2年ぶりの開催となった日本生命セ・パ交流戦2021は、オリックス・バファローズが11年ぶりとなる優勝で幕を閉じた。一方で、セ・リーグが49勝47敗11分で12年ぶり2度目の勝ち越しを達成するなど、パ・リーグ球団にとっては厳しい戦いを強いられた。
そんな交流戦について、DAZNで解説を務める飯田哲也氏にパ・リーグ6球団を中心に戦いぶりを振り返ってもらった。※インタビューは6月14日に実施
投手力と打線が噛み合っての優勝
──2年ぶりの交流戦はオリックス・バファローズの優勝で幕を閉じました。
オリックスの優勝は予想していませんでしたが、やっぱり投手のバランスが良いチームだなと改めて思いましたね。特にこの期間は投手が良かったかなという印象です。
──期間中は防御率3.76の成績でした。先発陣は山本由伸投手、山岡泰輔投手に続いて、宮城大弥選手が台頭し、抑えも復帰した平野佳寿が復調しています。
特に抑えの平野が大きいですね。前半戦は調子が上がらず、チームとしても抑えを固定できなかったなかで、彼が復活してきました。盤石の先発陣に、後もしっかりと固まったことで、この交流戦を勝ち切ることができました。
──やはり抑えはチームにとって大事なポジション?
抑えというのは、経験した人じゃないとわからないプレッシャーがあると思います。経験豊富な平野がいることによって、その前で投げる人も力が発揮できるんじゃないかと。
──一方でオリックスの打線はいかがでしたか?
元々投手力があるチームで、そこに野手が上手く噛み合ってきての優勝だったと思います。先発は2枚看板の山本と山岡がしっかりしていて、宮城も出てきた。そう連敗するチームではないので、あとはどう野手が援護するかというところでした。
──その打線が交流戦期間では打率.287で、横浜DeNAベイスターズの打率.297に次いで2番目でした。
この交流期間戦中は本当に上手くできたと思いますよ。1番に入った福田(周平)にしろ、ラオウ(杉本裕太郎)にしろ、T-岡田にしろ、活躍しました。このままの流れでいけばパ・リーグでも優勝争いに持っていけるんじゃないかと思っています。
──飯田さんが見て、交流戦の打線のキーマンはどなたでしたか?
この原動力はやっぱり福田ですね。彼が1番で固定できたこと。さらにはT-岡田の復活と、ラオウの打点の多さというか、勝負強さですね。これで外国人まで打ちだしたらどうなっちゃうんだっていうくらい面白そうです。
──この交流戦の結果はチームにとって自信になるのでは?
特に今のチームは若い力が多いですよね。彼らがこの交流戦で「あ、こうやってやればいいんだ」ていうのを掴んだと思います。今までは自分の結果だけ、成績だけ頑張っているような感じに見えていたので、チームの勝ちに繋がらない部分がありました。それがこの交流戦で、野球の楽しさというのがわかってきてるんじゃないかなと思います。
──1番の福田選手は、吉田正尚選手の打率.340に続く打率.337と、1番として結果を残しました。
やっぱり1番が出ると3番、4番がしっかりしているので得点も入るし、当たり前の結果ですね。吉田はもともと交流戦前から調子が良かった選手で、さらに福田が塁に出て、2番に入る宗(佑磨)が上手くつなぐという形ができていたので、得点力は上がります。
──去年までのオリックス打線はどうしても吉田への依存が大きかったですが、先ほどの打率でも福田選手が結果を残し、本塁打や打点では杉本選手が結果を残していて、チームとして穴がなくなっている印象ですね。
今までならば、相手チームは吉田だけをマークする戦いができました。しかし今は杉本の調子がいいので吉田で勝負しなくてはいけない。相手としては吉田だけに集中できなくなったことで、チームとして機能しましたね。
「期待外れ」に終わったソフトバンク
──一方でパ・リーグは交流戦に強いイメージがありながら、オリックスに続く東北楽天ゴールデンイーグルスが9勝8敗1分けで貯金が1しか作れていないです。結構苦戦したなという印象を受けましたが、飯田さんから見ていかがでしょう。
今年のパ・リーグは、前評判通りにはいかなかったですね。特に交流戦に強いソフトバンクはケガ人が多く、楽天も投手陣が苦しんで打戦も不甲斐なかったですね。
──以前お話を伺いした時は、千葉ロッテマリーンズを優勝候補とされていました。
ロッテは決め手がなかったですね。特に期待していた美馬学が良くなかったことは驚きでした。経験がある投手ですし、やってくれると思ったんですけどね。打線はレアードにあたりが出てきているので、なおさら投手陣がもったいなかったなという印象です。
──今年の福岡ソフトバンクホークスは、球団史上ワースト勝率となるなど、得意の交流戦で大ブレーキでした。
ちょっと期待外れというか、ケガ人がいるという言い訳はありますけども、それだったらそれなりの戦い方ができるのがホークスの強みでした。ただ、今年は柳田(悠岐)に頼るところが大きかったのかなと。柳田が打てなかったら負けるっていう試合が多かったかなと思いますね。
──チャンスを作りながらも、後一本が出ない試合が多かった印象です。
やはり柳田頼みになるのではなくて、もっとバンドだったりエンドランだったり、細い野球をする。アウトを取られてもランナーを進めるとか、そういう野球ができなかったですね。打って打って点数をとるのはやっぱり難しいんだなと。そういうものを改めて感じたホークスの戦い方でしたね。
──この交流戦で投手陣は12球団トップとなる防御率3.04でした。
その戦い方が上手く野手と噛み合っていませんでしたね。投手陣も数字では抑えているのですが、肝心なところで打たれちゃう。やはり野手陣が奮起して、もっと点を取らなければいけなかったですね。
──点差がつかない試合では、リリーフ陣へのプレッシャーがより大きなものになりますね。
勝っている試合を守りにいくというプレッシャーは大きいですし、その結果、終盤に逆転を許した試合も結構多かったです。プレッシャーの掛かり方は、1点2点と3点4点差では全然違うので、僅差で7、8、9回にいってしまうと余計にプレッシャーを感じてしまいます。
平良海馬に漂う打たれない雰囲気
──同じく交流戦で苦しんだ埼玉西武ライオンズは一番の若林楽人選手はケガをするなど、厳しい台所事情となりました。
西武もケガに苦しんでいますが、変わりも出てきています。若林はもったいなかったですが、岸潤一郎も活躍しています。そういう新しい芽が出てきているのは楽しみです。
──投手では平良海馬投手が32試合連続無失点の日本記録を樹立するなど明るい話題がありました。
かなり力がある投手ですし、自信を持って投げていますよね。打たれない雰囲気があります。相手にしても、「うわー、平良が出てきた、もうダメだ」みたいな雰囲気がちょっと出てきているんじゃないかなと思います。どこまで記録を伸ばすか楽しみでしょうがないですね。
──そのほか、日本ハムは前半戦と同様に交流戦でも苦しい戦いとなりました。
日本ハムの場合は、中田(翔)が復活をしない限り、上位は難しい気がしています。
──中田選手の復調がチーム浮上のカギ?
そうですね。ただ今は長打を狙ってバットを振っている感じがします。俺が決めなきゃという気持ちが強すぎて、長打を狙いすぎてやられているというイメージです。チームが勝てない、自分も打てないとなると、責任が4番にかかってくるのは本人が1番わかっているでしょう。
──投手陣も厳しい戦いとなりました。
上手く人をつなぎながらやっている印象はありますが、先発が崩れた試合はもう取り返せないという展開が多いですね。そうなると先発投手がもう1枚、2枚出てこないと厳しいでしょう。
インタビュー・構成=川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』のライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、『フットサル全力応援メディアSAL』の立ち上げに参画。2018年には、Fリーグに参戦したロベルト・カルロスの単独インタビューを行った。現在は『ABEMA TIMES』などに寄稿している。
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