角田裕毅にとって2025年は、新規定となる2026年以降に向け、まさに正念場のシーズンとなる。
2024年12月19日、レッドブルF1チームは2025年のレギュラードライバーに、リアム・ローソンを起用すると正式発表した。
レーシングブルズに籍を置いていた角田とローソンの2択だったが、ニュージーランド人ドライバーがトップチームに選ばれたのは周知のとおりだ。
この流れについて“角田はホンダのドライバーだから”という見方が強い。2025年限りでレッドブル・パワートレインズとホンダの協力関係がピリオドとなり、新規定となる2026年より、レッドブルPTはフォードとのタッグでリスタートすることが確定している。水面下ではそれに向けた準備が着々と進んでいる。
一方でホンダはアストンマーティンに2026年からPUを単独供給することとなっている。規定が変わることもあり、2026年の勢力図はまだ不確定要素が強い。
一般的に言う“ガラガラポン”の状況となり、伏兵だった中団勢が急激にトップチームに成り上がる可能性を秘めている。その逆として現レギュレーションの有力チームが、2026年から大苦戦するパターンも十分に考えられるだろう。
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今回、新規定を前にした各チームの戦略事情が、角田を含む2025年のドライバー人事に少なからず影響を及ぼしたことは確かだ。
欧州の一部F1専門メディアの中には“アストンマーティン・ホンダにツノダは行くことになるだろう”と今後の動向を予測する論調もある。だが実際のところフェルナンド・アロンソ&ランス・ストロール体制は複数年契約で今後の継続が確定的となっており2026年シートの空きについては現時点で期待することが難しい状況となっている。
また、ホンダと角田のつながりが深い前提ではあるが、そもそもF1昇格時点で角田はレッドブルジュニアの一員として結果を示してF1昇格の切符を勝ち取ったのであって、当時ホンダのムーブとは方向性が異なり、必ずしも一蓮托生ではなかったはずだ。
角田は2016年に鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)の門を叩いており、その後ホンダと二人三脚の状況で下部カテゴリーを戦ってきた。2018年にはトロロッソ(アルファタウリ~現レーシングブルズ)とホンダのタッグが始まった縁もあり、ハンガロリンクで実施されたF3合同テストで存在感を示したことから、角田はレッドブルジュニアに加わることになった。
2019年はF3で、2020年はF2で角田は戦う。そして結果的にはF3、F2ともに1年でステップアップを果たし2021年にアルファタウリからF1デビューとなった。だが角田のF1昇格は2020年のF2最終ラウンドが終わるまで不明瞭だった。
その一方でホンダは2020年10月2日、2021年限りでF1活動を終了すると正式にアナウンスしている。この時の角田はF1昇格を目指してF2で戦っている最中。同年のF2最終戦となるラウンド12バーレーン(2020年12月5日~6日)がスタートする時点で、F2で総合5位だった。
進退の懸かった大一番、F2最終戦の予選でポールポジションを獲得した角田は4ポイントを加え、ドライバーズポイントを157から161に伸ばし、ロバート・シュワルツマンを抜いてランキング4位に浮上した。
レース1(フィーチャーレース)でポールスタートだった角田はニキータ・マゼピン、シュワルツマンに抜かれ、P3に落としオープニングラップを終えた。だがここからタイヤを持たせながら冷静に周回を重ねると、シュワルツマンを抜き、残り4周でマゼピンもパスしてトップの座を取り返す。老練なレース運びを見せた角田はレース1優勝で25ポイントを加え、総合3位(186点)に浮上する。
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翌日のレース2(スプリントレース)でも冷静に走った角田は2位フィニッシュ。さらにはファステストラップの2ポイントも加算し合計200ポイントでこのシーズンを終えた。ミック・シューマッハ(215点)、カラム・アイロット(201点)に続く総合3位ながら、ダニール・クビアトの後任としてアルファタウリのシートを獲得した。
角田の2021年F1デビューが正式発表されたのは、2020年12月16日のこと。すでにピエール・ガスリーは契約更新が決まっており、クビアトは放出が既定路線だった。F2最終戦できっちり結果を示してスーパーライセンス取得条件をクリアすれば、角田はF1への道がおのずと拓ける状況だった。
つまりホンダのF1活動終了表明(2020年10月)とは関係なく、それから2カ月後角田はレッドブルグループのいちドライバーとして確かな力をF2で示し、F1昇格を地力で勝ち取った(2020年12月)ということになる。
角田は2021年にアルファタウリでF1デビューを果たした。このシーズン第4期ホンダの最終年という位置づけながら、ホンダとしては大きく躍進したシーズンとなった。
当時F1エンジン開発責任者だった浅木泰昭氏は、2022年から導入予定だった新型パワーユニット(RA621H)の投入を前倒しで実現させ、2021年マックス・フェルスタッペンのドライバーズタイトル奪取に大きく貢献したことでも知られる。
ホンダとしてはこのシーズンでF1活動を終える形にはなったが、HRCとしてレッドブル・パワートレインズとの協力関係継続という状況になる。新レギュレーション開始となる2026年に向けて各メーカーが開発に力を入れる一方、2022年から2025年にかけてのF1は、PU開発が事実上凍結となった。
そしてホンダ(HRC)PUの躍進もあり、2021年に続いて2022年、2023年、2024年とフェルスタッペンは4年連続ワールドチャンピオンを達成。レッドブルとしても、コンストラクターズタイトルを2022年、2023年にダブルタイトルで奪取している。
この間、水面下では新規定の2026年に向けて多くのことが動いていた。
まず2023年2月3日、レッドブルは同年のRB19をお披露目するとともに、レッドブル・フォード・パワートレインズの誕生を発表。イベント直前、フォードが2026年からF1に復帰することを公表してどのチームと組むのか注目されていたがレッドブルであることが確定した。新規定後はレッドブル&レーシングブルズ2チームへ、自社製ダブルワークスとなる。
2025年まではレッドブル・パワートレインズとして、すでにF1活動を終了しているホンダと協力を続けていく。一方でレッドブルとフォードは2023年より提携して新レギュレーションに向けて共同開発を行う方針を示していた。
ホンダとしては2025年限りでレッドブルとの協力関係にピリオドを打つことが確定。
一度は2021年限りでF1活動終了となったものの、HRCとしてレッドブルPTとのパートナーシップは継続。そしてホンダ社内でのF1活動賛成派、反対派などが対立する中、機運が変わったこともあり新規定の2026年に向け、F1活動再開へ本腰を入れる状況となった。
そしてそれから3カ月後の2023年5月24日、ホンダは2026年よりアストンマーティンにパワーユニットを供給すると正式発表した。
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浅木氏はHRC在籍時代、ホンダとF1のつながりをなくさないよう、水面下で尽力していたと『DAZN』を通してこう証言している。
「(ホンダとアストンマーティンとの接触は)もちろん知っていましたよ。私の心残りがなく(ホンダ&HRCを2023年4月で)辞めることができて良かったなと」
「アストンマーティンと組めるかどうかというのは、(2022)年末から年明けの話ですけど、私の心残りって言ったのはね、このまま本当に(2026年からのパートナーシップが見つからず、F1から)撤退してしまうことが心残りで」
「どっかしらのチームと組みたいな、ということでね。撤退発表以来、こっそり画策してきた。そういう中では、レッドブルは自分たちでパワーユニットを作ろうとしていますから。選択の中では(ホンダ&アストンマーティンは)ベストのチームと組めたんじゃないかと感じている」
ホンダPUを搭載してレッドブルと最強マシンを作ったこともあり、本来なら2026年以降もパートナーシップを継続させる可能性もあった。だがホンダは一度F1活動終了を発表した立ち位置であり、レッドブルはフォードと手を組む道を選択する。
浅木氏は自社製のPU開発に踏み切ったレッドブル・パワートレインズの本気度について、現地で力の入れ具合に驚いたと振り返った。
「レッドブルがレッドブル・パワートレインズというものを作って、一回(施設を)見に行ったんですけど。もうすごい投資をして。すごくお金をかけて作っちゃっているんで」
「これはレッドブルとは2026年組めないな、と思った。そうなるとね、ホンダがやるとしてもレッドブルの手助けみたいなポジションしかない。そうなると(ホンダが)やりたいこととは違うんですよね」
結果的にアストンマーティンに2026年、ホンダはPU単独供給をスタートさせることになった。事実上のホンダワークスチームとなる。
だが、このムーブは結果として角田の今後に影響を及ぼしたのではないかとの見方もできる。
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2021年にアルファタウリでF1デビューして以来同チームで戦い続け、2025年はレーシングブルズで5年目在籍に突入することが確定したのは周知のとおり。
新シーズンとなる2025年の契約については2024年6月に決定するなど、4年目のシーズンが序盤戦からポイントゲッターとして好調だったこともあり、早々に翌シーズンの残留が確定した。
角田がこれまで契約更新に至った時期を振り返ってみると、2022年の契約は2021年9月7日、2023年の契約は2022年9月22日、2024年の契約は鈴鹿での日本GP開催中である2023年9月23日だった。
これまで9月に決まっていた翌シーズン残留が、4年目の2024年は6月に決するなど例年より相当早かったことがわかる。
ただレッドブルF1チームは角田を昇格の有力候補として正当に評価していたのかとなると、懐疑的な見方になってしまう。
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2022年限りでガスリーはアルピーヌへと去っていった。2023年からアルファタウリで角田はニック・デ・フリース、ダニエル・リカルド、そしてローソンと、3人と僚友になった。もちろんこのチームに籍を置く全員が「レッドブル昇格が目標」と公言している。
デ・フリースと言えば2019年のF2王者。2022年にはイタリアGPでウィリアムズからスポット参戦ながらいきなりデビュー戦初入賞を果たしたこともあり、ヘルムート・マルコ博士が惚れ込んでレギュラードライバーとして採用した。この人事についてクリスチャン・ホーナー代表は乗り気でなかったと伝えられている。
AT04で奮闘したものの、オランダ人ドライバーはポイントを奪うまでに至らず、前半戦終了前に離脱する結果となった。そしてハンガリーGPからはリカルドがアルファタウリのレギュラードライバー昇格となる。
ベテランのリカルドと言えばかつてトロロッソで存在感を示し、一度はレッドブル昇格を勝ち取ったことのある実力者。ホーナー代表はリカルドをペレスの代案として想定し、アルファタウリで再昇格のチャンスを与えた。
だがオーストラリア人ドライバーは、かつての輝きを取り戻すことはできなかった。アルファタウリ~レーシングブルズで結果を示すことができず、リカルドは2024年のシンガポールGP終了後にチームから離脱する。
その代役となったローソンは同年の終盤6戦で戦ったわけだが、結果的にローソンが2025年にレッドブル昇格の切符を勝ち取る結果となった。
2024年、第1戦~第18戦における角田vsリカルド、第19戦~第24戦における角田vsローソンの当該成績は下記のとおり。
角田vsリカルド(18レース)
●決勝当該成績
9-8
●予選当該成績
12-6
●第18戦までの総合成績
11位-15位
●決勝最高順位
7位-8位
●予選最高グリッド
7番グリッド-5番グリッド
●獲得ポイント
22点-12点
●入賞回数
7回-3回
●DNF(リタイア)回数
3回-4回
角田vsローソン(終盤6レース)
●決勝当該成績
4-2
●予選当該成績
6-0
●終盤6戦総合成績
12位-16位
●決勝最高順位
7位-9位
●予選最高グリッド
3番グリッド-5番グリッド
●獲得ポイント
8点-4点
●入賞回数
2回-2回
●DNF(リタイア)回数
1回-0回
リカルドは角田に総合的には及ばなかったが、カナダGPでは予選5番手と上位勢に割って入る一発の速さを示している。
数字上で角田は、対リカルドと対ローソンどちらも数字上でアドバンテージを示した。予選結果や実際に獲得したポイント含め、重要な公式セッションで角田が上回っていたことは確かだった。
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レッドブル昇格となったローソンは2023年に5レース、2024年に6レースを戦い、キャリア11レースでの抜てきとなった。まだフルシーズンを戦ったことがなくレッドブルの歴史においても、2019年に途中昇格となったアレクサンダー・アルボンの12戦を抜きキャリア最少でのレッドブル昇格となる。
レッドブルのホーナー代表は“お気に入り”のローソンを選出した理由についてこう述べている。
「レッドブルは常に若手ドライバーに投資をしてきた。彼らにチャンスを与えてレーシングブルズで成長させることに誇りを持ってきた。リアムはそこでチャンスを得て、限られた時間の中で2025年に向け、レッドブル・レーシングでマックス・フェルスタッペンの隣のシートに耐えられるだけの適切なスキルとマインドセットがあると証明した」
チームが見ている走行データは我々が知り得ない細部まで多岐にわたるため、ローソン選出理由を正確に説明するのはレッドブル内部の当事者以外、事実上不可能と言える。ただこの判断は日本のF1ファンに限らずひいき目無しで順当でなかったと見る向きがあり、主導したホーナー代表を邪推する声も少なくない。
ホーナー氏は「最終的に難しい判断だった。ユウキはとても才能のあるドライバーで、最近は我々のテストで良い仕事をした。しかし最終的に全ての要素を見てリアムが2025年にマックスの隣に座るに望ましい候補者だと感じた。データを見たところ、レースペースはリアムのほうが速い部分もあり、今後の成長力も踏まえて選出した」と説明していた。
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ペレスの代案として見送られた角田を“激昂しやすい”と指摘するメディアもあり、ヘルムート・マルコ博士もその点は改善点だと口にしていた。
2024年の開幕戦バーレーンGP決勝ではチームオーダーが発動した後、フィニッシュチェッカー前に僚友リカルドがポジションを戻さなかったことから、角田がリカルドに怒りを示したシーンがあった。
オーストリアGP予選Q1では、ピットレーンで前に割り込んだチョウ・グァンユに対し、角田が好ましくない言葉を無線で口にしたことから、スチュワードに呼び出された。この一件で角田には4万ユーロ(当時のレートで約690万円)の罰金が科されている。スチュワードは“聴聞会の間、ドライバー(角田)は陳謝し、英語が母国語でなかったことから、そのワードが示す意味をよく知らなかったと説明した”というリポートを出している。
ではローソンのほうがトラック上で冷静沈着かと言うと、そうでもないのは多くのF1ファンが知るところ。アメリカGPではフェルナンド・アロンソと何度も際どい接近戦を繰り広げ、アロンソはレース後にフェアな戦いではないとしてローソンに詰め寄るシーンがあった。
続くメキシコGPのレース中には抜きあぐねたペレスをようやくオーバーテイクするも、先輩ペレスに向かってローソンはコクピット内で中指を立てている。このシーンはオンボードカメラの映像で収められ、国際映像には乗らなかったがかなりの問題行動としてクローズアップされた。
もちろんローソンの行為は褒められるものではない。またペレスにとっては侮辱してきた相手に後々シートを奪われるという、あまりに残酷な結末になってしまった。
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不明瞭な部分が多いところではあるが、F1のパドック内では角田よりもリカルドが、角田よりもローソンが長らく“有力”と見られた風潮があったことは記しておきたい。
『F1』公式プレゼンターを務めるローレンス・バレット氏は2024年1月『F1』公式メディアのコラムで「リカルドがレッドブルに再度ステップアップする場合、角田はもう1シーズン良いシーズンを送れば、ローソンと並ぶ十分な可能性が高い。ただし、もし角田かリカルドのどちらかが2024年苦戦した場合、そのうち一つのシートはローソンに与えられることになるだろう」と記述していた。
つまりF1の識者からしても、リカルドは2023年(後半7戦)角田に対して数字上劣勢だったにもかかわらず、レッドブル昇格の最有力候補と見ていたことになる。
バレット氏はそれから数カ月後の2024年4月「情報筋によると、少なくとも角田はレッドブルのセカンドシート候補者として、最終候補に入っていないという。私は角田が来年もRBのシートを維持するのに十分な努力をしていると理解している」と、角田はレッドブル昇格の可能性が低く、このままRBに乗り続けるシナリオが現実的だと分析していた。
結果的に角田は2024年6月にレーシングブルズと5年目の契約締結を発表する形になったが、レッドブルとしては当初から角田を昇格対象として見ていなかったという見方もできる。
このタイミングで角田にはハースやキックザウバー(アウディ)からの関心も寄せられていたとのこと。さらには2025年限りでPU供給を辞めることになるアルピーヌが、ホンダPUを搭載するのではとのうわさも一時あった。
後にアルピーヌは2026年よりメルセデスPUを積み、ワークスからカスタマーチームになることが確定。もしホンダとのタッグが実現可能だった場合、角田の移籍先として選択肢になり得たと予測できる。
アストンマーティンは2026年からホンダPU単独供給のワークス化を強く望んでいたこともあり、複数チームへのホンダPU供給は実現せず。それでもこれらが実現していた場合、アルピーヌ・ホンダとして角田&ガスリーの“ツノガス”が再度僚友になるというパラレルワールドもあったかもしれない。
剛腕フラビオ・ブリアトーレ氏の2024年6月アルピーヌ現場復帰によって、状況は再度大きく変わってしまった。さらには日産自動車とホンダ、三菱自動車による経営統合の可能性や、戦略的パートナーシップに向けた話し合いが起こっている現状、それが先々F1界にどのような影響を及ぼすのかも、引き続き注視する必要がありそうだ。
Honda Racing(HRC)/X
2024年12月18日にペレスのレッドブル離脱が正式発表された。この直後、HRC公式がSNSを通じて4シーズンともに戦ったペレスに対して、感謝のメッセージを綴っている。
「ぺレス選手は2021年以来、Red BullとHondaとともに、数々の勝利とタイトル獲得へ多大な貢献をしてくれました。感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとう、チェコ」
この投稿にペレス本人も反応し「Arigato!(日本とメキシコの国旗)it was a dream come true to drive for Honda.」と返答している。
だがこのSNS投稿を見た多くのファンは、添付されていた画像に違和感を抱いたことだろう。
RBシリーズのマシン後ろには、左からペレス、フェルスタッペン、HRC渡辺康治社長が写っている。写真はマシンの途中から分断されペレスの左側には誰かがいたはずだが、トリミングでその部分は削られている。
そこにいたはずの人物こそレッドブルのホーナー代表だった。あくまでペレスに労いを示す投稿であり、HRCが写真をトリミングしたことに他意があったかどうかは不明だ。
HRCはレッドブルの人事権がない状況ながら、角田裕毅にチャンスを与えるようパートナーとしてプッシュしていた。2024年のアブダビGP終了後に角田がピレリのタイヤテストでレッドブルRB20を駆ったことについても、ホンダのリクエストに応じての判断だったことが明らかになっている。
ではレッドブルが角田を有力候補として見ていたかというとバレット氏が記したように、最初から旗色は悪かったのが実情のようだ。実際にテストの時点ですでにローソンの選出は既定路線であり、それどころかそれよりも前から人事は確定したという報道も。
ホーナー代表からすれば、今後フォードとタッグを組むことになり、自社製PU開発に向けてもはや後に引けない状況となった。その間にF1活動復活に向けて本腰を入れ、第5期をアストンマーティンとのタッグで再開させるホンダに対して、望ましくない感情を抱いていたとしても不思議ではないだろう。
HRCがペレスに労いの言葉とともに写真をアップした時点で"角田がホーナーに選ばれなかった”ことは把握していたはず。つまり”ホンダとホーナー氏の間には水面下で不和があるのではないか”、”角田の進路についても少なからず影響があったのでは”と推察するF1ファンも多くいる。
角田はF1デビューの決まった2020年12月16日時点で、F1活動終了発表から2カ月が経過したホンダの方針とは異なるムーブだった。だがそれからレッドブルの成功、新レギュレーションに向けた各メーカーの立ち回り含め、F1界の状況は大きく変わった。
2026年の動向がまだ定まっていない角田は、潮流のあおりを食った感が否めない。
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ローソンのレッドブル昇格によって、角田にとって明確な目標が一つ事実上消滅した形になった。
レーシングブルズで5季目突入となる角田について、ホーナー代表は「サポートチームに5年もいるドライバーをこれ以上走らせるわけにはいかない」と口にしており、2025年の出来にかかわらず、同グループからの角田放出を示唆している。
こうなった以上、不確定要素の多い新規定の2026年に向けて角田はできる限りの成果を示すしかない。
今の角田が置かれた状況は、僚友として間近に見ていた時のガスリーに近しいものがある。
かつて2021年、新人の角田は4歳年上のフランス人ドライバー、ガスリーとコンビを組んだ。このシーズンのF1をリアルタイムで見ていた日本のF1ファンは、なかなか僚友ガスリーに近づくことができないもどかしさを感じていたはず。
シーズンの総合成績は角田32-110ガスリーというポイント数で大差になった。予選のチーム間当該成績も角田1-21ガスリーと、最終戦アブダビGPでようやく角田が初めて先行するまでとにかく苦難の道のりだった。それほどAT02を駆るガスリーは予選の一発勝負でミスがなく、かつ抜群の安定感を有していた。
ガスリーは一度2019年にレッドブル昇格となったがシーズン中盤には見限られ、トロロッソ出戻りの憂き目に遭った。それからガスリーはトロロッソ~アルファタウリで「レッドブルの再昇格が目標」と公言しながら奮闘を続ける。2020年のモンツァではF1初優勝。角田が2年間(2021年、2022年)間近に見ていたガスリーは決して腐ることなく、弟分角田の手本となりながらチーム先導の役割をしっかり担った。
フェルスタッペンに及ばなかったレッドブル時代の評価を覆し、この戦いぶりが評価されて2023年にアルピーヌへ移籍。ガスリーは2025年時点で押しも押されもせぬアルピーヌのエースとなっている。
そして2025年、角田の頑張りについては、僚友が一つの指標となるだろう。新シーズンのレーシングブルズでは4歳年下のフランス人ルーキー、イザック・アジャーと組むことが決まった。かつて4歳年上ガスリーが担った役割を角田は2025年、レーシングブルズで務める。
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F1新規定の2026年に向けた体制構築は各グループが進めているところ。2024年中に複数年契約を締結し、早くも新規定後の体制を盤石とするチームも散見される。
HRCの渡辺社長は角田について「2025年限りで(ホンダと)レッドブルとのパートナーシップが切れても、RBやレッドブルで戦ってもホンダとして問題はありません」とホンダとの関わりとは関係なく、地力でシートを得られるドライバーであってほしいと背中を押している。
もちろんホンダとの再会が先々実現するのなら理想的なストーリーとなるが、まずは6シーズン目(2026年)のシートをチーム問わず得ることが、2025年角田にとって最上のプライオリティとなる。
前年にはライバルチームが角田に関心を寄せていたように力を示すことでホンダの支え関係なく、再度目を引くことができるはず。また2026年はフェラーリPU搭載の見通しで不明瞭ながら、キャデラックという11チーム目の新たな選択肢も増えた。
これまでも角田は常に逆境との戦いだったが、5季目は2026年以降の未来を勝ち取るため、文字通り後がない背水の陣で戦うことになる。
ホンダの創業者、故・本田宗一郎氏が残した名語録の一つとして次の言葉が広く知られている。
「困らなきゃだめです。人間というのは困ることだ。絶体絶命のときに出る力が本当の力なんだ」
たとえ困難にぶつかった状況でも最良の結果を示し続けたら、今回のレッドブル人事が妥当ではなかったと改めて強調されることになる。それが角田にとって恩義のあるホンダへ、そして日本のF1ファンに対する最高の恩返しとなるはずだ。
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | オーストラリアGP | 3月14日(金) ~15日(土) | 3月16日(日) |
第2戦 | 中国GP | 3月21日(金) ~22日(土) | 3月23日(日) |
第3戦 | 日本GP | 4月4日(金) ~ 5日(土) | 4月6日(日) |
第4戦 | バーレーンGP | 4月11日(金) ~ 12日(土) | 4月13日(日) |
第5戦 | サウジアラビアGP | 4月18日(金) ~ 19日(土) | 4月20日(日) |
第6戦 | マイアミGP | 5月2日(金) ~ 3日(土) | 5月4日(日) |
第7戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月16日(金) ~ 17日(土) | 5月18日(日) |
第8戦 | モナコGP | 5月23日(金) ~ 24日(土) | 5月25日(日) |
第9戦 | スペインGP | 5月30日(金) ~ 31日(土) | 6月1日(日) |
第10戦 | カナダGP | 6月13日(金) ~ 14日(土) | 6月15日(日) |
第11戦 | オーストリアGP | 6月27日(金) ~ 28日(土) | 6月29日(日) |
第12戦 | イギリスGP | 7月4日(金) ~ 5日(土) | 7月6日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月25日(金) ~ 26日(土) | 7月27日(日) |
第14戦 | ハンガリーGP | 8月1日(金) ~ 2日(土) | 8月3日(日) |
第15戦 | オランダGP | 8月29日(金) ~ 30日(土) | 8月31日(日) |
第16戦 | イタリアGP | 9月5日(金) ~ 6日(土) | 9月7日(日) |
第17戦 | アゼルバイジャンGP | 9月19日(金) ~ 20日(土) | 9月21日(日) |
第18戦 | シンガポールGP | 10月3日(金) ~ 4日(土) | 10月5日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月17日(金) ~ 18日(土) | 10月19日(日) |
第20戦 | メキシコGP | 10月24日(金) ~ 25日(土) | 10月26日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月7日(金) ~ 8日(土) | 11月9日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月20日(木) ~ 21日(金) | 11月22日(土) |
第23戦 | カタールGP | 11月28日(金) ~ 29日(土) | 11月30日(日) |
第24戦 | アブダビGP | 12月5日(金) ~ 6日(土) | 12月7日(日) |