白熱した交流戦は、13日からラストウィークを迎える。阪神はパ・リーグとの戦いでここまで借金1の9位に沈んでいるが、貯金2で首位に並ぶ巨人、DeNAとは、わずか1.5ゲーム差。借金2の最下位・西武までが、2ゲーム差の中にひしめく大混戦となっている。オリックス、ソフトバンクと続く最終2カードの結果次第では十分、アレ(優勝)も狙える。
その重要な最初のカードは、大阪に本拠地を構えるライバルとの関西ダービーだ。交流戦が始まった2005年以降、オリックスとの通算成績は31勝31敗3分け。現行の各3試合制となった2015年以降の年度別成績でも、勝ち越しと負け越しが3度ずつで引き分けが1度と、両軍譲らぬ五分の戦いを続けている。
相手の予想先発は順番通りなら、山本、曽谷、山岡。まず立ちはだかるのが、今春のWBC侍メンバーでもある球界屈指の右腕だ。初対決だった昨年は、2点を追う8回に同点として降板に追い込んだ。エース自身に黒星はつけられなかったが、延長11回に勝ち越して勝利。結果的に敵地での3連勝につなげており、ナインが抱く印象は悪くないはずだ。
その山本とは未対戦だが、虎打線で面白い存在になりそうなのが、高卒2年目の前川だ。今春は自身初の1軍キャンプに抜てきされていたが、沖縄・宜野座での先乗り合同自主トレ中に左肩の不調を訴えてキャンプイン直前に離脱。開幕も2軍で迎えたが、ファームで打率3割6分、2本塁打、15打点の好成績を残してアピールに成功。交流戦初戦の5月30日、西武戦(ベルーナドーム)で1軍初昇格し「6番・DH」のスタメンでプロ初出場を果たした。
出場2戦目の同31日には、3打席連続空振り三振を喫して「野球をやってて、したことがなかった」と唇をかんだ。しかし、野球人生初の屈辱が、逆に大きなきっかけとなった。「全く打ててないんで、開き直るって言い方はおかしいですけど、もう1回、イチからスタートっていう感じで気持ちを切り替えて。結果を求めすぎて気持ちが先行して、体が突っ込んでしまっていました。もっと余裕をもっていけたら」
吹っ切れて力みが取れた効果か、6月6日の楽天戦(楽天モバイルパーク宮城)で出場4試合目、計11打席目にしてプロ初安打が出た。「ようやくです」。こうなると、怖いもの知らずの若さが勢いを加速させていった。
次戦では、球団で1998年の浜中以来となる20歳でのクリーンアップ(3番)に抜てきされて、初マルチで応えた。そこから出場1戦ごとに初二塁打、初打点、初三塁打を記録。出場5試合連続で、階段を1つずつ駆け上がった。打率は2割5分9厘だが、初ヒットをマークしてからの5戦に限れば同3割5分。現在、パ・リーグ2位の強豪との対決でも当然、期待は高まる。
甲子園に戻りDH制のない戦いとなるが、ここ3試合では右翼の守備にも就いており準備は万端。岡田監督が好調な新鋭をどう起用するかも、見ものだ。札幌から帰阪する12日の移動時、前川は「徐々に(ボールになる)低めの変化球を見逃せるようになってきました。状態を上げてやっていきたいです」。言葉に手応えをにじませつつ、「交流戦で、いいピッチャーとやらせてもらってきています。いろいろ、挑戦していきたいです」と、新たな経験ばかりが待ち受ける戦いの連続に胸を躍らせた。
開幕前から懸案のひとつだった右翼レギュラー争いは、いまだ固まりきらず継続中だ。遅れてきた若虎が結果と自信を積み上げるほど、チームの大きな底上げとなる。前川のさらなる成長が、悲願のアレをつかむカギとなるかもしれない。
文・宮崎尚行(スポーツ報知)
1977年10月16日生まれ。45歳。山口県出身。2002年に報知新聞社入社。23年から阪神担当。
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