アルボンの欠場により、突如デ・フリースにF1デビューのチャンスが到来
2022年のイタリアGPはフェラーリ75周年ではなく「ニック・デ・フリースのデビューレース」としてのみ、後年記憶されることになるかもしれません。
予想通りとはいえフェラーリはレッドブルの強さにまったく太刀打ちできず、さらに最後はセーフティカー先導でチェッカーという、なんとも締まらない幕切れでした。これではティフォシでなくても、もやもやした気持ちになってしまいます。そんなレース展開だったからなおのこと、デ・フリースの存在は光って見えました。
アレクサンダー・アルボンが虫垂炎で入院し、二日目フリー走行(FP3)からデ・フリースは代役として急遽出走することに。予選ではQ1落ちしたチームメイトのニコラス・ラティフィを尻目に、15番手でQ2に進出。ステアリング上のスイッチ操作ミスでQ3には行けなかったものの、それでも13番手の速さを見せました。
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上位勢のグリッド降格で8番手からスタートした決勝レースは、大部分はDRSトレインの中に埋もれた展開でしたが、ミスなくタイヤをしっかり持たせ、終盤にはピエール・ガスリーに激しく迫るなど、メリハリの効いた走りに終始しました。デビュー戦9位入賞、さらに「ドライバー・オブ・ザ・デイ」にも選出。降って湧いたチャンスを、完璧に掴み取った週末でした。
元々デ・フリースはウィリアムズの来季シート候補の一人に挙げられていましたが、今回の健闘で評価は爆上がり状態。その速さに注目したアルピーヌが、ウィリアムズから奪い取るのではと、欧州メディアは報じています。
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現在27歳のデ・フリースは、15歳から約10年間にわたってマクラーレンの育成ドライバーでした。GP3、F2参戦時代のデ・フリースで僕が特に印象に残っているのが、しょっ中マクラーレンのモーターホームにやって来て、今井弘主席エンジニアに話しかけていた姿です。
イタリアGP後、リモートで話を聴いた今井さんは「まずは、よかったです」と、嬉しそうでしたが、同時に「マクラーレン時代から光るところがあったし(今回の結果は)特に驚きではないです」とも言っていました。
「とにかく真剣で、疑問に感じたことは納得いくまでとことん質問してくる。10代の頃から、ずっとそんなドライバーでしたね。そこは私が今まで仕事してきたルイス(ハミルトン)やジェンソン(バトン)とも、共通する部分です」
「フリー走行を60分だけ走るのと、予選、決勝を戦うのとは、車の走らせ方も仕事内容もまったく違います。チームごとに、ステアリング操作もエンジニアと交わす技術用語も微妙に違います。ほとんどぶっつけ本番でしたが、その辺りもしっかり対応していた。さすがです」
と、かつての愛弟子を賞賛する一方で、もし来季のF1シートを得られたとしても「競争はかなり熾烈だ」と、指摘していました。
「今のF1は、本当にドライバーのレベルが高いですから。ニックと同世代のドライバーだけでも、下位カテゴリーで一緒に戦っていた(ジョージ)ラッセルや(ランド)ノリス、(シャルル)ルクレールたちがいる。そこに飛び込んで結果を出すのは、かなり大変ですよ」
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2019年にF2タイトルを獲得しながらすぐにF1に上がれなかったのは、そんな層の厚さも一因でした。そもそも構造的な問題として、GP2時代を含め、F1への登竜門であるはずのF2のチャンピオンが、翌年F1シートを得られる例の方が少ない。
この6年間だけ見ても(ピエール)ガスリー、デ・フリース、(オスカー)ピアストリがすぐにF1へ行けず。ラッセルもウィリアムズに自分から直訴してなければ、シート獲得は難しかったでしょう。今季の新チャンピオン、フェリペ・ドルゴビッチもアストンマーティンの育成プログラムメンバーとなりましたが、すでに来季レギュラードライバーの枠は(フェルナンド)アロンソ&(ランス)ストロールが確実。今のところドルゴヴィッチの来季F1デビューは難しそうです。
デ・フリースもフォーミュラEに転向し、それでも腐らずにしっかりタイトルを獲り、その実績がメルセデスに評価されて、今回のレースデビューにつながりました。
思えばミハエル・シューマッハもセバスチャン・ベッテルも、そして小林可夢偉も、レースドライバーの代役として掴んだチャンスで結果を出し、飛躍していきました。デ・フリースもきっと彼らに続く存在になってくれると、期待するばかりです。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第17戦:シンガポールGP※日本時間
9月30日(金)19:00~フリー走行1回目
9月30日(金)22:00~フリー走行2回目
10月1日(土)19:00~フリー走行3回目
10月1日(土)22:00~予選
10月2日(日)21:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |