ホンダで長らく活動したエンジニア、浅木泰昭氏がこれまでのF1活動について語っている。
元ホンダ・レーシングのF1エンジン開発責任者である浅木氏は『DAZN』の『WEDNESDAY F1 TIME #10』にゲストとして出演。レーシングドライバーの中野信治氏、番組MCのサッシャ氏がインタビュアーを行った。
1982年よりホンダF1第2期(1983年~1992年)の活動に携わり、その後オデッセイやN-BOXなど、同社を代表する市販車の開発にも尽力した浅木氏。しばらくF1の世界から距離を置いていたとのことだが、2017年に開発責任者としてF1の現場へ復帰することになった。
メルセデスが当時は圧倒的な強さを発揮しており、2014年以降はタイトルを独占している状況。ホンダは2015年より第4期をスタートさせるも、V6ターボハイブリッドの技術開発に後れを取っていた。
DAZN
その当時の勢力図について、浅木氏は「なんでこんなにメルセデスとのパワーギャップがあるのか。私の感覚でいうとあり得ない」と、ライバルが圧倒的だったと振り返っている。
「燃料流量が記載されているじゃないですか。パワー差っていうのは熱効率の差なんですよ。普通量産をやっていると、熱効率を1~2%上げるだけでも大変。逆に下げるのも大変」
「そんなに(メーカーごとで)変わるものじゃないんですけど。そこで10%ぐらい負けているんじゃないかと。何やったらこんなに負けるんだ、と思っていた」
「レースで勝つということは、変な技術者を作るというか自信がつく。第2期をやってフェラーリにもBMWにも勝って世界一になったのに、何をやるにしても相手が人間なら戦えると思っているんです」
「第2期に勝って、そういう人間を作ったのがF1。それを(後輩の技術者に)もう一度味わわせてあげたい」
Getty Images
ホンダ第4期の活動はマクラーレンへのPU供給が不発に終わり、2017年限りでマクラーレンとの決別が確定。2018年からはトロロッソへの単独供給となった。その転機についてこう回顧している。
「マクラーレンがね、もうホンダとはやりたくないと言われて。このままだと我々はF1を続けられなくなるじゃないですか。そういうときに(フランツ)トストさんがレッドブル内で“ホンダのほうが良いよ”と一生懸命言ってくれたんだと思うんです」
「(日本で活動経験のあるトスト氏は)ホンダのこともご存知なんでね。ホンダの実力はこんなもんじゃないと言ってくれたんだと思う」
「レッドブルも(当時パワーユニット供給元のワークスである)ルノーとやるんで苦しんでいて。ホンマかいなと思ったんですけど、ちょっと(2018年)トロロッソでやって試してみるか、って思ったんじゃないですか」
Getty Images
2018年、トロロッソとのパートナー締結は「私としても完全にお試し期間だと思っていました」と浅木氏は語る。
だが同年の6月には、2019年よりトロロッソだけでなく、レッドブルにもパワーユニットを供給することが発表された。レッドブルとしては長年コンビを組んだルノーと袂を分かち、ホンダとのタッグを選択する形に。その時、浅木氏はレッドブルに信頼してもらうため、並々ならぬ気概を示していたという。
「このぐらい馬力アップしますよ、って言ってもそれが今まで(他のメーカーで)守られた記憶がないとか言うわけですよ。ホンダは言ったことを確実にやるんだと。そのようなことを見せれば、どっちがマシかというような選択だったと思う」
「でも、レッドブルと組まないと表彰台の真ん中は難しいと思っていましたから。そこをなんとかして、ホンダの可能性を見せるつもりでいた」
「なんとかするぞ、と思って無理してパワー出すぞとみんなの前で言ったんですよ。2戦持てば良いと思っていた。すると3戦目にはもう(来季レッドブルと)契約するかどうか決まっていた」
Getty Images
2019年のオーストリアGPでレッドブル・ホンダとなってからの初優勝を飾った。ホンダ4期として待望の初Vについて「1勝もせずに辞めることだけは回避できた」と振り返っている。
「その前の年に彼ら(レッドブル)はルノーのエンジンで何勝かしていましたし、モナコでも勝っていた。メルセデスとホンダとのパワー差だったら、(2019年は)もっと勝てると思っていた」
「前半戦、やっぱりメルセデスが車体良くなって、勝てるはずのサーキットでもずっと勝てなかったもんですから。ここ(第9戦オーストリアGP)を逃すと、とみんな思っていた」
DAZN
「ピット作業で(メルセデスを)抜くのではなく、コースで抜いたというのは初めてだったんじゃないですかね。勝てるようになった、ここまで来たんだと思った。この闇がずっと続くんじゃないかと思っていましたから。本当に嬉しかった」
「1勝もせずに辞めることだけは回避できた。(表彰台に上がった)田辺(豊治)も本当に嬉しかったでしょうね。ウチで長いですから。さくら研究所でも泣いている者がいましたし。苦しかったんだなと思った」
Getty Images
2020年イタリアGPでは、当時事実上の1強だったメルセデス勢が優勝争いから姿を消し、赤旗再スタート後に上位だったピエール・ガスリーがトップに立った。カルロス・サインツの猛追を振り切り、ガスリーはトップチェッカーを受けた。これはアルファタウリとしての初優勝でもあり、前身のトロロッソを含めると12年ぶりのF1優勝となった。
「(フランツ)トストさんがね、助けてくれなかったら(ホンダは)F1を継続できなかったわけです」
「ガスリー選手が最初の年(2018年)に“スペック2が良い良い”と言ってくれなかったら、レッドブルも(ホンダを)選んでくれなかった可能性もあるわけですから」
DAZN
「正直(ホンダパワーユニットとして)いろんな勝利がありますけど、私的にはこの勝利が印象的です。もらうばかりでしたけど、恩返しできたんじゃないかと思う」
ガスリー&アルファタウリにとってF1初勝利となった2020年のイタリアGP。モンツァでの頂点は、浅木氏にとっても格別の勝利だったようだ。
関連記事
直近のDAZN番組表(F1)DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。
● 【番組表】直近の注目コンテンツは?
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは?
チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |