週末にラグビーのある日常が、ついにかえってくる。2021シーズンのラグビートップリーグが、2月20日に開幕するのだ。
2020年シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大により、開幕から1カ月強で中止を余儀なくされた。国内での公式戦は、実に1年ぶりである。今年もコロナ禍で当初の予定より1カ月以上遅れての幕開けとなり、大会フォーマットが以下のように変更された。
全16チームを2カンファレンスに分け、1回戦総当たりのリーグ戦を行ない、カンファレンス内の順位を決定する。その後、2部に相当するトップチャレンジリーグ2021の上位4チームを加えた20チームが、リーグ戦の順位に基づいてトーナメント形式のプレーオフに臨む。リーグ戦は2月20日から4月11日までの、プレーオフトーナメントは同17日から5月23日の期間で開催される。
トップリーグでは以前から世界各国のスターがプレーしてきたが、今シーズンは豪華絢爛だ。19年W杯優勝の南アフリカ、同3位のニュージーランド(NZ)、同ベスト8のオーストラリアなどから、世界的なプレーヤーが続々と来日したのだ。サントリーサンゴリアスの一員となったボーデン・バレットは、サッカーで言えばリオネル・メッシ級の超ビッグネームである。
注目すべきは外国人選手だけではない。19年W杯でベスト8入りした日本代表のメンバーも、リーグ戦の開幕を待ち望んでいる。
五郎丸歩ラストシーズン
カンファレンスごとに力関係を見ていくと、ホワイトカンファレンスはコロナ禍以前の18-19シーズン優勝の神戸製鋼コベルコスティーラーズ、同3位のヤマハ発動機ジュビロ、同6位のパナソニックワイルドナイツの争いになりそうだ。
神戸製鋼は6節で中止された20年シーズンでも、6連勝を飾っていた。19年W杯日本代表の中島イシレリ、ラファエレティモシー、山中亮平らに加え、11年W杯出場のNZ代表アーロン・クルーデン、NZ代表で15年と19年W杯出場のベン・スミスとブロディ・レタリックらが揃う陣容は、「グラウンドのどのエリアからもトライを取りにいくアタッキングラグビー」を実現させる。ちなみに、中島はダウンタウンの松本人志さん似の愛嬌溢れる選手だ。
3位のヤマハはモチベーションが高い。トップリーグではまだ優勝がなく、15年W杯日本代表の五郎丸歩が今シーズンを最後に引退するからだ。19年W杯日本代表ヘル・ウヴェ、19年W杯で優勝した南アフリカのクワッガ・スミスらを中心に、伝統のスクラムを強みにスピーディーかつフィジカルなラグビーを展開する。
6位のパナソニックは、13-14シーズンから3連覇を飾ったリーグを代表する強豪である。19年W杯日本代表の坂手淳史が主将を務め、11年からW杯3大会連続出場の堀江翔太、同2回出場の“笑わない男”稲垣啓太らの実力者が並ぶ。医学の道を志す快速ウイングの福岡堅樹は、今回がラストシーズンだ。
ダークホース的な存在としてあげられるのが、18-19シーズン12位のキヤノンイーグルスだろう。19年W杯日本代表の田村優がキャプテンと司令塔を兼務し、W杯3度出場の36歳・田中史明も所属する。
チームを率いる沢木敬介監督は、サントリーで18年と19年にトップリーグを制した。15年のW杯で日本代表スタッフに名を連ねた45歳の指揮官は、「1試合1試合成長できる試合をしたい。神戸製鋼、ヤマハ、パナソニック相手に、どれだけ勇気をもってチャレンジできるか」と話す。
W杯戦士たちが激突
一方のレッドカンファレンスでは、18-19シーズン2位のサントリー、同4位のトヨタ自動車ヴェルブリッツが先行し、同5位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(NTTコム)、同11位の東芝ブレイブルーパスが追いかける展開だ。
サントリーは19年W杯日本代表の流大がスクラムハーフを、16年と17年の世界最優秀選手のB・バレットがフライハーフ(スタンドオフ)を担い、チームがアイデンティティとする「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を推し進める。
キャプテンの中村亮土は19年W杯で、鋭いタックルと推進力を見せた29歳だ。15年と19年のW杯で桜のジャージをまとったツイヘンドリック、19年W杯オーストラリア代表の重戦車サム・ケレビらも、迫力十分の突進を見せる。チームの目標は17―18シーズン以来の優勝しかない。
これまで3位が最高順位のトヨタは、充実の陣容で初のリーグ制覇を視界にとらえる。19年W杯優勝メンバーのウィリー・ルルー(南アフリカ)、同NZ代表主将のキアラン・リード、同オーストラリア主将のマイケル・フーパーは、世界のラグビー界がうらやむ“夢のトリオ”と言っていい。
19年W杯日本代表の姫野和樹は、NZのクラブでプレーしているため不在となる。それでも、サイモン・クロンHCは「2位になるためにリーグに入っているわけではない」ときっぱり語る。「優勝するためにはプロセスが大事で、1分1秒も無駄にせずに成長していかなければいけない」として、東芝との開幕戦に集中している。
その東芝では、19年W杯日本代表の主将リーチマイケルが健在だ。同じくW杯を沸かせた徳永祥尭は、小川高廣と共同主将でチームを牽引する。
18-19シーズンは過去最低の11位に沈んだが、20年シーズンはサントリーとNTTコムに勝利していた。サントリーとともに最多5度の優勝を誇る名門は、トヨタとの開幕戦で勢いをつかみたいところだ。
NTTコムはクラブ初のトップ4入りをターゲットとする。注目はスコットランド代表として15年と19年のW杯に出場したグレイグ・レイドローだろう。経験豊富で高いスキルをセットするゲームメイカーの加入により、19年W杯日本代表の“フィジカル・モンスター”アマナキ・レレイ・マフイ、15年W杯日本代表のフィニッシャー山田章仁らが、これまで以上にストロングポイントを発揮していく期待感がある。
世界的なビッグネームと日本代表の競演が実現し、ワールドクラスのスキルがぶつかり合うトップリーグは、見逃せないゲームの連続だ。どのカードも外れがない。新リーグ移行前の最後のトップリーグを、23年のW杯へ向けた国内最高峰のバトルを、ぜひ堪能してほしい。
文・戸塚啓(とつか・けい)
1968年生まれ。『サッカーダイジェスト』編集部を経て1998年秋よりフリーに転身。サッカー日本代表の国際AマッチとJリーグを中心に取材しつつ、フィジカルトレーニング、ラグビー、ランニングなどに関連した取材と執筆も行っている。サッカーW杯は98年より6大会連続で、アジアカップ、ユーロ、コパ・アメリカなども取材。ラグビーW杯は19年大会を取材。『日本サッカー代表監督総論』(双葉社)など著書多数。
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