今季のF1が、いよいよ始まります。全10チームの新車が勢ぞろいした先週の直前テストでは、トラブルによる赤旗中断は例年よりはるかに少なく(ほぼ1日1回だけ)、10台がみっちり走り込みました。
そんな開幕前テストで最も強く印象に残ったのが「レッドブルとアストンマーティンの強さ」でした。
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まずレッドブルですが、初日から終始安定した速さを見せていました。1年前もテストではレッドブルが最速だったにもかかわらず翌週の開幕戦ではフェラーリのチャールズ・ルクレールが、ポール・トゥ・ウィン。レッドブルの2台は燃料系トラブルに見舞われて全滅でした。今季もそんな展開にならないとは断言できません。
とはいえ今年のレッドブルはフェラーリに対して、一発の速さもロングランも頭二つ分くらい抜けている印象です。加えて信頼性の不安もない。テストの勢いそのままに、開幕戦もレッドブルが速さを見せそうです。
マックス・フェルスタッペンはテスト中、終始上機嫌でした。「バランスの良さをすぐに感じられたし、乗るたびに速くなっていった」と新車の感触に手応えを感じ、早々にセッティング作業に移行。最多周回をこなした上に、最速タイムも叩き出しました。
今季のタイヤに加えられた改良も、フェルスタッペンにとってはプラスに働いているようです。ピレリはフロントの食いつきを良くする方向に、タイヤ構造を変更しました。つまりフェルスタッペンの大好きな、リアが軽快に動いてくれる挙動になっているわけです。
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ところが去年前半のフェルスタッペンはアンダーステア気味のマシンに手こずり、逆にこの傾向が好みのセルジオ・ペレスは、モナコGP初優勝などチームメイトを凌ぐ速さを見せていました。その意味で言えば今季のRB19は最初から、フェルスタッペン好みのマシンに仕上がっているようです。とはいえペレスもテスト最終日には3日間総合トップタイムを出し、レースシミュレーションでもタイヤ劣化を極力抑えたロングランができていました。
二人の速さにフェラーリは対抗できず、メルセデスはさらに引き離されている。その状況が開幕後も続くようだと、レッドブルの二人がタイトル争いを繰り広げる展開もありえそうです。
かつてのレッドブルはセバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバー、ダニエル・リカルドとフェルスタッペンが闘志むき出しで戦い、時に同士討ちをやらかしたこともありました。
その際のクリスチャン・ホーナー代表ら上層部は、必ずしもドライバーたちをうまくコントロールできていませんでした。もしフェルスタッペンとペレスのチームメイトバトルが勃発した時、はたしてしっかり対処できるのか。そこがひょっとしたら、無敵に見えるレッドブルの死角かもしれません。
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もう一つの注目チームが、アストンマーティンです。去年このチームは、選手権7位と低迷しました。タイヤ戦略の要を担う松崎淳エンジニアに話を聞いた際には「ポーパシングを想定できず、対策に手こずった」「そこに大きな組織変更が加わった」という2点の理由を挙げていました。
一昨年から去年にかけてのアストンマーティンは、チーム代表やテクニカル・ディレクターの交代、ベッテルの突然の引退表明、そしてファクトリーの引越し準備と大きな変化が立て続けに起きました。そこへ想定外の激しい縦揺れ症状に見舞われたわけですが、シーズン前半のスペインGPでまるでレッドブルのような空力デザインを採用。「グリーンブル」という揶揄にもめげず、着実に戦闘力を上げていきました。
今季のAMR23は「去年型とは95%違う」と、新テクニカル・ディレクターのダン・ファロウズは言ってますが、外観を見る限り去年同様レッドブルの影響を強く受けたデザインです。そして今回のテストでは、中団グループのライバルたちだけでなく、メルセデスをも脅かす速さを見せました。
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ランス・ストロールが自転車事故によるケガでプレシーズンテストの全セッションを欠場しましたが、フェルナンド・アロンソはチームにすっかり溶け込み、まるで去年もこのチームにいたかのように伸び伸びと走っています。
一方で去年中団トップの選手権4位につけた古巣アルピーヌは、テストの3日間で今ひとつピリッとした速さを発揮していません。アストンマーティンへの移籍は必ずしも自ら望んでのものではなかったわけですが、結果的に大当たりとなるのか。それに対する答えも、まもなく出るはずです。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第1戦:バーレーンGP
3月3日(金)20:30~フリー走行1回目
3月4日(土)0:00~フリー走行2回目
3月4日(土)20:30~フリー走行3回目
3月5日(日)0:00~予選
3月6日(月)0:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |