DeNA・大田泰示外野手(32)は試合に登場するたびに、ひと際大きな拍手を浴びていた。日本ハムで1億円プレーヤーの仲間入りを果たしながら2021年オフに自由契約となって、3球団目の新天地・横浜DeNAベイスターズで迎えた2022年シーズン。球場で名前をコールされるたびに、スタンドが沸いた。
今季最もファンが盛り上がったのは、同点打とタッチをかいくぐる神走塁で、チームにサヨナラ勝ちをもたらした6月30日の阪神戦(横浜スタジアム)だった。1点ビハインドの9回無死一塁。阪神・岩崎の外角高め130キロを強振して、左翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。土壇場での同点打。そこからさらに嶺井の右前安打で、二塁走者の大田が一気にホームへ突っ込んでいった。タッチをかいくぐるヘッドスライディングで、見事にサヨナラ勝ちをもぎ取った。
(C)時事通信
「よけるしかないと思って。長い腕を伸ばしてタッチしました。横浜最高!」。勝利の立役者がお立ち台で上げた雄たけびにファンは酔いしれた。「素晴らしいスライディングだった。最後まで食らいついて。みんなが救われた」と三浦監督も興奮気味に振り返る大きな活躍だった。
大田は日本ハム5年目の2021年。若手の台頭もあり移籍後最少の出場76試合で3本塁打、打率2割4厘に終わり、オフに自由契約となっていた。巨人、日本ハムに次ぐ3球団目に選んだのは、東海大相模高時代に激闘を繰り広げた思い出の横浜スタジアムが本拠地となるDeNAだった。
今季は62試合の出場で、打率2割7分8厘、5本塁打だったが、存在感が際立っていた。試合に出場しなくても、ベンチ内で大声を出し続けて、味方を鼓舞する。ベンチに戻ってくる選手一人一人に、幾度も声を掛けて激励する。そのポジティブなパワーが伝染し、声を掛けられた選手にどんどん笑顔が広がっていった。
ついに三浦大輔監督(48)からはクライマックスシリーズの前に「喉のケアだけしてクライマックスシリーズに備えてくれ」と異例の指示が下るまでになった。
指揮官は就任1年目に最下位に沈んだ反省を踏まえて、2年目の今季は風通しの良い、元気なチーム作りを目指した。コーチ、スタッフには選手から話をしやすいような雰囲気づくりを指示した。伸び伸びとプレーできるようになった選手たちには、最後まであきらめず、ポジティブに攻めていくことの重要性を説いた。その結果が、連覇したヤクルトをシーズン最後まで追い詰めてのリーグ2位でのCS進出だった。新天地で大田泰示外野手がポジティブな声かけ役を1シーズン全うした結果でもある。
春先の練習試合、オープン戦からベンチ前で声を出し続けてきた。ポストシーズンだから、クライマックシリーズだからといって役割が急に変わるわけではない。「しっかり声を出してチームがとにかく前を向いて進めるように」と気合を入れ直した。
14年目のベテランが新天地で独自のポジションをつかみ取りクライマックスシリーズに臨む。
文・宮田和紀
1976年10月5日生まれ。45歳。1999年に報知新聞社入社。オリックス担当などを経て22年からDeNA担当。
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