アゼルバイジャンGPでフェラーリ2台がリタイア…レッドブル勢は“敵なし”に
前回モナコGPのコラムを僕は「(シャルル)ルクレールは“とにかくミスだけはしないでくれ”と祈るような気持ちでしょう」と、締めました。しかしルクレールはモナコに続いて、アゼルバイジャンも勝つことができませんでした。
今回はミスではなくエンジントラブルでしたが、ルクレールにとってはチームのせいで敗れたことは同じです。レース後のマッティア・ビノット代表は、「PUトラブルの原因がわからない」とコメントしていました。ルクレールはこれでスペインGP以降3戦連続でトラブル、あるいはミスで勝利を失ってきたわけで、本当に原因不明だとしたら事態は相当に深刻です。
一方で今季のフェラーリマシンが、十分にタイトルを狙える実力を持っていることも確かです。しかもどんな特性のコースでも、ほぼ満遍なく速い。そこはレッドブル、そしてマックス・フェルスタッペンにとって、かなり脅威のはずです。
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前週末のアゼルバイジャンでも、ルクレールはポールポジションを獲得しました。8戦中6回のポール、残り2レースも予選2位という群を抜く速さは、F1オールドファンにはアイルトン・セナを彷彿とさせるのではないでしょうか。
さらに今回のフェラーリは超高速コースの特性に合わせて、最高速も上げてきました。ひとことで言えば「予選もレースも速い」クルマに仕上がっていた。勝つ準備は整っていたと言えます。
ところがレース後のフェルスタッペンは「シャルルがリタイアしていなくても、僕は勝っていた」と言ってました。本当にそうだったのか、具体的に検証してみましょう。
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最初の勝負どころは序盤の9/51周目、カルロス・サインツのリタイアでした。これで首位ルクレールをはじめとする多くのドライバーがピットインし、ハードタイヤに履き替えました。
一方でレッドブルの2台は、ステイアウトを決めました。ミディアムタイヤのピットインウィンドウ(タイヤ交換のタイミング)はスタート後18~23周で、9周目というタイミングは早すぎたとレッドブル陣営は考えたのでしょう。
対照的にフェラーリは、なぜルクレールを早めに入れたのか。タイヤの持ちがレッドブルほど良くないこと、特に決勝日は路面温度が50℃に達する高温コンディションだったことが大きかったと思われます。
これでルクレールはいったん3番手に後退しましたが、新品ハードで1周約1秒ずつフェルスタッペンとセルジオ・ペレスとの差を詰めていきます。その後彼らも16、18周目に相次いでピットイン。再びルクレールが首位に立ち、この時点で2番手フェルスタッペンには約13秒の大差をつけていました。
この13秒差を跳ね返して、フェルスタッペンは逆転優勝できたのか。20周目にルクレールがリタイアしてしまったため、本当のところはわかりません。しかしフェルスタッペン自身は「レースペースは信じられないくらいよかったし、タイヤマネージメントも完璧にできていた」「だからリタイアしなくても勝ててた」と、自信たっぷりにコメントしています。
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確かにレースペースはどんなコースでも基本的にレッドブルの方が優れ、タイヤの持ちもいい。さらに今回はルクレールとフェルスタッペンでは、タイヤ寿命に9周差がありました。
それだけ見れば、後半タイヤのデグラデーションが悪化し、ペースを落としたルクレールが、フェルスタッペンに抜かれていたかもしれません。高温コンディションも、ルクレールには不利な要因でした。
一方でルクレールと同じ9周目にピットインしたピエール・ガスリー、セバスチャン・ベッテルは、残り42周をハード1セットで走り切って5、6位入賞を果たしています(ただしガスリーはそこまで4位を走っていたのが、33周目にタイヤ交換したハミルトンに抜かれています)。
同じ9周目ピットインのルクレールも、レース終盤はタイヤ劣化に苦しめられ、フェルスタッペンとの差はかなり縮まっていたことでしょう。ただ今年のアゼルバイジャンは、2km以上の超ロングストレートでも頻繁なオーバーテイクが見られませんでした。
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今季のベンチュリーマシンは、フロア下で大部分のダウンフォースを発生させている分、スリップストリームの効果はさほどないようです。さらに上述したように、バクーでのフェラーリは低ダウンフォース仕様のマシンを投入しており、最高速が上がっていました。
その辺りを考慮に入れると、ルクレールがそのまま逃げ切っていた可能性も決して小さくないと思います。実際にはどうだったのかは、永遠に謎ですが。
しかし間違いなく言えるのは、あのままルクレールが走っていたら、フェルスタッペンと最後まで激しい首位争いを演じていただろうということです。その意味でも本当に罪作りな、なんとも残念なエンジントラブルでした。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第9戦:カナダGP※日本時間
6月18日(土)3:00~フリー走行1回目
6月18日(土)6:00~フリー走行2回目
6月19日(日)2:00~フリー走行3回目
6月19日(日)5:00~予選
6月20日(月)3:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |