スーパー・ミドル級でWBAスーパー王座とWBC王座を保持するサウル“カネロ”アルバレスが2月27日（日本時間28日）、米フロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムでトルコのアヴニ・イルディリムを迎えて防衛戦を行う。同会場はNFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地で、新型コロナウイルスで客を間引きながらも1万5000人が観戦予定のビッグイベントだ。
押しも押されもせぬボクシング界のスーパースター、カネロは昨年12月、WBAスーパー王者のカラム・スミスを下してWBAスーパー王座と空位だったWBC王座を獲得。10センチ以上の身長差をものともせず、無敗のスミスに完勝してS･ミドル級のメジャー4団体制覇を高らかに宣言した。
カネロのトレーナー兼マネジャーのエディ・レイノソ氏は「2月27日は私たちがスーパー・ミドル級のタイトルを統一するという新たな旅の2つ目のステップになる」とコメントしている。そう、カネロ陣営はわずか70日ほどの試合間隔で迎えるイルディリム戦の先を早くも見据えているのだ。
カネロをサポートするマッチルームボクシングのプロモーター、エディ・ハーン氏は27日の試合が終わっていないというのに、カネロとWBO王者、ビリー・ジョー・サンダースとの統一戦を5月に開催するとアナウンスした。そして年内にIBF王者、カレブ・プラントの統一戦まで水面下で計画を進めている。カネロにとってイルディルム戦は単なる通過点ということだろう。
アンダードッグ扱いのイルディリムだが、れっきとしたWBCの指名挑戦者で「母国の誇りを胸に戦う」と語るようにトルコ初の世界チャンピオンを狙っている。キャリアで喫した敗北は、2017年に現WBAミドル級暫定王者のクリス・ユーバンクJrに3回TKO負けした試合と、19年にアンソニー・ディレルとのWBC王座決定戦で負傷判定負けした試合の2つ。ディレル戦は10回負傷判定で、スコアは2-1と割れた惜しい敗戦であり、それだけにWBCのベルトにかける思いは強い。
2人のキャリアをたどれば、戦前の予想がカネロの圧倒的優位となるのも仕方のないこととはいえ、「勝負に絶対はない」は歴史が証明している。ここでイルディリムのトレーナー、ジョエル・ディアス氏の自信満々のセリフを紹介しておきたい。
「彼は2度の敗戦からまったく異なるボクサーに変身した」。
ディアス氏はESPNの解説者として知られる元世界王者、ティモシー・ブラッドリーらを指導した腕利きで、ディレル戦後にイルディリムとタッグを組み、ボクシングの改革に取り組んだ。その成果をカネロ相手に大いにぶつけようとしているのである。
体格に恵まれるイルディリムは近い距離での戦いを得意にしており、今回もガードを固めて接近戦に持ち込もうとするだろう。これに対しカネロは挑戦者の圧力をいなしながら、ボディ打ち、アッパーを駆使して下から崩していこうとするのではないだろうか。
挑戦者が王者のパンチをブロックしながら距離を詰めたとしても、そこからが問題だ。カネロは接近戦だってお手の物。多彩なアングルからパンチを繰り出して挑戦者を痛めつけることだろう。イルディリムとしてはここで決定打を許さずに粘り、フィジカルの強さを生かしてグイグイとカネロを削っていきたいところだが…。
「今年は4試合やりたい」と公言し、4団体統一に突き進むカネロが順当に勝利するのか。それともトルコ初の世界チャンピオンを目指すイルディリムが番狂わせを起こすのか。マイアミの夜空を焦がすような熱いファイトに期待が集まる。
文・渋谷淳（しぶや・じゅん）
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」（講談社）。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL（スポール）」の編集にも力を注いでいる。
サウル“カネロ”アルバレスの戦績
- 国籍：メキシコ
- 生年月日：1990年6月18日
- 身長：175.3cm
- リーチ：179.1cm
- 対戦数：57試合
- 対戦成績：54勝1敗2分（36KO）
アヴニ・イルディリムの戦績
- 国籍：トルコ
- 生年月日：1991年8月5日
- 身長：181.6cm
- リーチ：177.8cm
- 対戦数：23試合
- 対戦成績：21勝2敗（12KO）
カネロ vs イルディリムのファイトカード
| カード | マッチデータ |
|---|---|
| カネロ・アルバレス vs.アヴニ・ユルドゥルム | WBC, WBCスーパーミドル級タイトル防衛戦 |
| フリオ・セサール・マルティネス vs.マックウィリアムズ・アローヨ | WBCフライ級タイトル防衛戦 |
| 張志磊 vs.ジェリー・フォレスト | ヘビー級 |
| ディエゴ・パチェコ vs.ロドルフォ・ゴメス Jr | スーパーミドル級 |
| アレクシス・エスピーノ vs.アシュトン・サイクス | スーパーミドル級 |
| アレクシス・エドゥアルド・モリーナ vs.TBA | フェザー級 |
| マーク・カストロ vs.ラウル・コロナ | スーパーフェザー級 |
| アーロン・アポンテ vs.ハリー・ジグリオッティ | スーパーライト級 |
| キーショーン・デービス vs.レスター・ブラウン | ライト級 |
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
| 日時（日本時間） | カード | 詳細 |
|---|---|---|
| 2月27日（土） 3:30 | スカルディーナ vs.ヌニェス | EBUヨーロッパスーパーミドル級タイトルマッチ |
| 2月27日（土） 15:30 | ジョセフ・パーカー vs.ジュニア・ファ | 2020年12月11日に開催予定だった試合 |
| 2月28日（日） 9:00 | カネロ vs.イルディリム | WBA／WBCスーパーミドル級タイトルマッチ |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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