進化と死が隣り合わせだったF1黎明期を描いた衝撃作『The Killer Years』

2014年の日本GPで、ジュール・ビアンキがコースアウトしてクラッシュ。その後9カ月にわたって懸命の治療が続けられたが、ビアンキは意識を取り戻さないまま2015年7月17日にこの世を去った。享年25歳。

この訃報はF1ファンにとって記憶に新しい、悲しいニュースとなっている。F1ドライバーのレース中死亡例は、アイルトン・セナ、ローランド・ラッツェンバーガーが他界した1994年以来、21年ぶりのこと。それまで約20年間にわたってF1ドライバーから死者が出ていなかったのは偶然ではなく、英雄セナが1994年に事故死したことに伴い、モータースポーツ界全体の安全に対する意識が大幅に変わったことが一因とされる。

今日においては、レギュレーションの範ちゅうで極限までマシンの効率化を推し進める一方、安全性の確保も最優先事項となっている。コックピットを保護する様々なシステムが導入され、2018年からはコックピット上部にアーチをかけたような強化素材、新システム「Halo」の搭載が義務となった。最新のテクノロジーが詰め込まれたF1のマシンも安定性が求められ、マシントラブル、リタイヤの頻度も20世紀のF1界に比べ、大幅に減少している。

では、F1の黎明期はどうだったのかと問われると“速さと危険は隣り合わせ”という概念が当たり前の世界で、そのリスクは現代とは比べ物にならないほど大きなものだった。

『DAZN』で配信している「『BBCドキュメンタリー』グランプリ -The Killer Years」では、1960年代～1973年までのF1について、各チーム、ドライバーがいかなる形で速さを競い、進化していったのか。そして、その中で何人ものドライバーが命を落とした事実について伝えている。

レジェンドであるジョン・サーティース（1964年王者）やジャッキー・スチュワート（1969年、1971年、1973年王者）、エマーソン・フィッティパルディ（1972年、1974年王者）、故ヨッヘン・リント（1970年王者）の未亡人ニーナなどが出演し、当時のF1界について回顧。“危険な時代”を間近に見ていた当事者たちの赤裸々な言葉は、現代におけるモータースポーツ界の価値観とは大きく異るものだったとうかがえる。実際、当時のクラッシュはすぐさま炎上に転じ、ドライバーたちの命を脅かすものとなっていた。

マシンに限らず、当時のサーキットも安全面が今ほど重視されていなかった。一部のサーキットではガードレールやエスケープゾーンも十分ではなく、ストレートとピットレーンを区切るコンクリートウォールも設けられていない。WRCのラリーカーさながらにF1のマシンがジャンプするバンピーなサーキットも当時は存在した。現代のF1に慣れ親しんだ今になって半世紀以上も前の映像を見ると、まさに衝撃的。

本動画にはヴォルフガング・フォン・トリップス、ロレンツォ・バンディーニ、ジョー・シュレッサー、ロジャー・ウィリアムソンが命を失った衝撃的な映像も収められている。中でも同僚デビッド・パーレイがマシンを止めて駆け寄り、炎に包まれたウィリアムソンを救おうとしたその姿は、F1史上に残る悲痛なシーンとしてあまりにも有名だ。

一定の安全性が確保されるのはまだまだ遠い未来のこと。黎明期のF1が、いかに危険と隣り合わせの中で開催されていたのか、ぜひその目で確かめてもらいたい。

DAZNについて

DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信！今すぐ下の記事をチェックしよう。

● 【番組表】直近の注目コンテンツは？
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは？