新天地の初戦で大躍進を見せたアロンソ
今季開幕戦バーレーンGPは、レッドブルが盤石の強さを見せた一方で、フェラーリ、メルセデスは戦闘力や信頼性に不安を抱かせる結果に終わりました。
そんな中、直前のテストから速さを見せていたアストンマーティンは、フェルナンド・アロンソがいきなりの3位表彰台。2月に自転車事故で手首骨折の重傷を負ったランス・ストロールも、6位入賞を果たしました。
2台の安定した速さ、特にロングランペースの素晴らしさを見る限り、アストンマーティンの強さは本物に思えます。
レース後のアロンソは「まさかいきなり表彰台に上がれるとは」「今年中にトップ3に近づければいいと思っていた」と語っていましたが、謙遜と取るべきでしょう。
もしスタート直後のターン4でストロールに追突されず、メルセデス2台にかわされていなければ、たとえチャールズ・ルクレールがトラブルに遭遇しなかったとしても、コース上で抜き去っていたことでしょう。対セルジオ・ペレスでもロングランペースで優っており、まさに実力で勝ち取った表彰台でした。
2人の元王者による数奇な巡り合わせ
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それにしてもこの表彰台、本来ならアロンソではなくセバスチャン・ベッテルのものだったかもしれません。今回のレースは、そんな「ドライバーの巡り合わせ」にも思いを馳せるものでした。
そもそも去年の夏、ベッテルが突然の引退表明をしていなければ、アロンソがアルピーヌから移籍してくることはなかったわけです。ベッテルの引退は主に「家族との時間を大切にしたい」という理由からでした。しかし勝てないレースを戦い続けることへの疲れも、根底にあったと思います。
アストンマーティンがここ数年、戦闘力を上げつつあったのは事実です。しかし2022年はグランドエフェクトカーへの対応に失敗し、選手権7位と低迷しました。
もしあの躓きがなく、チームがもう1年早く覚醒して上位入賞を重ねていれば、ベッテルが唐突にF1から去ることもなかったような気がします。とはいえベッテルの潔い性格からすれば、自分の跡を継いだアロンソがいきなり表彰台に上がったことにも、悔しいとか引退を早まったとか、そんな思いは抱いていないことでしょう。
今季でF1キャリア20年目突入…これまで険しい道のりだったアロンソ
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一方、アロンソのF1キャリアも、数奇な巡り合わせに翻ろうされてきたものでした。2001年のデビュー以来19シーズンを戦いながら、タイトル獲得は2回(2005年、2006年)のみ。確かに裏で政治的に動きすぎる性格が災いしたり、チーム選択を誤る失敗を繰り返したりもしました。
ですが41歳の今も「現役最高のドライバーの1人」という高い評価を得ているにしては、あまりに成績が釣り合っていない印象です。1ポイント差でキミ・ライコネンにタイトルを攫われたマクラーレンでの2007年、最終戦までタイトルを争ったフェラーリ時代の2010、2012年は、いずれもあとほんの少しアロンソに追い風が吹いていれば、チャンピオンになれていたはずです。
その後のアロンソは大逆転を賭けてマクラーレン・ホンダに移籍(2015年~2018年)するわけですが、ご存知のように最悪の結果に終わります。この時点で、アロンソはすでに30代後半。並のドライバーなら、引退を考えるところでしょう。ところが2年間のブランクを経て、アロンソは2021年より39歳でF1に戻ってきました。
アロンソは最後の大勝負で笑うことになるのか
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復帰先のアルピーヌは、ワークスチームとはいえ3強に対抗できるほどの強さはなく、2年間の在籍中3位表彰台に一度上がったきり。なのにアロンソは、F1マシンを走らせるのが楽しくてしょうがないように見えました。
もはや勝つこと、タイトルを取ることは諦めて、純粋にレースを楽しんでいるだけなのかも。当時のアロンソを見て、そんな風に少しでも思ってしまった自分の不明を、今となっては恥じるばかりです。
今思えばアロンソは2年前の復帰以来、頂点に返り咲くチャンスを虎視眈々と狙っていたのでしょう。だからこそベッテルの引退表明を受けて、即座にアストンマーティンとの接触を開始したのだと思います。
巡り合わせに翻ろうされてきた男が、最後の賭けに出た。そしてその賭けに、アロンソは勝ちつつあるのかもしれません。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第2戦:サウジアラビアGP※日本時間
3月17日(金)22:30~フリー走行1回目
3月18日(土)2:00~フリー走行2回目
3月18日(土)22:30~フリー走行3回目
3月19日(日)2:00~予選
3月20日(月)2:00~決勝
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |