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【コラム】交流戦で完全復活を遂げた近藤健介、受け継がれた“打撃一閃”で2023年型ホークス打線のキーマンへ|プロ野球

【コラム】交流戦で完全復活を遂げた近藤健介、受け継がれた“打撃一閃”で2023年型ホークス打線のキーマンへ|プロ野球(C)産経新聞社
【プロ野球 コラム】福岡ソフトバンクホークス取材歴20年を超える田尻耕太郎氏による鷹コラム。今シーズンのセパ交流戦を振り返り今後の注目選手を挙げてもらった。
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ホークスは交流戦を12球団1位タイの勝率.611(11勝7敗)で戦いきった。TQBという少し複雑な得失点率の差で2019年シーズン以来となる交流戦優勝はならなかったものの、チームの状態は上向いているように見える。

打つべき人が、ここぞという場面でしっかり働いてくれている。

近藤健介が交流戦では打率.413(63打数26安打)で首位打者を獲得し、5本塁打、18打点、出塁率.519と好成績を残し「優秀選手賞」を受賞した。

「捉えるべきボールを捉えられてない」悶々とした前半戦

本領を発揮し始めた。

球界屈指の好打者の看板を背負って今季からホークス入り。その実力を改めて証明したのが、今春のWBCだった。1番のラーズ・ヌートバー、3番の大谷翔平の真ん中を打つ2番打者として大活躍。1次ラウンドの韓国戦ではソロ本塁打。決勝の米国戦までの全試合に2番スタメンで出場し、打率.346、出塁率.500の成績を残して侍ジャパンの世界一に欠かせなかった1人となった。

だが、いざシーズンが始まると低調に。交流戦開幕前までは打率.234と苦しんでいた。

近藤は、自身の打撃をこのように自己分析していた。

「特にランナーなしの場面だと、どうしても自分のフォームとかをいちいち考えてしまい、ピッチャーと対戦出来ている感じがない。走者がいるときはあんまり考えていない感じがあるので、そこがいいのかもしれません(交流戦前も、得点圏打率は.350と高水準だった)」

また、今季の近藤はやや三振が多い。昨年までの日本ハム時代の通算1014試合で567三振。交流戦前の時点で43試合38三振を喫していた。

「三振をしてしまうというより、その前に捉えるべきボールを捉えられてない結果だと思います。ファウルにして追い込まれてしまい結果的に三振になっている。だから三振数自体がどうこうではなく、その前の球を一発で仕留めきれてないのが課題。そこが大事かなと思います。フォアボールは取れているので、ボールは見えている。ただ打ちに行った時のズレがあったり、無駄な動きがある。そこだと思います」

涌井秀章との対戦で掴んだ確かな手応え

悶々とした中で迎えた交流戦だったが、すぐに一筋の光が射す。

その最初のカード2試合目だった5月31日の中日戦(PayPayドーム)。初回の打席で、近藤は「あんまり今シーズンになかった感覚」のヒットを放った。

先発・涌井秀章の投じた8球目の外寄りのスライダーをレフト前へ運んだ。待っていたのは直球だったが、その中でスライダーに対応したという。

「真っすぐを待ちながらしっかりタイミングも合っていたし、振り遅れて向こうに飛んでるという感じでもなかった」

その打席以降も感覚が良くなったという。「今考えれば、そこかな」と転機になった打席だった。

交流戦で無安打だったのは1試合のみ。6月7日のDeNA戦(PayPayドーム)で3打数3安打をマークすると、交流戦の閉幕までのすべての試合で安打を放った。8日の同戦から10日の巨人戦(PayPayドーム)までは3試合連続本塁打を記録。13日、14日のヤクルト戦でも連発し、今季本塁打を10号に乗せた。2桁本塁打をマークしたのは自己最多の11本を打った21年以来2年ぶりで、この時点でチーム最多アーチに浮上した。この14日の試合では本塁打を放った後の4回には左翼守備でダイビング捕球の好プレー。6回の守備から腰の違和感のため退き、翌日は今季初めてスタメンを外れたものの代打で登場してタイムリーを放った。

交流戦の好調については「打ち損じが減ってきた。ヒットや凡打というより、ファウルや空振りが減ったと思います」と語る。

しかし、手放しで喜んでいるようには見えない。

「試行錯誤してやっています。状態は良くても、意識をしているところは日々違いますし、打撃練習などでは『今日の自分にあった』打撃を常に探しながらやっています」

リーグ優勝&日本一に向けて2023年型ホークス打線が猛威を振るう

近藤は現在29歳。8月の誕生日で節目の30代に突入する。昨年は国内FA権を取得したが、悩みに悩んだ。行使を表明してからも決断にはかなりの時間をかけた。その中でホークスでの挑戦を選んだ。

「野球選手としてこれまで培ってきた技術で勝負するか、それとももっともっと成長する環境で勝負するかと考えた時に、もっと厳しい環境に身を置いて成長をしたいと思いました。また、長谷川勇也(1軍打撃)コーチからはホークスの厳しさ、ホークスならではのプレッシャーといった言葉をいただいた。この年齢になると、そういったことを言われるのも少なくなる。そういう言葉をかけてくださる存在は大きい」

日本ハム時代に「ああいう打者になりたい」と思い、勇気をもって声をかけたのが2014年。その後は「師匠」と呼び、親交を深めた。コーチと選手という立場となったが、同じユニフォームに袖を通した今季、PayPayドームのビジョン演出「打撃一閃」は近藤に受け継がれている。

「個人的なことより、チームのリーグ優勝や日本一を目指していきたい」

近藤の復調は、柳田悠岐や栗原陵矢らへの周りの選手への相乗効果も大きいはず。2023年型ホークス打線が6月23日のリーグ再開から、さらに猛威を振るいそうだ。

文・ 田尻耕太郎

1978年生まれ、熊本市出身。法政大学卒。ホークス球団誌の編集を経て、2004年夏にフリーに。一貫して「タカ番」スタイルの現場主義を大切に取材活動を続けており、2021年にちょうど20年目のシーズンを迎えた。「Number」など雑誌・ウェブ媒体への執筆のほか、ラジオ出演やデイリースポーツ特約記者も務める。

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