日本シリーズ出場チームを決める『2021 JERA クライマックスシリーズ セ』が6日開幕する。セ・リーグ2位の阪神タイガースと3位の読売ジャイアンツがファーストステージを戦い、優勝チームである東京ヤクルトスワローズがファイナルステージで待ち受ける。
ペナントレースでは激しい優勝争いを演じてきたヤクルトと阪神、さらには昨年の王者である巨人がどのような戦いを見せるのか?DAZNで解説を務める秦真司氏に、セ・リーグのCS優勝争いの展望を語ってもらった。
※インタビューは10月28日に実施
青柳vs菅野が突破の鍵
──クライマックスシリーズ(CS)が6日から開幕を迎えます。日本シリーズ出場をかけた大事な戦いですが、見どころはどこになるでしょうか?
秦真司(以下、秦) CSや日本シリーズなどの短期決戦はチームの勢いが大事で、いかに初戦を制するかが大きな鍵を握ります。
セ・リーグは巨人と阪神がファーストステージを戦います。3試合しかない超短期決戦で、神経をすり減らす戦いをするわけですから、勝ち上がると勢いが出てきます。待ち構えるヤクルトにとっては、下位チームの勢いは注意しなければいけません。
──短期決戦だからこそ、1試合目に勝つことが重要ですね。
秦 2勝したほうが突破するファーストステージなので、先に勝ったほうが有利なのは当然です。短期決戦だからこそ、お互いに良い投手から順番に起用してくるでしょう。おそらく阪神は青柳晃洋、巨人は菅野智之。両チームのエースがぶつかり合う初戦を、勝った方が有利になります。
──そうなるとお互いにキーマンは、初戦を投げる青柳投手と菅野投手になりそうですね。
秦 巨人のキーマンは、間違いなく菅野です。彼で落とすようなことがあれば、巨人の勝ち上がりはないと思っています。仮に勝ち上がったとしても、菅野が本調子でなければ、ヤクルトを倒して日本シリーズに出場することはないでしょう。
巨人の精神的支柱だからこそ、彼が勝つとチームに勢いが出てきます。しかし負けると、一気に不安定さが露呈してしまいます。特に投手陣はぐらついてしまうでしょう。
本来であれば、投手陣がダメでも野手陣で跳ね返したいところですが、今の巨人だとそれは難しい。なかなか点が取れないだけに、投手陣が粘って投げるしかないです。巨人の運命は、初戦を任される菅野に、託されています。
──阪神のキーマンはいかがですか?
秦 阪神も青柳に期待がかかっていますが、個人的には高橋遥人が投げられるかどうかがポイントだと思っています。
──高橋投手はリーグ戦の最終登板で左肘の違和感を訴えていました。
秦 彼が投げられるか、投げられないかは大きく違います。今シーズンの巨人戦では2試合を投げて16回無失点と、圧倒的な投球を見せました。おそらく投げるとすれば2試合目になるでしょう。
例えば、青柳で落としたとしても、高橋がその流れを止めることができる。青柳が勝てば、高橋で連勝して勝ち上がる。どんな結果で回ってきたとしても2試合目に高橋が投げることが、阪神にとっては大きなポイントになります。
──高橋選手が登板できるならば、ファーストステージは阪神が有利?
秦 有利ですね。特に上位チームはレギュレーション上、引き分けも勝ちに等しい。阪神としては勝ちを目指しながらも、「同点でOK」の状況が出てきます。そうなるとやはり阪神が有利ですね。ただ、高橋が投げられないと、状況は大きく変わってきます。ましてや1試合目を落としてしまうと、巨人の勢いに負けてしまうことになるでしょう。
──今季の対戦成績を見ると阪神が勝ち越しています。
秦 阪神が13勝9敗で勝ち越しています。ただ、甲子園では6勝6敗と五分なので、そこがどう影響するか。おそらく、点の取り合いにはならないと思います。お互いに少ないチャンスからどう1点をもぎ取るかが大事になってきます。
──投手戦になる?
秦 甲子園球場は広いので、打ち合いになるとは思えません。短期決戦なので、お互いにどんどん投手を注ぎ込む戦いになるでしょう。投手は無駄なフォアボールを出さない、守備はエラーをしない、野手はバントなどの細かな部分で失敗しない。そういう野球ができるかが明暗をわけると思っています。
例えばノーアウト2塁の状況で、しっかりと送って1アウト3塁を作れるか。次の打者が犠牲フライでランナーを返すことができるか。短期決戦だからこそ、普段以上に細かな野球の出来が勝敗を左右します。ミスをなくし、流れを掴むことが大事です。
ヤクルトが有利な理由
──ファイナルステージで待ち構えるヤクルトについてはいかがでしょうか?
秦 レギュラーシーズンの流れを考えるとヤクルト有利に見えますが、優勝したこと自体が落とし穴になる可能性もあります。どんなチームでも、優勝すると安堵感や気の緩みが出てしまいます。そこを引き締め直してファイナルステージに挑めるかがポイントですね。
前回(2015年)の優勝からメンバーも変わり、全体的に若返っています。苦しいレギュラーシーズンを戦い抜いて優勝したことで、どこかほっとしてしまう部分が絶対にあります。そこの気の緩みを締め直さなければいけません。
また優勝したチームはファイナルステージからなので、他のチームよりも1週間ほど実戦から離れてしまう。そこも難しさの1つです。
一方では、ファーストシリーズで負ければ終わりのヒリヒリした試合を戦っています。緊張感のある試合を経験して、勝ち上がってくることで状態はかなり上がっているでしょう。ヤクルトも紅白戦で調整しますが、試合勘を取り戻すのは実戦じゃないと難しい。その勢いを受け止められるかがポイントになるでしょう。
──下から勝ち上がったチームが、勢いで制する下克上はこれまでに何度もありました。
秦 やはりここでも初戦の結果が大事になってくる。ヤクルトにとっては1勝のアドバンテージがあるので、1戦目に勝つとかなり有利です。仮に負けたとしても2試合目で勝てればリードできます。
ファーストステージを勝ち上がったチームは、勢いのままに勝ち続けるしかありません。ヤクルトは、最低限2試合で1つを取るつもりで戦うでしょう。2連敗を喫すると、巨人なら菅野、阪神なら青柳と、各チームのエース級が出てくるので、ヤクルトとしては一気に苦しくなります。
──そうなるとヤクルトのキーマンは、第1戦や第2戦に投げる投手?
秦 そうですね。おそらく奥川恭伸と高橋奎二が投げるでしょう。今年育って活躍した両投手が、シーズンの勢いそのままに投げられるか。彼ら2人の活躍は、その後の日本シリーズを考えても必須です。
ベテランである石川雅規や小川泰弘の調子があまり良くありません。外国人投手も含めて、高津臣吾監督が、どういう順番でぶつけてくるのか楽しみですね。セオリーは、状態が良い選手の順番です。
──ヤクルトといえば強力な中継ぎ陣が控えています。7回の今野龍太投手、8回の清水昇投手、9回のマクガフ投手で勝利の方程式が確立されました。
秦 今年の躍進は、中継ぎ陣のおかげだと言っても過言ではないでしょう。特にシーズン中盤から終盤にかけて、中継ぎに助けられた場面が多かったです。監督含めて、中継ぎへの信頼は高いはず。
延長戦がなく上位チームにとっては引き分けも勝ちと同等である点を考えても、中継ぎが充実しているヤクルトがかなり有利です。先発は最小失点で抑えて、中継ぎにバトンを渡すことに集中できる。継投に持ち込めば、ヤクルトのペースになると思います。
──野手陣でキーマンは?
秦 レギュラーシーズンでは1番、2番の出塁が鍵を握っていました。ただ、巨人も阪神もそこはかなり警戒してくるでしょう。短期決戦ということも加味すると、勝負強い山田哲人がキーマンです。
侍ジャパンでは1番を務めたように、自身で切り込んでいける強さもある。ランナーを進めるチャンスメーカーにもなれるし、ポイントゲッターにもなれる。打線の軸である山田が出塁することで、チームとしての勢いが出るので、CSでの活躍に期待しています。
──山田選手は2015年に優勝したときのメンバーでもあり、経験の部分でも期待できますね。
秦 ヤクルトの精神的支柱だと思います。CSはレギュラーシーズンよりも相手投手の精度が高いですし、モチベーション高く攻めてきます。投手交代の頻度も多いはずで、打者にとってはアジャストするのが難しい。
そこで山田が自分の仕事ができるか。彼が出塁することで、後の村上宗隆も生きてくる。シングルヒットはOKのような攻め方をしてくるかもしれませんが、山田の場合は足もある。彼の機動力がかなり大きなポイントになります。
──短期決戦では流れを変える控え選手も大事になると思います。
秦 ヤクルトでは川端慎吾が代打として活躍しています。打率.366の成績を残し、代打のプロ野球記録に迫る30安打を残しました。総力戦になるので、彼のような控え選手がいる点も大きいです。
特にセ・リーグでは、チャンスで投手に打順が回ってきたときの駆け引きが大事。そこのチャンスで活躍できるかどうかで勝敗が分かれることが多いです。他のチームではそういう脇役が見当たりませんが、ヤクルトは自分の役割を全うできる選手が多いです。
さらにチーム全体が明るいのも利点です。1つのプレーに対して、誰もが一生懸命に取り組んでいるように見える。その必死さが、チームに良い影響を与えています。
──そうなるとやはりセ・リーグ王者のヤクルトが強そうですね。
秦 当然ですが、ゲーム展開によって変わる難しさがあります。ただ、今年の勢いを考えるとヤクルトでしょう。ここ数年で投手が育ち、充実度や上昇度を含めて考えるとヤクルトが有利です。
ただ、下位チームにもチャンスはある。やはり短期決戦はいかに勢いを持って臨むかなので、巨人と阪神はファーストステージで勢いが付く勝ち方をしたいですね。
当たり前のことが他チームよりできていること。当たり前のこととは、次の塁を目指して全力でプレーするや、一塁まで全員が全力疾走していることなど。これができるチームが、優勝するふさわしいチームだと感じます。
インタビュー・構成=川嶋正隆
1986年5月9日生まれ、福岡県福岡市出身。大学卒業後に携帯サイト『超ワールドサッカー』のライター兼編集者として勤務。2018年からフリーライターとしての活動を開始し、『フットサル全力応援メディアSAL』の立ち上げに参画。2018年には、Fリーグに参戦したロベルト・カルロスの単独インタビューを行った。現在は『ABEMA TIMES』などに寄稿している。
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