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【小倉茂徳の視点】第8回・灼熱のスペインGPはハミルトンが制す…王者の“修正力”にF1の凄みを見た!|F1

【小倉茂徳の視点】第8回・灼熱のスペインGPはハミルトンが制す…王者の“修正力”にF1の凄みを見た!|F1DAZN
DAZNのF1中継で解説を務めるモータースポーツジャーナリスト、小倉茂徳氏が独自の視点でモータースポーツ界の今に迫る。2020年のF1第6戦スペインGPは、メルセデスのハミルトンが今季4勝目をマーク。第5戦はフェルスタッペンに今季初優勝を許したものの、第6戦までの短時間で王者ハミルトン&メルセデスが見せた修正ぶりに、小倉茂徳は現代F1の“凄み”を感じたという。
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文・小倉茂徳(おぐら・しげのり)

モータースポーツジャーナリスト・解説者。鈴鹿サーキットと同じ1962年生まれ。1987-88年ホンダのF1チームの広報スタッフとしてF1を転戦。以後、現職に。子供向けにレーシングカーの仕組みと面白さを伝えながらSTEM教育への入り口となるレクチャーも行っている。2016年からは、スポーツのネット配信DAZNのF1解説を担当。

真夏のスペイン、未知との戦い

2020-08-14 Spain F1 Formula 1 Hamilton Mercedes 

バルセロナ郊外のカタルーニャサーキットは、1991年以来スペインGPの開催地で、毎年の合同テストも行われるところ。

F1チームとドライバーには慣れ親しんだはずのサーキットでした。

ところが毎年の合同テストは2月から3月の冬の終わり、スペインGPは春の5月開催で、8月のカタルーニャサーキットでのF1開催は初めてでした。そのため、全チームとも未知のコンディションとの戦いになりました。

実際、今年のスペインGPは晴天に恵まれ、決勝の日曜日も気温は28~30度、路面温度は42~50度にもなりました。

スペインGPのタイヤは、2週間前のイギリスGPと同じで、ハード、ミディアム、ソフトと、最も硬い3種類とされていました。それでも、このコンディションはタイヤには厳しく、決勝の戦略も上位勢は2回のピットストップとなりましたが、完走全19台のうち、2回ストップが13台、1回ストップが6台と別れ、正しい戦略が絞り込めなかったレースでした。

弱点を克服したメルセデスチーム

シルバーストーンサーキットで開催された過去2戦では、メルセデスチームがタイヤに苦しみました。

第4戦イギリスGPでは終盤にメルセデスの2台に相次いでタイヤパンクが発生。ルイス・ハミルトンのトラブルはファイナルラップで起こったこともあり、かろうじてトップでゴール。

続く第5戦F1 70周年記念GPでは、タイヤの消耗に苦しんだ結果ペースが上がらず、レッドブルのマックス・フェルスタッペンに優勝を許しました。

シルバーストーンと同様にタイヤに横方向への強い踏ん張りを求める高速コーナーがあること、そして路面温度もかなり熱くなることから、第6戦のスペインGPでもメルセデスは3戦連続でタイヤによって苦戦するのでは、と予想されました。

ところが、決勝レースがスタートするとハミルトンはトップに立ち、2番手フェルスタッペンとの間隔を見ながら、タイヤを労る走りを続けます。

トップに立ったことで、前に他車もなく、バトルをすることもなく、よりタイヤを労りやすい状況となりました。これは、まるでF2の圧勝パターンのようでした。

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そして、レース終盤の50周目に再びタイヤを交換したハミルトンは、残り周回数でタイヤが消耗しきってしまう心配が少なくなったことで、本来のハイペースに。ここから2番手フェルスタッペンを一気に引き離しました。

過去2戦タイヤで苦しんだメルセデスチームでしたが、イギリスからスペインへのわずか数日の間に、その対策を施してきていたのでした。

苦戦や敗北を糧に、進歩や改善、勝利につなげたメルセデスチームの技術スタッフたちの底力と、それをごく短期間で実現するF1の凄さを、改めて見せてもらいました。もちろん、技術スタッフたちから託されたマシンの底力を、最大限まで引き出したハミルトンも見事でした。

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足りなかったレッドブル・ホンダ

強いメルセデスとハミルトンに唯一迫ろうとしたのは、第1コーナーで2位に浮上したレッドブルのフェルスタッペンでした。しかし、ハミルトンを攻略できませんでした。

確かにレッドブルのマシンRB16は開幕のころと比べれば速く、安定感も増しています。また、ホンダのパワーユニットRA620Hも良いのですが、まだ車体もパワーユニットもメルセデスには足りないようです。レース後のフェルスタッペンも「まだ改善が必要」という旨のコメントをしていました。

レーシングポイント、ランキング3位へ

2020-08-19 Formula 1 F1 Racing Point

一方、今回もピンク色のレーシングポイントのマシンが好調でした。

ランス・ストロールは4位、病欠から戻ったセルジオ・ペレスも5位に入賞。これでチームはコンストラクターズランキングで3位(63ポイント)に浮上。ブレーキ冷却ダクトの違反で15点をはく奪(※ペナルティがなければ78ポイント)されてもです。

このレーシングポイントと、マクラーレン(62ポイント)、フェラーリ(61ポイント)はコンストラクターズランキング3位の座を激しく争っています。

さらに今回は振るわなかったルノー(36ポイント)もこれを追う展開です。この第2グループの激しい戦いもまた、今後の楽しみです。

1週の休みを置いて高速コースでの連戦へ

さて、F1はまた1週のお休みのあと、また3連戦となります。

第7戦はベルギーGP(8月30日決勝:スパフランコルシャン)、第8戦はイタリアGP(9月6日決勝:モンツァ)、第9戦はトスカーナ・フェラーリ1000レースGP(9月13日決勝:ムジェロ)。

とくにスパとモンツァは今季屈指の高速コースでの刺激的な戦いです。

F1の開発は、日進月歩ではなく、分進日歩のような急ピッチです。メルセデスがわずか数日で弱点を克服したように、レッドブルとホンダをはじめ、他のチームもまた勢力図を塗り替えることをやってくるかもしれません。

シーズンはまだ前半。まだまだ目が離せないF1です。

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チーム・ドライバー

日程・番組表

 レースフリー走行・予選決勝
第1戦オーストリアGP 7月3日(金) ~ 4日(土)7月5日(日)
第2戦シュタイアーマルクGP 7月10日(金) ~11日(土)7月12日(日)
第3戦ハンガリーGP 7月17日(金) ~18日(土)7月19日(日)
第4戦イギリスGP 7月31日(金) ~ 8月1日(土)8月2日(日)
第5戦70周年記念GP 8月7日(金) ~ 8日(土)8月9日(日)
第6戦スペインGP 8月14日(金) ~15日(土)8月16日(日)
第7戦ベルギーGP 8月28日(金) ~29日(土)8月30日(日)
第8戦イタリアGP 9月4日(金) ~ 5日(土)9月6日(日)
第9戦トスカーナ・フェラーリ1000GP 9月11日(金) ~12日(土)9月13日(日)
第10戦ロシアGP 9月25日(金) ~ 26日(土)9月27日(日)
第11戦アイフェルGP 10月9日(金) ~ 10日(土)10月11日(日)
第12戦ポルトガルGP 10月23日(金) ~24日(土)10月25日(日)
第13戦エミリア・ロマーニャGP 10月31日(土)11月1日(日)
第14戦トルコGP 11月13日(金) ~ 14日(土)11月15日(日)
第15戦バーレーンGP 11月27日(金) ~ 28日(土)11月29日(日)
第16戦サクヒールGP 12月4日(金) ~5日(土)12月6日(日)
第17戦アブダビGP 12月11日(金) ~ 12日(土)12月13日(日)