若手が台頭する女子ゴルフ界で、一度調子を落とした選手が這い上がることは、想像以上に難しい。シード選手の平均年齢は低下傾向。20代前半の全盛期の選手が年間タイトル争いの先頭を走る。ツアー関係者やファンから”キンクミ”と親しみを込められる33歳は、そんな厳しい舞台で、復活劇を演じた。
武蔵丘ゴルフコースの18番に、乾いたカップの音が鳴った。目元を抑え、涙を拭う金田のもとに仲間たちが駆け寄ってきた。ウォーターシャワーの手洗い祝福。見守る観客は、温かい拍手を送り続けた。大会名誉会長の樋口久子さんが、地獄を見た”元天才少女”を出迎えた。
SNS上では多くのプロゴルファーが祝福のコメントを残した。横峯さくら、古江彩佳、堀琴音、藤田光里、大西葵、ツアー競技からは遠ざかるが大江香織らも賛辞を送る。派手な見た目で勘違いされるが、人懐っこく優しい性格の持ち主。ツアー内外に多くの仲間がいる。
12歳9カ月という若さで国内ツアー予選通過を果たし、天才少女として注目を集めた。2011年「フジサンケイレディス」で初優勝を挙げると躍進を予感させた。しかし、繊細なゴルフというスポーツにおいて一度スイングが乱れると、感覚を取り戻すのはとても難しい。復調せずに消えていく選手の方が多いかもしれない。天才的な感覚で目覚ましい成長を遂げていた金田にも不調と向き合う時間がやってきた。
自らの調子との戦いを続ける中で、年齢は重ねていく。2016年に賞金ランキング50位でシードに滑り込んだのを最後に翌シーズンからシード落ち。自信を失い、腰痛に苦しんだ。ゴルフ場に来ると吐き気がした。
頻繁に投稿したSNSは、時代の流れも重なり、批判的な声も目立った。数年前に「SNSなんてやってないで練習しろって書き込みを見たりすると躊躇しちゃう。(自分が批判を受けることで)スポンサーさんのことを思ったりすると…」。自分を表現できない時期もあったという。
長いプロ生活の中で、酸いも甘いも知った。キャリアを重ねると、自らの調子と反比例するように背負うものは年々、大きくなっていく。今季の平均飛距離は222.10ydで全体94位だった。それでも毎週のように若手たちがリードする優勝争いに割って入ったのは、復活への執念。11年分の思いが涙に変わり、多くの人の心を打った。
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