【最強は誰だ？】絵に描いたようなショートストップ、アデイニー・エチェバリア｜千葉ロッテマリーンズ｜新助っ人外国人選手名鑑｜プロ野球

今回のテーマは「新外国人選手」。助っ人外国人と言うほうが耳馴染みが良いかもしれない。

海を越えて日本の地に活躍の場を求めた彼らの働きは、チームの成績を左右すると言っても過言ではない。当たるか外れるか博打のような外国人選手の存在は、ファンにとっても非常に興味深いものだ。

今季は新型コロナウイルスの影響により現時点では来日できていないが、一足早く今季期待の新助っ人外国人選手を紹介していく。第9弾はロッテのアデイニー・エチェバリアだ。

アデイニー・エチェバリア（千葉ロッテマリーンズ）

内野手／右投右打／キューバ出身／32歳

一般的に遊撃手は（1）シンプルに守備が上手い（2）広い守備範囲をカバーする俊敏性を持つ（3）打撃は非力で目をつぶる、この3つのイメージが強い。

だからこそ長打力も兼ね備える坂本勇人（巨人）や松井稼頭央（元西武など）のような存在は、日本でもアメリカでも稀有な存在なのだ。そこへ行くと今季からロッテでプレーするアデイニー・エチェバリアは、（1）～（3）の要素を完璧に備えている典型的なショートストップだ。

2015年、アメリカとキューバは54年ぶりに国交を回復した。野球界では「これでキューバ人選手が亡命せずにMLBでプレーできるようになる」と期待を寄せたが、19年にドナルド・トランプ大統領がそれを可能にする移籍協定を却下したため、キューバ人選手が野球で飯を食うために国を捨てないといけない状況は今も変わらない。

エチェバリアは09年に11人の仲間と亡命を敢行。本人が「覆面捜査官がうようよいて、バレたら即逮捕。だから色々と質問して誰が信用できるか見極めるのが重要」と語るように、亡命はとにかく命がけだ。エチェバリアはなんとかメキシコにたどり着き、その後ドミニカ共和国に渡ってトレーニングに励んでいるところをトロント・ブルージェイズの目に止まり、4年1000万ドルの契約にサインした。

12年にメジャーデビューを果たしたエチェバリアの転機となったのは、その年のオフにマイアミ・マーリンズとの間で行われた総勢12人が動く大型トレード。再建中のマーリンズにあって遊撃手のファーストチョイスとなったエチェバリアは、レギュラーとして1年をメジャーで完走した。

13～16年は毎年130試合以上に出場し、プラマイゼロだった14年以外は守備防御点（リーグ平均と比べて守備でどれだけ失点を防いだかを示す指標）がプラスに転じており、特に15年は遊撃手リーグ3位の+12を記録。軽業師のような身のこなしでボールに飛びつき、無理な体勢からも正確に一塁に送球できるアクロバットな守備は評価が高く、マーリンズ時代に同僚だったイチローもその守備に一目を置いていた。

その後はジャーニーマンとして5球団を渡り歩いたエチェバリアだが、行く先々で守備固めとして重宝され、19年からは二塁や三塁でも起用されるなど汎用性も発揮している。

（1）と（2）を兼備しているのは良しとして、問題は（3）だ。獲得に際して井口資仁監督は「ホームランは20本以上を期待している」とコメントしたが、それは少々厳しいかもしれない。

9年間で通算37本塁打を放っているが、シーズン2桁ホームランはなく、OPSも.700を超えた年は1回のみ。ただ、18年は94試合で6本、19年は84試合で9本と少しずつではあるがパワーアップしており、同胞で同僚のレオニス・マーティンのように日本で長打力開眼となれば、井口監督が期待する数字に近づけるかもしれない。

打席でのアプローチは初球からガンガン振ってくるタイプで四球も少ないので、上位打線に置くより下位で自由に打たせた方がいいだろう。恐怖の下位打線として相手投手にプレッシャーを与え、守備の指南役として若手の刺激になれれば、年俸1億円は安い買い物だ。