日々進化する柳田悠岐のバッティング
“変態打ち”というワードが、野球ファンの中にすっかり浸透している。あんな打ち方なのに、どうして……。凄すぎて、異次元すぎて、驚きで思わず言葉が出なくなる。
ここ最近ではあらゆる打者に用いられる言葉になったが、流行発信源は間違いなく柳田悠岐のバッティングだろう。
ある時はヘルメットが脱げてしまうほど泳いだ状態から放った打球が、ライトフェンスを越えてスタンドイン。またある時は、タイミングを外されて右手一本でボールを捉えてその場でくるりと一回転したところ、打球はぐんぐん伸びて左翼席へ飛び込んでいった。
記憶に新しいところでは7月11日のオリックス戦(PayPayドーム)で放った2打席連続ホームランも、柳田にしか打てないような“変態アーチ”だった。一本目は好投手・宮城大弥のスライダーにタイミングを完全に崩されてフォロースルーは片手一本となったが、高々と舞い上がった打球はなかなか落ちてこずに右翼席まで持っていった。二本目もオリックス・ヒギンスのチェンジアップに崩されながら右翼ホームランテラスまで打球を運んでみせた。
「体勢はグチャグチャだったんですけど、奇跡で打てました」とお立ち台ではファンを笑わせたが、報道陣の囲み取材の前では「タイミングは合ってなかったけど、バットの軌道は良かったかな。そこだけ、あとは当たってくれた」と大真面目な顔で振り返った。
柳田といえば、フルスイングだ。「グアッシャーン」(柳田に訊ねた捉えた瞬間の音)とボールを叩き潰して遥か彼方へ飛ばす。その代表格が2015年6月3日に見せた横浜スタジアムのスコアボード破壊弾だった。
近年はそんな打球に加えて、変態ホームランの数が格段に増えた。ただ、柳田に言わせれば「芯でとらえることが出来ましたから」と、涼しい顔で返してくる。体制が崩されたように見えても「軸はブレていなかったので」ときっぱり言う。
柳田はバッティングについて「常に試行錯誤しています」と話している。特に昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でシーズン開幕が約3カ月も延期になったことで自分の打撃と見つめ合う時間が多くあった。「毎日違う打ち方を試しているんですよ」。天真爛漫でいかにも感覚派のようなプレイヤーに映るが、じつはかなり繊細なタイプだ。
今季前半戦を終えた時点で打率.296、22本塁打、53打点。本塁打王レースでは単独トップに立っている。意外にも首位打者や最多安打のタイトルは獲得したことがあったが、本塁打王にはまだ縁がなかった。「まだまだシーズンは長いし、怪我なく一打席一打席、良いバッティングをできるように。それだけを考えています」と本人はいたって冷静だが、終盤戦になるにつれて周囲は心熱くして打席を見守ることになるだろう。
クリーンナップか1、2番か?注目される柳田の起用法
そして、柳田は東京五輪・野球日本代表の一員として金メダルを目指して戦っていく。
もちろん、柳田は「JAPAN」のユニフォームに袖を通すのは初めてではないが、これまで主要大会には縁がなくWBCにもプレミア12にも参加していない。この東京五輪が侍ジャパンとして戦う初めての主要国際大会となる。
球界を代表する強打者たちが集った侍ジャパンにおいて、パ本塁打王の柳田はどのような役割を果たすのか。
「稲葉ジャパン」以降、柳田は2018年3月のオーストラリアとの強化試合(2試合)と同年11月の日米野球に選出されている。その中でスタメン出場した試合ではすべて中軸を任された。日米野球の初戦では「5番センター」でスタメン。この日、5-6で迎えた9回裏2アウトで、劇的な逆転サヨナラ2ランをバックスクリーンへ叩き込んだ。翌2戦目は4番打者に座って4打数4安打1本塁打4打点の大活躍を見せて、侍ジャパン打線を牽引した。
今回の東京五輪でもクリーンナップを担うのか。
ただ、代表メンバーを見ると吉田正尚(オリックス)や鈴木誠也(広島)、村上宗隆(ヤクルト)らスラッガーは多く揃っている一方で、上位打線にハマるタイプの選手は少ない。
侍ジャパン・稲葉監督は「私が就任以来掲げる、スピード&パワーを具現化してくれる中心選手」と柳田を評する。
東京五輪においては、1番・柳田という策で戦う可能性も浮上しているのではなかろうか。
ちなみにソフトバンクで1番打者に起用されたのは2018年シーズンの1試合が最後だ。
もしくは2番・柳田も興味深い。ソフトバンクでも今季夏場以降は2番に座ることが多く、慣れている点もメリットである。また、2番スタメン時の成績は23試合出場で打率.341、3本塁打、12打点、13四球。打率は他打順に比べて圧倒的に高い。
現時点でなかなか見えてこない侍ジャパンのベストオーダー。五輪本戦直前の強化試合となる7月24日(土)の楽天戦、25日(日)の巨人戦でどんな侍最強打線がお披露目されるのか、楽しみにしたい。
文・田尻耕太郎
1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。
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