エラーコード %{errorCode}

NPB

【コラム】大混戦パ・リーグが真の最終盤へ。歴史として語り継がれる2つの“史闘”を振り返る|プロ野球

【コラム】大混戦パ・リーグが真の最終盤へ。歴史として語り継がれる2つの“史闘”を振り返る|プロ野球DAZN
【プロ野球 コラム】ホークス取材歴20年を超える田尻耕太郎氏による鷹コラム。今回は、激戦となった2010年、2014年の戦いを振り返る。
▶▶▶DAZNの詳細をチェックする◀◀◀

大混戦パ・リーグはさらに熱を帯びて真の最終盤へ

ホークスは“天下分け目”の11連戦を7勝4敗で戦い抜いた。ここに突入する前、藤本博史監督は「一番しんどい」「魔の11連戦」と警戒を強めていた。そんな正念場で3つも貯金を殖やせたのはじつに大きい。

だがしかし、実際には天下分け目とはならなかった。

いや、その気配はあった。大型連戦の初戦こそ敗れたが、続く11日のオリックス戦(京セラドーム)でエース・千賀滉大が7年連続2桁勝利を決めて白星を飾ると、12日~14日の本拠地PayPayドームでの西武3連戦をスイープした。15日には仙台・楽天生命パークに移動しての楽天戦。ハードな日程を物語るように試合前練習に野球道具が届かないハプニングに見舞われながらも、柳田悠岐に本塁打が飛び出し、和田毅が気迫の5回零封の快投で快勝。2年前に急逝した川村隆史コンディショニング担当の命日にチーム一丸で白星を届け、この日ついに優勝マジック「11」を点灯させた。

翌16日の楽天戦も勝利して6連勝であっさり「M9」に。タカはもう、頂上に向かって飛翔するだけ。意気揚々と乗り込んだはずの17日~19日の京セラドームだったが、痛恨すぎるオリックス戦3連敗。マジック消滅は何とか免れ、11連戦ラストの日本ハム戦(札幌ドーム)に勝利して「M8」には減らした。

ただ、2位で追いかけてくるオリックスとのゲーム差は「0」のまま(9月21日時点)。ペナントレースの勝負を決する11連戦になると思われたが、大混戦パ・リーグはさらに熱を帯びて真の最終盤へと突入する様相となったのだった。

ホークスは2010年以降、昨季までの12シーズン中に6度もリーグ優勝を果たしている。うち2011年、2015年、2017年、2020年の優勝では2位を10ゲーム差以上引き離しての圧倒的な強さを見せつけた(最大ゲーム差は2011年の17.5差)。

しかし一方で残る2010年、2014年にリーグ制覇した時は大接戦だった。いずれの年もレギュラーシーズン最終戦までもつれ込み、「涙のリーグV」を果たしたのだった。

そんな今季にも勝るとも劣らない、激闘の末に勝ちとった戴冠を振り返る。

ソフトバンクとなって初のリーグ制覇を達成した2010年

まずは今から12年前の2010年。球団名がソフトバンクとなって6年目だったが、それまでリーグ優勝を果たしたことはなかった。毎年いい戦いはするしスター選手も揃っているが、なぜか突き抜けきれない。そんな印象だった。

この年の投手陣は、和田毅が17勝で自身初の最多勝、杉内俊哉が16勝と二枚看板が大活躍。リリーフも入団2年目だった攝津正が38ホールド、ファルケンボーグがリーグ最多の39ホールドを挙げて、守護神の馬原孝浩が32セーブをマークした「SBMリレー」で逃げ切るのが必勝パターンだった。ただ、ほかの先発陣が振るわないなど、投手層の薄さが課題だった。

野手陣は1番・本多雄一、2番・川崎宗則の俊足巧打コンビがチームを引っ張った。中軸は同年27発の多村仁志と、同24発のオーティズが得点源となったが、攻撃の中心でチームの精神的支柱でもあったのは小久保裕紀だった。

チームは6月終了時点では3位だったが、7月が月間14勝8敗の攻勢で首位に浮上。そのまま勢いに乗るかと思われたが、徐々に陰りが見え始めて9月になると首位の座を西武に奪われてしまった。

残り6試合の時点で首位に立つ西武とは3.5差。もうダメか……と思われたが、鷹ナインは諦めなかった。2010年9月18日~20日の本拠地ヤフードーム(当時名称)に西武を迎えた直接対決3試合で、ホークスはあまりにも劇的な3連勝を果たしてペナントレースの運命を変えたのだ。

初戦は延長11回裏、4番・小久保が左中間スタンドへ特大のサヨナラ2ラン。この一発が両チームの雰囲気をガラリ一変させる最大の分岐点となった。また、3戦目の最終回2アウトでの、守護神の馬原と西武の主砲・中島裕之(現登録名は宏之=巨人)との10分を超える名勝負も懐かしい。最後は12球目のフォークで空振り三振を奪った。

その後、23日にホークスが逆転首位浮上。25日には札幌ドームの日本ハム戦で杉内が、ダルビッシュ有との壮絶な投げ合いを1-0の完封勝利で制した。ヒーローインタビューでは思わず感極まって男泣きした。

そしてマジック1で迎えたシーズン最終144試合目、2010年9月26日の楽天戦(Kスタ宮城=当時名称)で悲願のリーグ制覇を果たした。優勝決定シーンがまさかの試合中。この日のホークスはナイターだったが、マジック対象の西武がデーゲームで敗れたためだった。午後6時44分、西武敗戦の一報が球場を駆け巡る。秋山幸二監督がグラウンドで戦う選手たちへ、ベンチの最前列で何度も右手のこぶしを突き上げた。一塁を守っていた小久保は守備中だったが思わず涙した。あの年のチームスローガンは「今年はやらんといかんばい!」。勇ましく一本気のある九州男児たちが夢を結実した瞬間だった。

歴史に残る10・2決戦。選手全員の気持ちをぶつけた松田の決勝打

2022-04-07-npb-Hawks-Matsuda時事通信

続いて振り返るのは2014年だ。シーズン最終戦決着と聞いて、鷹ファンが真っ先に思い浮かべるのはコチラの方だろう。

2014年10月2日、ヤフオクドーム(当時名称)で行われたホークス対オリックス。

首位・ホークスが残り1試合、77勝60敗6分、勝率.562。

2位・オリックスが残り3試合、78勝61敗2分、勝率.561。

ホークスが勝てばその時点で優勝。オリックスはこの後に楽天戦を2試合残していたが、この一戦に勝てばマジック1が再点灯しリーグ制覇に限りなく近づくことができる。つまり、事実上の優勝決定戦だった。

この時もチームを率いたのは秋山監督だ。決戦前には1994年の巨人と中日が争った「10・8」も引き合いに出しながら、「144試合、全力で戦うシーズンはなかなかない。いかに自分のできることをできるかだ」といつもの静かな語り口調の中に闘志を燃やしていた。そして主軸だった内川聖一も「いつもやっていることをやるだけ。どれだけ腹をくくってやれるか」と平常心を強調しつつも、表情は普段とはまるで違っていた。

定刻の18時ちょうどにプレーボール。先発マウンドはエース攝津ではなく大隣憲司だった。国指定の難病である黄色靱帯骨化症から同年7月に一軍復帰した左腕は「一人一人に全力でぶつかっていく」という役割を全うして6回4安打無失点と好投した。

お互いに譲れない、譲らない一戦は当然のごとく接戦となる。1-1のスコアで延長戦に突入した。

延長十回。両チームともに満塁のチャンスを作った。それぞれの“一打”が明暗を分けた。

十回表、2死満塁でオリックスの4番・ペーニャはドーム三塁ファウルゾーンの天井に当たる規格外の飛球を打ち上げた。遊撃手の今宮健太がキャッチ。アウトの宣告にオリックスの森脇浩司監督ら首脳陣は色めき立ったが、プレイングフィールド上のためインプレーと判断されてそのまま3アウトチェンジとなった。

長いシーズンでも一度あるかないかの珍事。何かが起こる……そんな予感が漂う中、ホークスの十回裏の攻撃は1番・柳田悠岐が四球、今宮が送りバントを決めて、3番・内川は敬遠。そして4番の李大浩も四球で歩いた。

1死満塁、打席は5番・松田宣浩。オリックスベンチはたまらず、防御率0点台のとっておきのリリーフ右腕・比嘉幹貴をマウンドに送り込んだ。

初球はボール。2球目はスライダーをバックネット裏にファウル。3球目も内から入った甘いスライダーだったが、またもファウルになった。

右横手の比嘉、スライダーは生命線であり勝負球だ。4球目、追い込まれた松田は覚悟を決めて思いっきり踏み込んだ。球種はやはりスライダー。外角一杯を“前手ギュン”で振りぬく。打球は左中間の、深く、深くに舞い飛んでグラウンドに大きく弾んだ。三塁から柳田がホームに生還。サヨナラ優勝決定の決着だった。

松田はその瞬間のことを後にこうに話した。

「あの場面は、今年チーム全員でやってきた練習とか、なかなか勝てなかった時期のこととか、いろいろなことを思いながら選手全員の気持ちをぶつけました。だから勝てたと思いますし、本当にうれしいです」

秋山監督がゆっくりと歩み寄る。どんどん目が潤み、松田と抱き合う頃には顔がくしゃくしゃだった。松田も泣いていた。自らを「遅咲きの選手」と認めており、「プロに入った頃、2軍監督だった秋山監督に育ててもらった」と常々話していた。その恩に報いる一打でもあった。

いくつものうれし涙の裏側で、敗者も人目をはばからず泣いていた。オリックス捕手の伊藤光(現DeNA)は本塁後ろで座り込んだまま、しばらく動けなかった。

あらゆる涙が交錯した「10・2」は熱パの歴史として語り継がれる“史闘”になった。2022年のプロ野球に、また“史闘”が刻まれる。今を生きる我々は幸運な目撃者になれる。感動と興奮と歓喜に包まれたラストシーンは一体いつ、どこで、どんな形で生まれるだろうか。

文・ 田尻耕太郎

1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。

関連ページ

【コラム】首位奪還を目指すホークスのキーマンは東浜巨。肘の手術、肩の不調、新型コロナ感染…苦難を乗り越え復活したノーヒッター

DAZNについて

DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。

●  【番組表】直近の注目コンテンツは?
●  【お得】DAZNの料金・割引プランは?

セ・リーグ

パ・リーグ

オリックス
ロッテ
楽天
ソフトバンク
日本ハム
西武