荒れた2時間レースのシンガポールGPでペレスが今季2勝目
3年ぶりに開催されたシンガポールGPの勝者セルジオ・ペレスは、レース後のヒーローインタビューで開口一番「僕のベストレースだった」とコメントしました。
ルイス・ハミルトンやマックス・フェルスタッペンでさえクラッシュやオーバーランを喫した、ウェット路面から徐々に乾いていく非常に難しいコンディション。さらに6台が次々にリタイアし、二度のSC(セーフティカー)、三度のVSC(バーチャルセーフティカー)が導入される荒れに荒れたレースを、ペレスはノーミスの走りで制したのでした。
今回が230戦目のF1という大ベテランのペレスですが、これまで4回しか勝っていません。しかしそのいずれもが、大波乱の末に掴み取った勝利でした。
Getty Images
初勝利は2020年の第16戦サクヒールGP。このレースもシャルル・ルクレールやフェルスタッペンの多重クラッシュなどでSCやVSCが何度も出る中、ペレスも接触事故で一時は最後尾に転落。その後は果敢な追い抜きを見せ、王者メルセデスの自滅にも助けられ、F1史上最も遅い190戦目の初優勝を果たしました。
2勝目はレッドブル移籍1年目となる、2021年のアゼルバイジャンGPでした。首位を独走していたフェルスタッペンがタイヤバーストで消え、残り2周での再スタートではハミルトンがターン1でオーバーラン。油圧系のトラブルを抱え、リタイアも考えたペレスが逃げ切るという展開でした。
そして3勝目となった今季のモナコGPも、今回のシンガポールGPと同様ハーフウェットのコンディション、そして同じくフェラーリとの一騎打ちという展開でした。ただしこのモナコでは、1回目のピットインでアンダーカットに成功して2位に、そして2回目のピットインで今度はオーバーカットを成功させて首位を奪うという、レッドブルのピット戦略が光ったレースでした(ちなみに作戦の陣頭指揮を取ったのが、DAZNのSaturday F1 LABでも紹介したチーフストラテジストのハンナ・シュミッツでした)。
Getty Images
一方、今回のシンガポールでの4勝目は、ペレスが自らの腕で勝ち取った勝利と言ってもいいでしょう。スタートでポールシッターのルクレールに先行してからは、周回ごとに変化する路面状況を読み解き、最速ラップを更新しながら迫ってくるルクレールとの差を冷静にコントロールし続けました。
路面が乾いていく状況では、浅溝のレインタイヤのインターメディエイトは、どんどん摩耗していきます。それをしっかり持たせ、せっかく築いた差がなくなった2回のSC時も、再スタートで隙を見せることはありませんでした。
唯一のミスはSC中に10車身以上の間隔を開けてしまったことですが、レース後のペレスは「故意ではなく、濡れた路面をスリックタイヤでSCのペースについていくことは不可能だった」と主張しています。
それでも5秒ペナルティが科されることに備え、終盤52周目からの7周は「毎ラップ、予選アタックのようにプッシュした」と語っています。実際、1分48秒台のとんでもないタイムを7つ綺麗に並べ、終盤にはその時点の最速ラップも叩き出しました(※ファステストラップは14位フィニッシュのジョージ・ラッセルがマーク)。
フェラーリのタイヤはデグラデーションが大きかったという点にも助けられたとはいえ、47周目に0.430秒まで迫っていたルクレールは、あっという間に7.595秒まで引き離された。まさにペレスの、完璧な勝利でした。
思えばこれまでの3勝も、チームメイトを含むライバルたちがミスやトラブル、クラッシュで消えていく中、冷静沈着な走りで勝ち取ったものでした。今季はフェルスタッペンが独走体制で勝ち続ける中、ペレスはともすればチームメイトの影に隠れ、5月のモナコ以来未勝利であることも批判されてきました。
しかし実はモナコ以降ずっと、ルクレールの背後にピタッとつく形で選手権3位をキープし続けています(ベルギーでは一時単独2位に浮上)。シンガポールを終えて、2位ルクレールとはわずか2ポイント差。レッドブルとフェルスタッペンにとって、ペレスはまさに理想のセカンドドライバーと言えます。
ただしペレス自身は、その地位に甘んじるつもりは毛頭ないでしょう。今週末の日本GPでフェルスタッペンがタイトルを確定する瞬間を、多くのファンが期待していると思います。
しかし今のペレスには、勢いがあります。フェルスタッペンの鈴鹿での戴冠を阻止するのはルクレールではなく、ペレスかもしれません。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
************
【レース情報】
F1 第18戦:日本GP
10月7日(金)12:00~フリー走行1回目
10月7日(金)15:00~フリー走行2回目
10月8日(土)12:00~フリー走行3回目
10月8日(土)15:00~予選
10月9日(日)12:00~F1パレード
10月9日(日)14:00~決勝
************
関連記事
直近のDAZN番組表(F1)DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。
● 【番組表】直近の注目コンテンツは?
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは?
チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月18日(金) ~19日(土) | 3月20日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月25日(金) ~26日(土) | 3月27日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 4月8日(金) ~4月9日(土) | 4月10日(日) |
第4戦 | エミリア・ロマーニャGP | 4月22日(金) ~ 23日(土) | 4月24日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月6日(木) ~7日(土) | 5月8日(日) |
第6戦 | スペインGP | 5月20日(金) ~21日(土) | 5月22日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月27日(金) ~ 28日(土) | 5月29日(日) |
第8戦 | アゼルバイジャンGP | 6月10日(金) ~11日(土) | 6月12日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月17日(金) ~ 18日(土) | 6月19日(日) |
第10戦 | イギリスGP | 7月1日(金) ~ 2日(土) | 7月3日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 7月8日(金) ~9日(土) | 7月10日(日) |
第12戦 | フランスGP | 7月22日(金) ~23日(土) | 7月24日(日) |
第13戦 | ハンガリーGP | 7月29日(金) ~ 30日(土) | 7月31日(日) |
第14戦 | ベルギーGP | 8月26日(金) ~ 27日(土) | 8月28日(日) |
第15戦 | オランダGP | 9月2日(金) ~3日(土) | 9月4日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月9日(金) ~ 10日(土) | 9月11日(日) |
第17戦 | シンガポールGP | 9月30日(金) ~10月 1日(土) | 10月2日(日) |
第18戦 | 日本GP | 10月7日(金) ~ 8日(土) | 10月9日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月21日(金) ~ 22日(土) | 10月23日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月28日(金) ~ 29日(土) | 10月30日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月11日(金) ~ 12日(土) | 11月13日(日) |
第22戦 | アブダビGP | 11月18日(金) ~ 19日(土) | 11月20日(日) |