首位の阪神が絶好調だ。すでに2か月連続の月間勝ち越しが決定。岡田彰布監督は開幕前に「開幕からしばらくの間はいろいろあるやろうな」とうまくいかないことも想定し、4月末にも「まだ落ち着かん」とナインを見渡していた。交流戦までの戦いを、チームを軌道に乗せるための区切りと位置付けていたが、すっかり上昇気流に乗った。その交流戦前の最後のカードは伝統の一戦。同じく5月は好調で勝率5割以上に戻した巨人を迎える。
ここまで、決して順風満帆だったわけではない。投手陣では開幕投手の青柳が不振で2軍調整となり、WBCに出場した湯浅も疲労により離脱。打線も4月はチーム打率2割3分9厘と苦戦した。その中で常にチームを支えているのが、近本光司外野手と中野拓夢内野手の1、2番コンビだ。ともに打率3割合をキープし、過去4年の盗塁王を分け合っている俊足も健在。3番のノイジーと4番の大山の安定感、5番の佐藤輝の好調も目立つが、大前提はチャンスメイク。ノイジーが5打点を稼いだ23日のヤクルト戦(神宮)も、岡田監督は「絶対チャンスがくるからな、今の1、2番なら」と計7出塁の2人に拍手していた。
4割以上の出塁率を誇る近本はリードオフマンとしてだけでなく、ポイントゲッターとしても光る。24日の時点で得点圏打率5割はリーグトップ。特に走者が三塁にいる状況では、15打数11安打の7割3分3厘と驚異的だ。「チャンスの方が狙い球は絞りやすい」と明かすが、日頃の準備が数字に表れている。ウォーミングアップ前は雑談を楽しみながらリラックスした表情を見せる選手も多い中、近本は違う。グラウンドでは常に真剣な表情。球場でスイッチを切る瞬間を尋ねると「僕、それは無理なんです」と返ってきた。ベンチ裏でも常に野球のことを考えているという。
最も頭を使うのは、その日に対戦する投手のイメージ。「この球がきたら、こうバットを出す。あの球だったら、こう。どっちの方向に打球を飛ばせばいいのか」。打席では、用意した引き出しの中から確率の高いボールと打ち方を選ぶ作業。走者がいる状況では「右方向には打たせたくない。打球を上げられたくはない」などと相手バッテリーの配球や野手の守備位置に条件が加わり、近本の選択も楽になるわけだ。5年目で、すっかりチームリーダーの風格が漂う背番号5。まさに攻撃陣の大黒柱だ。
その背中を追う中野も3年目にして主力の地位を固めた。24日のヤクルト戦(神宮)で自己最長となる12試合連続安打。もともと思い切りのいい打撃と機動力は持ち味だったが、今季は四球の多さも目立つ。すでに昨年11年間の18個を上回った。「そこが課題だと思っていました。ボールの見極めもそうですし、いろいろ考えながらできている。四球を取りにいくというよりも状況に応じたバッティング。打ちにいきながら、見逃すこともしっかりとできている」。良い意味でがむしゃらさが消えたことで、どっしりとした雰囲気が出てきた。
指揮官は昨年秋の就任直後に2人の打順固定を決めていた。以前に阪神を率いた時代はライバルの中日に荒木&井端の1、2番が君臨。岡田監督は「アライバ」が二遊間を組んでいたことのすごさを振り返りながら、近本と中野に「打つ方では、その上をいかんとな」と期待していた。もともと打力と走力は文句なし。出塁率の向上が唯一の注文だったが、見事にクリアしている。ここまで、フルイニング出場は近本と中野だけ。そろって出塁できなかった試合は2度のみだが、いずれも敗れた。常にキーマンになるコンビが伝統の一戦でも勝敗を左右しそうだ。
文・安藤理(スポーツ報知)
1986年1月27日生まれ。37歳。愛知県出身。2009年からプロ野球取材に携わり、21年に報知新聞社入社。22年から阪神担当。
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