ラスベガスGPの最終周、超絶オーバーテイクを決めたルクレール
波乱のラスベガスGPを制したのは、またもマックス・フェルスタッペンでした。一方で今回はチャールズ・ルクレールも、久々に魅せてくれました。
現地時間土曜深夜の決勝レース。スタート直後に2番手に後退したルクレールでしたが、1ストップ作戦で首位を奪い返します。しかし37周目にフェルスタッペンに再び抜かれ、さらに終盤43周目にはセルジオ・ペレスにもかわされ、3番手まで順位を下げてしまいます。
レッドブル勢より5周以上古いタイヤということもあり、もはや勝負あったという感じでした。しかしルクレールは最終ラップの50周目、ターン14のハードブレーキングでペレスのインを差し、2位奪還に成功します。
1.9kmものロングストレートを時速340km超で走行し、フロントタイヤは冷え切っていたはず。それでもルクレールは完璧な制動でブレーキロックさせることなく、ペレスの一瞬の油断を突いて抜き去っていきました。レッドブルに好き勝手はさせないという意地と強い決意が窺えた、ルクレールのキャリアベストの一つと言っていいオーバーテイクでした。
フェルスタッペンとは幼少期から長年の好敵手
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同じ1997年生まれのルクレールとフェルスタッペンが、幼少期のカート時代からずっとライバル関係だったのは有名な話です。
ただしF1デビューはフェルスタッペンの方が3年早く、ルクレールがまだGP3ドライバーだった2016年に、フェルスタッペンは18歳227日の最年少記録でF1初優勝。着々と、トップドライバーの階段を駆け上がっていきました。
ルクレールは2018年、ザウバーから待望のF1デビューを果たします。翌2019年にはフェラーリに抜てきされるといきなり2勝を挙げ、エースドライバーだったセバスチャン・ベッテルを凌ぐポイント(ルクレール264点/ベッテル240点)を獲得する活躍を見せました。
ドライバーズ選手権3位のフェルスタッペン(278点)に対しても、僅差の4位。F1デビュー3年の出遅れを一気に挽回し、二人の新たなライバル関係が始まったかに思われました。
しかしその後のルクレールは、マシンの戦闘力不足やトラブル、戦略ミスなどに足を引っ張られ、足踏み状態が続きます。ルクレール自身のミスで、ポールポジションからのスタートを結果に繋げられないレースもいくつもありました。
2022年は好スタートも、徐々に勢いを失って鈴鹿で決着
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それでもグランドエフェクトカー元年の昨年2022年は、フェラーリのF1-75が高い戦闘力を発揮したこともあって、特にシーズン序盤はフェルスタッペンと激しいバトルを繰り広げ、第5戦マイアミまでは選手権をリードするほどでした。
しかし以降はフェルスタッペンの独走を許し、2位でシーズンを終了(ルクレール308点/フェルスタッペン454点)。そして今季はさらに強さを増したレッドブルとフェルスタッペンの前になすすべもなく、去年7月のオーストリアGP以来、1年半近く未勝利の状態が続いています。
ルクレールが世界チャンピオンにふさわしい才能の持ち主という評価は、間違いないでしょう。
しかし現状はフェルスタッペンに大きく水をあけられ(フェルスタッペンの184戦53勝に対し、ルクレールは124戦5勝)、背後からはジョージ・ラッセルやランド・ノリス、オスカー・ピアストリといった同世代、あるいはさらに若いライバルが迫っている状況です。
このまま“無冠の帝王”となるのか、その岐路は2024年次第!?
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他のスポーツ同様、F1の世界にも“無冠の帝王”と呼ばれる人たちがいます。世界チャンピオンになれる才能を十分に持ちながら、ついに果たせなかったドライバーたち。
1950年代のスターリング・モスがその代表ですが、1980年代のジル・ヴィルヌーブ、最近ではジャン・アレジも含めていいかもしれません。
モスはフアン・マヌエル・ファンジオという強すぎるチャンピオンがいたこと、そして母国イギリスのプライベートチームにこだわりすぎたことが主な理由とされています(一度だけ生前の本人に話を聞いた際には「単に私の実力だよ」と言っていました)。
そしてジルは早すぎる死、アレジは当時どん底状態だったフェラーリにこだわらず、ウィリアムズの誘いに乗っていれば、少なくとも生涯1勝では終わっていなかったでしょう。
と、昔話に耽ってしまいましたが、本人の才能だけでは頂点を極められないのは冷徹な事実です。今や無敵のフェルスタッペンも、メルセデスが衰退し、レッドブル・ホンダが最強のパッケージを作り上げたタイミングにうまく乗れたからでした。一方ルクレールの所属する今のフェラーリは、ジャン・トッド、ロス・ブラウン時代のフェラーリではありません。
とはいえ2021年までのフェルスタッペンも大いにもがき、ミスも犯していました。チャンピオンになってから、明らかに変ぼうを遂げています。ルクレールが“無冠の帝王”の称号を返上できるかどうかは、レッドブルとライバルたちの戦闘力がより接近するはずの2024年に、より見えてくることでしょう。
文・柴田久仁夫(しばた・くにお)
1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点とし、TV番組制作の現場で手腕を振るう。1987年よりF1の世界にも足を踏み入れ、それ以来数々のレースを取材してきた。訪れたサーキットでは素足でトラックの感触を確かめるというライフワークも行っている。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』のモータースポーツ中継でも解説を務める。
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【レース情報】
F1 第23戦:アブダビGP※日本時間
11月24日(金)18:30~フリー走行1回目
11月24日(金)22:00~フリー走行2回目
11月25日(土)19:30~フリー走行3回目
11月25日(土)23:00~予選
11月26日(日)22:00~決勝
F2 第13ラウンド:ヤス・マリーナ
11月24日(金)16:05~フリー走行
11月24日(金)20:00~予選
11月25日(土)21:20~レース1
11月26日(日)18:15~レース2
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
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第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |