アメリカンフットボールの米プロリーグ、NFLの第87回ドラフトが4月28〜30日の3日間、ネバダ州ラスベガスで開催され、1巡目から7巡目まで合わせて262選手が指名を受けた。
ジャクソンビル・ジャガーズが選択権を持っていた注目の全体1位指名は、ジョージア大のDEトレイボン・ウォーカー。ドラフト前はミシガン大のDEエイダン・ハッチンソンも高評価を集め、指名予想が二分していたが、ジョージア大の全米制覇に貢献し、より大きなポテンシャルを秘めていると評判のウォーカーがいの一番で指名された。過去4年はQBの1位指名が続き、ディフェンスの選手が選ばれたのは、2017年のDEマイルズ・ギャレット〔クリーブランド・ブラウンズ〕以来5年ぶりだった。
ジャガーズは昨年のドラフトで、これも全体1位でQBトレバー・ローレンスを指名しており、攻守に絶対的な主軸となりうるビッグタレントが揃った。スーパーボウル優勝の実績を持つダグ・ピーダーソンHCを新たに迎え、チーム再建への土台は整ったと言えるだろう。
ジャガーズが見送ったハッチンソンは、デトロイト・ライオンズが全体2位で指名。ミシガン大のハッチンソンにとってライオンズは地元チーム、ライオンズにとってハッチンソンは地元のヒーローで、いわば相思相愛の指名となった。
3位はヒューストン・テキサンズがCBデレク・スティングリー・ジュニア〔ルイジアナ州大〕、4位はニューヨーク・ジェッツがCBソース・ガードナー〔シンシナティ大〕、5位はニューヨーク・ジャイアンツがDEケイボン・シボドー〔オレゴン大〕を指名し、トップ5の指名がすべてディフェンス、しかもDEとCBだったのは、パス攻撃全盛の時代の反映と言えるだろう。パスラッシャーのDEとパスカバーのCBは、相手のパスアタックに対抗する重要なポジションだ。
そのパスラッシャーからQBを守るTのイケム・エクウォヌ〔ノースカロライナ州大〕をカロライナ・パンサーズが6位で、エバン・ニール〔アラバマ大〕をジャイアンツが7位で、チャールズ・クロス〔ミシシッピ州大〕をシアトル・シーホークスが9位で指名すれば、8位のアトランタ・ファルコンズ、10位のジェッツ、11位のニューオリンズ・セインツ〔ワシントン・コマンダースとトレード〕、12位のライオンズ〔ミネソタ・バイキングスとトレード〕は、パスアタックの核となるWRを立て続けに指名。ファルコンズはドレイク・ロンドン〔南カリフォルニア大〕、ジェッツはギャレット・ウィルソン〔オハイオ州大〕、セインツはクリス・オラベ〔オハイオ州大〕、ライオンズはジェイムソン・ウィリアムズ〔アラバマ大〕を選択した。
WRの指名でサプライズを提供したのがテネシー・タイタンズだ。リーグ屈指の実力者でエースWRのA.J.ブラウンを放出するドラフト当日のトレードでフィラデルフィア・イーグルスの18位指名権を得ると、そのブラウンの後継者としてトレイロン・バークス〔アーカンソー大〕を指名する大胆な策に打って出た。
それ以上に話題をさらったのはジェッツだ。全体4位と10位に続いて、タイタンズとのトレードで26位の指名権を獲得してDEジャーメイン・ジョンソン〔フロリダ州大〕を指名。3つの1巡指名で、CB、WR、DEと攻守のキーポジションに評価の高かったビッグタレントを迎え入れ、大きな戦力アップを果たしている。昨年のドラフト全体2位で獲得したQBザック・ウィルソンが2年目の成長を遂げれば、ジェッツは躍進が期待できる。
QBは不作という前評判どおり、1巡指名は全体20位で地元のピッツバーグ・スティーラーズに選ばれたピッツバーグ大のケニー・ピケットただひとり。2巡目の指名はなく、3巡目でも3人が指名されただけだった。3巡目10位でファルコンズがデズモンド・リッダー〔シンシナティ大〕、同22位でタイタンズがマリク・ウィリス〔リバティ大〕、同30位でパンサーズがマット・コラル〔ミシシッピ大〕を選択した。
1巡指名の32人は、オフェンスが16人、ディフェンスも16人で、ポジション別ではWRの6人が最多。大学別では、全米王者ジョージア大の5人の指名が最多で、しかも全体1位のウォーカーを筆頭にすべて優勝への大きな原動力となったディフェンスの選手だった。ひとつの大学から5人の守備選手が1巡で指名されたのは史上初めてのことだ。
文・松野敏史(まつの・としふみ)
「ワールドサッカーダイジェスト」と「サッカーダイジェストWEB」で副編集長を務める。2020年4月にフリーランスのライター、編集者、翻訳者として独立。プレミアリーグを中心としたヨーロッパのサッカーに精通し、NFL、NBA、MLBなどアメリカのプロスポーツへの理解も深い。スポーツに限らず物事を多角的に捉え、本質を掘り下げることに興味と関心がある。
NFL ドラフト 2022 日程
開催日 | 時刻 | 配信内容 |
---|---|---|
4月29日(金) | 9:00 | 第1日 |
4月30日(土) | 8:00 | 第2日 |
5月1日(日) | 1:00 | 第3日 |
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