WBAスーパー&IBF世界スーパー・バンタム級タイトルマッチが日本時間4日、ウズベキスタンのタシケントで行われ、敵地に乗り込んだ元IBF同級王者で現暫定王者の岩佐亮佑は2冠王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に5回1分30秒TKO負けした。
侍の姿を見てほしい──。試合前日、所属ジムを通じて日本のファンにメッセージを発信していた岩佐は言葉通り、伸ばした髪を束ね、袴をイメージしたガウンをまとう姿は侍そのもの。アフマダリエフの応援が100%という完全アウェーのヒューモ・アリーナで“侍”の戦いが始まった。
サウスポー対決。スタートは岩佐が積極的にジャブを打ち込んで先制した。パワフルでにパンチを振り回してくるアフマダリエフに対し、リーチの長い岩佐は距離を取って戦いたいところだが、フットワークでさばくだけではペースをつかめない。だからパンチをしっかり打って前で相手を止める。岩佐の意図がしっかり伝わってくる決して悪くない立ち上がりだった。
しかし、リオデジャネイロ五輪で銅メダルに輝いたウズベキスタンの英雄は2回に入ると早くも力を発揮し始める。アフマダリエフのプレスが強まると、岩佐は立ち上がりのようなボクシングができなくなった。想像以上の力を秘めていたのがアフマダリエフのジャブだ。岩佐はビッグパンチこそかわすものの、ウズベキスタン人のコンパクトなジャブをたびたび被弾してしまう。その結果、ロープを背負うシーンが増え、展開は苦しくなっていった。
それでも岩佐は得意の左を打ち込みながら何とか状況を打開しようと試みた。左ストレートをイン、そしてアウトから打ち込み、接近してのアッパー、右ボディも使っていくが、アフマダリエフは防御が固く、これを崩すことがなかなかできない。逆にアフマダリエフはジャブを顔面だけでなく、鋭く踏み込んでボディにも突き刺して岩佐を下がらせることに成功した。
迎えた5回、さらに余裕の出たアフマダリエフが左アッパー、右フックを打ち込むと、ダメージを負った岩佐が大きく後退。アフマダリエフはすかさず得意の連打で襲いかかる。一度はここをしのいで反撃に転じようとしたが、再びアフマダリエフにジャブから畳みかけられるとロープに後退。ここで主審が試合を止めた。やや早いストップにも感じられ、岩佐は「マジか」という表情を浮かべたが、しばらくすると自らを納得させるようにうなずいた。
もともと岩佐はアフマダリエフのようにグイグイ前に出てくるタイプ、さらにはサウスポーと相性が良くなかった。2011年にプロ初黒星を喫した日本タイトルマッチの山中慎介、初めての世界戦だった15年のIBFバンタム級暫定王座決定戦で敗れたリー・ハスキンス(イギリス)、2018年8月、IBF同級正規王座を奪われたTJ・ドヘニー(オーストラリア)はいずれもサウスポーだった。
千葉・習志野高で高校3冠に輝き、テクニックに絶対の自信を持っていた岩佐はこうした苦い敗戦もあって、以前は敬遠していたフィジカルトレーニングを積極的に取り入れ、足りなかった力強さをコツコツと強化した。
サウスポーとの戦い方もしっかり研究し、2019年12月、元WBOバンタム級王者、サウスポーのマーロン・タパレス(フィリピン)を11回TKOで下してIBFスーパー・バンタム級暫定王座を獲得した。こうしたプロセスをへて、岩佐はもう自分が昔の自分とは違うと感じていた。だからこそアフマダリエフとの試合を望み、アウェーのウズベキスタンまで乗り込み、勝利に自信を持っていたのだが…。
今回の試合に勝てばWBAとIBFの2本のベルトを巻くことになり、そうなればいろいろな可能性が広がるはずだった。岩佐は試合前、WBC同級王者、ルイス・ネリ(メキシコ)との統一戦を望んでいたが、これも遠のいてしまった。31歳のサウスポーにとって手痛い敗戦となった。
文・渋谷淳(しぶや・じゅん)
1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
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