今年も「交流戦」がやってきた。2005年の導入以来、ソフトバンクは過去17度(2020年シーズンは不開催)のうち優勝8回を誇る。通算成績は228勝144敗18分。勝率.619は2位のロッテの.538を大きく引き離す12球団ダントツだ。
そんな計390試合の中には名シーンや珍場面など、数々の思い出深いアレコレが散りばめられている。
今も胸に刻まれているもの、思い出して胸熱くなるもの、思わず「あー」と声を上げてしまうもの。
その中から厳選した「ホークス交流戦ベスト5」をお届けする(球場名などは当時)。
5位 本塁打を放った投手たち
ホークスの投手でホームランを放ったのは過去2人。それが2008年に2日続けて飛び出している。
1人目はリック・ガトームソン。5月28日の横浜戦(新大分)で三浦大輔からレフトへ場外ホームランを放った。ガトームソンはヤクルトにも在籍し2本塁打をマークしており長打力には定評があった。なおヤクルト時代の2006年5月25日の楽天戦(神宮)にてプロ野球史上72人目(83回目、交流戦では初)のノーヒットノーランも記録している。
2人目は大隣憲司。2008年5月29日の横浜戦(北九州市民球場)で小林太志から左中間席へ流し打つ一発を放った。北九州での試合だったが、横浜主催で行われる珍しいパターンだった。
今年15年ぶりのホークス投手の本塁打は見られるか。個人的には森唯斗に注目したい。昨年のファンフェスティバルで行われた「ホームランダービー」では準優勝。打撃好きもこれまではリリーフで打席機会がなかった。先発転向の今季は“プロ初打席”の可能性が十分ある。
4位 今宮健太、甲子園で魅せた「忍者キャッチ」
2014年6月8日の阪神戦(甲子園)で飛び出した今宮健太のスーパーキャッチ。まるで忍者か、それともスパイダーマンか。軽々と身を宙に躍らせた。
7回裏、阪神の上本博紀が放った当たりは詰まりながらもショートの頭上を越えそうな小飛球。今宮は打球に目をやりながら内野の土の部分を5、6歩とステップを切りながら背走。そして最後は背面跳びのような格好から体をくるりと捻り、左手を懸命に伸ばした。
まだ続く。白球はグラブの中へ収まったように見えたが、無理な体勢だったためこぼれてしまったのだ。が、次の瞬間。今宮は倒れ込みながら左肩を別方向に捻じり直し、もう一度グラブでボールを追いかけて掴み直したのだ。
甲子園を埋め尽した虎党も一瞬静かになったが、事を理解すると、ため息どころか敵ながらアッパレの大喝采がスタンド中から沸き起こった。
今宮はのちにこう振り返った。
「周りはファインプレーだと褒めてくれましたが、一発で捕っておけばよかったという話。そうすれば、顔を打つこともユニフォームが破れることもなかったですから(苦笑)」
番外編 柳田悠岐ボテボテのサヨナラ打に相手投手がっくり
2017年6月6日のヤクルト戦(ヤフオクドーム)。同点の10回裏2アウト三塁で打席には柳田が入った。一打サヨナラの期待高まる中、柳田が放った打球はどん詰まり。力のない打球が三塁線に転がった。三塁手、投手、捕手の3人が追うがファウルゾーンへと切れそうな勢いだったため打球を見送ることに。しかし、人工芝に勢いを殺されて三塁線の手前でぴたりと止まり、サヨナラ内野安打となった。
ボールが止まった瞬間に相手投手の久古はその場でがくりと膝から崩れ落ち、衝撃的すぎる試合の結末を物語るシーンとなった。
3位 斉藤和巳と小久保裕紀の胸アツ対決
交流戦初年度の2005年5月18日、本拠地ヤフードームでの巨人戦。ソフトバンクのエースで当時27歳だった斉藤和巳(現・ソフトバンク1軍投手コーチ)が1失点完投勝ちした。
9回表、巨人の4番・小久保裕紀(現・ソフトバンク2軍監督)との4度目の対決は5球すべて直球勝負。師匠と仰ぐ強打者をショートフライに打ち取った。
小久保はベンチに戻る際、マウンドの横で斉藤に「ナイスボール」と声をかけた。斉藤もフッと息を吐き、頭を下げた。「ありがとうございます」。名勝負が生まれた瞬間だった。
2位 「待機中」だった城所が文句なしのMVP
2016年の交流戦でMVPに輝いたのは城所龍磨(現・ソフトバンク3軍打撃兼外野守備走塁コーチ)。打率.415で首位打者に輝き、5本塁打、12打点、6盗塁(盗塁死0)で優勝に貢献した。
6月3日の広島戦(マツダ)では黒田博樹から一発。12日の巨人戦(ヤフオクドーム)では自身初の2打席連発。19日の阪神戦(甲子園)では勝利を決定づける満塁本塁打など、とにかく派手な活躍が目立った。
俊足強肩の外野手として、それまで守備固めや代走要員としてメシを食ってきた。それでも一定の人気を誇り、球団もそれに乗じて'14年シーズン中に城所グッズを製作した。Tシャツやタオルマフラーには似顔絵とともに「キドコロ待機中」のコピーがつけられた。
あのイチローがそのTシャツを着たことで話題はさらに膨らんだ。ただ、とにかく前向きでひた向きでいつも明るい城所。そんな男の交流戦MVPを我がことのように喜んだファンも多かった。
1位 柳田悠岐の電光ビジョン破壊弾
2015年6月3日、DeNA戦(横浜)。柳田悠岐が三浦大輔のスライダーをとらえた。フルスイングから放たれた打球は夜空へ舞い上がり、バックスクリーンはるか上の電工ビジョンを直撃。打球が当たった部分が映らなくなり「破壊弾」として長く語り継がれる衝撃の一発となった。
その後、柳田はこの一発について「真芯ではなかった。少し詰まった打球だった」と明かした。その告白に衝撃度がさらに激増したのは間違いない。
今年の交流戦は5月30日にスタート。我々の記憶に刻まれる名場面などが誕生する瞬間を、今年も見逃すわけにはいかない。
文・ 田尻耕太郎
1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。
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