブレークフス
まずは女子ボクシングをあまり見たことがない人のために〝ザ・ファーストレディ〟のニックネームを持つブレークフスがいかにずば抜けた存在であるかを説明させてほしい。
南米のコロンビアで生まれ、2歳でノルウェー人の養子となったブレークフスは、このときからノルウェー人として人生を歩んできた。14歳でキックボクシングをはじめ、のちにボクシングに転向。アマチュアでは欧州選手権優勝、世界選手権では銀メダルを獲得するなど活躍した。
2007年にプロに転向してからも、その実力は遺憾なく発揮された。09年に初めてWBC･WBAの世界タイトルを獲得すると、翌10年にはWBO王座も吸収。その後も身長171センチの恵まれた体格とスピードを生かし、ワンツーを軸とした正統派スタイルで連勝を重ねた。14年にはIBF王座も手にして、女子ボクサーとして初めて主要4団体の王座統一を達成。このときマークしたV15は女子の最多防衛記録であり、以来自らの記録を更新し続けている。
ちなみに男子の連続防衛記録は、〝褐色の爆撃機〟と恐れられたヘビー級王者、ジョー・ルイスが1948年に打ち立てた25。男女の記録を比べることに異論を唱える声があるとはいえ、今回勝てばルイスの記録を72年ぶりに塗り替える快挙となる。記録ずくめの女王、それが〝ザ・ファーストレディ〟なのだ。
そんな女王の挑戦者に抜擢されたのがマキャスキルは2018年にWBCスーパー・ライト級王座を獲得し、初防衛戦でWBAベルトも腰に巻いたなかなかの実力者。ビッグネームであるブレークフスを下せば一躍脚光を浴びるのは間違いなく、アップセットを演じようと燃えに燃えているに違いない。
ブレークフスは試合前の記者会見で次のように述べている。
「彼女はとてもハングリーだと思う。私は彼女を軽く見てはいない。すごくタフなファイトになると思うので、懸命に取り組んでいる」。
無敵の女王のキャリアは最終章へ
余裕の発言とも受け取れるが、この試合にかけるブレークフスのモチベーションは、勝負とは別のところにもあることを抑えておきたい。無敵の女王も38歳。これからキャリア最終章を迎えるに当たり、自らの背中に迫ってきた若きライバルとのスーパー・ファイトが期待されているのだ。
いま、女子ボクシング界には主要4団体のベルトを腰に巻くチャンピオンが世界に3人いる。その一人がブレークフスであり、残るはライト級のケイティ・テイラー（アイルランド）、ミドル級のクラレッサ・シールズ（アメリカ）である。
33歳のテイラーはロンドン五輪の金メダリストで、イギリス大手のプロモーション、マッチルームボクシングのサポートを受けてキャリアを進める人気選手。ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪で連続金メダルを獲得したシールズは3人の中で25歳と最も若い。もうおわかりだろう。スーパー・ファイトとはこの3人によるバトルを指しているのだ。
問題は3選手の階級が違うことだが、組み合わせによっては十分に実現の可能性があると言える。ライト級のテイラーとミドル級のシールズの対戦は、体格差が大きな壁になりそうだが、テイラーvs.ブレークフス、ブレークフスvs.シールズなら歩み寄る余地は十分にある。
テイラーはライト級4団体以外にもWBOスーパー・ライト級王座を獲得し、シールズもミドル級4団体以外にスーパー・ウェルター級でWBCとWBOのベルトを保持している。つまりテイラーもシールズもブレークフスと1階級しか違わない階級のベルトホルダーであり、どちらかがクラスを上げるか、下げるかすれば（あるいは中間の契約体重という選択肢もある）、この2つのカードは実現するのである。
ボクシングでは「先のことばかり見ていると、目の前の試合で足下をすくわれる」とよく言われるのだが、ファンが将来のスーパー・ファイトを夢見るのは自由。先のことも大いに頭に入れて、〝ザ・ファーストレディ〟のファイトを楽しみたい。
文・渋谷淳（しぶや・じゅん）
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」（講談社）。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL（スポール）」の編集にも力を注いでいる。
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
| 日時（日本時間） | カード | 詳細 |
|---|---|---|
| 8月15日（土） 03:00 | フェリックス・キャッシュ vs.ジェイソン・ウェルボーン | マッチルーム・ ファイト・キャンプ2020 |
| 8月16日（日） 9:00 | セシリア・ブレークフス vs.ジェシカ・マキャスキル | WBC世界フライ級タイトル戦 |
| 8月23日（土） 03:00 | ディリアン・ホワイト vs.アレクサンドル・ポベトキン | WBC世界ヘビー級暫定タイトル戦 |
| 8月29日（土） 未定 | ホルヘ・リナレス vs.ハビエル・フォルトゥナ | メインイベント |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信！今すぐ下の記事をチェックしよう。