昨年のパ・リーグはオリックス・バファローズが2連覇を達成した。しかし主砲・吉田正尚のメジャー挑戦など、今シーズンは苦しい戦いが予想されている。
打倒・オリックスを掲げ大型補強を行った福岡ソフトバンクホークス、新体制となった埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、外国人打者が好調な東北楽天ゴールデンイーグルス、新庄体制2年目を迎える北海道日本ハムファイターズがどのような戦いを見せるか。DAZNの解説を務める飯田哲也氏にパ・リーグの展望を伺った。
※インタビューは3月24日に実施
パ・リーグの覇権争いはソフトバンクが中心に
(C)球団提供
──昨年はオリックス・バファローズが2連覇を達成して幕を閉じたパ・リーグでした。今年の展望はいかがでしょうか?
どこのチームにもチャンスがあると思っています。そのなかでもソフトバンクが中心に進んでいくことは間違いないでしょう。ただ、ソフトバンクも大型補強をしましたが、圧倒的じゃないように思います。チームとして若手への若返りの時期ですが、うまくいっていない印象です。外国人にしてもそれほどパッとしない。苦しいシーズンになると思います。とはいえ、他のチームも戦力ダウンが目立つのは事実。やはりソフトバンクを中心にパ・リーグは進んでいくと思います。
──ソフトバンクはエースの千賀滉大投手がメジャーに挑戦し柱を失いました。
大関友久、板東湧梧、藤井皓哉など若手のいい選手はいますが、彼らの場合は1年間を通して活躍できるかが未知数です。実績がある石川柊太や東浜巨でさえも、投げてみないとわからない。有原航平やガンケルらを獲得しましたが、こういった補強選手も未知数ですね。絶対的だった千賀がいなくなって、投手陣は入れ替わりの時期です。うまく若手が出てきてバトンタッチできれば、ペナントを抜け出す可能性もあります。一方で後ろはオスナを獲得し、モイネロもいます。7回は又吉克樹、津森宥紀など人数もいるので、中継ぎ陣は盤石でしょう。
──野手も世代交代の時期に入っています。
とはいえ今年も柳田悠岐の成績が勝敗を左右すると思っていますし、彼はまだまだ存在感を示せる選手です。しかしオープン戦では結果が出ていませんし、同じくベテランとなった中村晃も難しい。二塁手争いについても三森大貴(開幕二軍が決定)で考えているはずですが、オープン戦ではいまいち結果が出ていません。牧原大成は中堅で使うと言っていましたが、二塁手の可能性もあるでしょう。まだまだ決められていない部分が多いですね。
──WBCでも活躍した近藤健介選手の起用法はどのように考えていらっしゃいますか?
侍ジャパンでは2番として活躍していました。あのプレーを見ると2番での起用を考えているでしょうね。なんでもできるバッターですし、簡単に三振しないので、近藤をどこにはめるかは見所の一つだと思っています。復帰した栗原陵矢も楽しみですし、近藤と栗原が柳田を生かす打線になると思います。
──おっしゃるようにソフトバンクではオープン戦を見る限り外国人選手の元気がないことが心配です。
やってみないとわからない部分はありますが、オープン戦の感じではパッとしない。ガルビスも2年目で少し当たりが出てきましたが、そのくらいなら日本人選手を使った方がいい。他のアストゥディーヨもホーキンスも今ひとつの成績です。シーズンが進んで日本の野球にフィットしてくれたらいいですが、オープン戦の成績でははっきり言って厳しいでしょう。
新監督を迎える西武とロッテは?
時事通信
──その他のチームだと埼玉西武ライオンズと千葉ロッテマリーンズが新監督を迎えました。
両チームとも投手力はありますが、野手が厳しいように思います。西武は若手を使っていますが、伸び悩んでいるように見えますね。結局は山川穂高に頼る打線。外崎修汰が復活すると変わってくるのでしょうが、今のところは難しそうですね。栗山巧も中村剛也も年齢を重ねて、レギュラーとして活躍することが難しくなってきています。おそらく代打での起用が多くなるでしょう。そこを埋める若手の活躍が必要ですね。
ロッテは安田尚憲に期待しているのですが、ここ数年、もう一つ能力を発揮しきれていません。ソフトバンクも西武もロッテもですが、パ・リーグは入れ替わりの時期です。それがうまくいっていないチームかなと思います。
──西武は森友哉選手がオリックスに移籍しました。これも1つ大きなポイントでは?
大きいですね。打線もですし、捕手としても大きい。最近はシーズンを通して1人の捕手が守ることは少なくなったので、いろいろな選手を見ながら使うと思います。ただ、ある程度固定できないと厳しいポジションです。
──その他、WBC組では源田壮亮選手が骨折していますし、山川選手のプレー時間の少なさも気になるところでは?
源田はWBCでプレーしましたが、シーズンでも同じようにプレーするかどうか。長いシーズンを考えると、休ませるのも手だと思いますね。そうなると西武にとっては痛いですね。山川については、もともと波がある選手ですから、それをどれだけ少なくするかが大きなポイントでしょう。西武の勝ちパターンとしては山川の前にランナーを置いて、ドカンと打点を稼ぐ戦い方になるでしょう。そうすると、他の球団は山川と勝負しなくなる。なので、山川の前後のバッター、特に外国人選手の出来がかなり重要になりますね。
──ロッテでは佐々木朗希投手の活躍が期待されます。WBCでも素晴らしい投球を見せました。
何も心配しなくてもやってくれる選手です。体力もついてきましたし、投げる力も強くなって、自信も持っている。去年よりいい成績を残してくれるでしょう。今年何勝するか楽しみです。
“打ち勝つ野球”の楽天、若手大砲が覚醒中の新庄・日本ハム
時事通信
──東北楽天ゴールデンイーグルスはいかがでしょう?
先発が足りないですね。名前を見ると田中将大、則本昂大、岸孝之などいますが、年齢も高くなっていますよね。石井一久監督も嘆いていましたが、若手の先発が出てきません。チャンスは与えているものの、ポジションを取りきれない。厳しい戦いになるでしょうね。
──投手陣とは違って打線は若手選手が出てきているように思います。
そうですね。若手選手が出てきて野手の争いは活発になっています。レギュラーといえば浅村栄斗くらいですね。他は全てのポジションで競争があるので、そこを勝ち抜いてくる若手がいるとさらに面白いですね。石井監督も誰をどう使おうかなと楽しみな部分だと思います。
──オープン戦ではギッテンス選手がかなり調子を上げていました。
楽天といえば外国人があまり活躍できていない印象でしたが、ギッテンスがオープン戦から結果を残していますね。外国人選手が活躍できると、打線はさらに機能する。今年の楽天の場合は打ち勝つ野球をしないと厳しいと思うので、外国人選手の活躍も大事になりますね。
──オープン戦の結果で見ると北海道日本ハムファイターズが元気ですね。
新庄剛志監督2年目でどうなるかは楽しみですが、戦力的には足りない印象です。野手では、清宮幸太郎が調子を上げているのは好材料。おそらく彼が打線の軸になるでしょう。あとは万波中正も楽しみです。戦力的には足りないですが、若いチームなので勢いに乗ると一気にいってしまう可能性もある。爆発力はあるのかなと思いますね。
──投手陣だと伊藤大海投手がWBCでも素晴らしい投球を見せました。シーズン中も投手の軸になるのでは?
上沢直之、加藤貴之と一緒に日本ハムの柱になる選手ですね。WBCでの投げっぷりもよかったですし、今年はかなり勝てる投手だと思います。
オリックスは吉田正尚の穴をどう埋めるか
(C)産経新聞社
──3連覇を目指すオリックスですが、打線では吉田正尚選手がメジャーに行きました。かなりの痛手だと思いますが。
痛いってもんじゃないですよ。痛すぎる。でもオリックスの強みは点の取り方が上手いですし、紅林弘太郎や太田椋などの若手が伸びている。宗佑磨、福田周平たちもいて、動ける選手が多い。なので吉田の抜けた穴を一人で埋めることは無理なので、チーム力で埋めたいですね。あとはラオウ(杉本裕太郎)の復活。彼がホームラン王をとったシーズンのような活躍ができれば楽しみですね。
──投手力はパ・リーグトップクラスだと思います。
山本由伸、宮城大弥がいて、山岡泰輔、田嶋大樹など層はかなり厚いですね。そこにきて開幕は山下舜平大とも言われています。どんどん若手が出てきますね。投手力がありますし、戦い方が上手い、2連覇している自信、勝つ喜びを知っているので、チーム力で勝っていくでしょう。今年のパ・リーグも予想が難しいですね。
飯田哲也氏の注目は「覚醒した清宮幸太郎」
時事通信
──今シーズンを見ていくなかで、WBC組の活躍も楽しみですね。
相当な緊張感のなかで戦って、優勝してくれました。それだけに、シーズンに向かう前に少し気が抜けてしまうこともあると思います。開幕に向けてモチベーションの保ち方は難しいですね。しかし、WBC組が野球界を盛り上げていくと思います。しっかり調整してくるでしょう。
一方で柳田のように辞退した選手が、どういう思いでシーズンに入り、奮起するかは楽しみですね。投手陣は少し難しいかもしれません。WBC球に慣れるようにキャンプから練習してきて、これからNPB球に戻るわけですから、そこにアジャストするための時間がかかるでしょう。
──最後に序盤戦で注目の選手を教えてください。
昨年から清宮の状態が良くて、覚醒したと言ってもいいくらいだと思います。今年もどれくらいの結果を残すか楽しみですね。村上、清宮、安田は同世代のビッグ3ですし、彼らに注目したいですね。
──清宮選手の魅力は?
なんと言っても飛ばす能力でしょう。コツを掴んでる。遠くへ飛ばす技術は持っているので。気持ちの部分が課題でしたが、そこも新庄監督に鍛えられて大人になりつつあるのかなと。さらに今シーズンはエスコンフィールドになったことで、札幌ドームと比べるとよりホームランが出やすい。キャリアハイも目指せるでしょう。
──安田選手も注目
彼らがこれからの日本を背負って立つ世代です。村上の活躍をどう感じているか。清宮と安田の気持ちの変化を見たいですね。WBCでの村上の活躍は刺激になっているはず。やってやろうと思っている今シーズンにどういう結果を残せるかは楽しみですね。
インタビュー= 川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』でライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、2020年からは念願かなってDAZN NEWSでプロ野球を担当している。
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