今年もいくつものドラマが生まれたJLPGAツアー。21歳の山下美夢有は最年少で年間女王に輝き、新たな記録を打ち立てた。ツアールーキーたちは初優勝をマークし、新たなヒロイン候補へ名乗りを挙げた。その中で印象的だった、涙を誘ったベテランたちの復活優勝を振り返る。
ゴルフの魅力は「老若男女が一緒に楽しめるスポーツ」と言われるが、もちろんプロの世界は違う。女子ゴルフ界にパワーやアグレッシブさが求められる時代が到来して久しい。世界のゴルフ界の潮流に沿うようにJGAを中心とした育成システムが成熟してきた。若くて有望な選手が、パワーとともに確かな技術力を身につけプロの世界へどんどん流れ込んでいる。
黄金世代やミレニアム世代、新世紀世代と各年代で有望株を揃えた選手らがプロゴルフ界の顔ぶれを大きく変えた。争いに敗れた者はツアーを去る。プロの世界では当たり前の話だろう。それでも、その激しい時流に抗おうと結果を出し続けるプロたちがいる。
4月の「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」で当時35歳(現在36歳)の上田桃子がトロフィーを掲げた。かつて主戦場にした米ツアーから撤退し、数年前には下降線を辿った時期もあったキャリアだが、見事な復活を遂げている。さらに7月の「大東建託いい部屋ネットレディス」では、上田に続けと言わんばかりに34歳の菊地絵理香が優勝を挙げた。
もちろん2人の優勝もすごいが、誰もが驚いた復活劇はシーズン終盤に訪れた。10月末の「樋口久子 三菱電機レディス」。かつてギャルファーと言われた金田久美子が11年189日ぶりとなる最長ブランク優勝を成し遂げた。
2位に3打差をつけ単独首位で迎えた最終日。何があるかわからないのが最後の18ホールなのだ。3日間の争いでは、初優勝が懸かる選手や優勝から遠ざかっている選手が、36ホール終了時点まで首位に立つことは決して珍しくない。しかし残りの18ホールでプレッシャーから崩れる。結果的に優勝慣れした選手が、トロフィーを掲げることは業界の”あるある”だ。
追うのはルーキーながら2勝をマークしていた好調・川崎春花。大半の予想は「川崎有利」だったかもしれない。しかし金田の執念が、それらを上回った。川崎と一進一退の攻防を続けながら迎えた17番で残り160ydを7Iで1mにつけてバーディ。腰痛にも苦しみ、絶不調に陥った時期もあったショットで勝負を決めた。
前回優勝したのは2011年4月の「フジサンケイレディスクラシック」。ウィニングパットを沈めると長い年月の重みを噛み締めて涙を流した。派手な見た目だが、人懐っこい性格の金田の復活を喜び、多くのプロや関係者も涙した。
さらにシーズン最終盤にもドラマが訪れた。11月の「大王製紙エリエールレディスオープン」。2度の賞金女王に輝いた鈴木愛との優勝争いを制し、11年35日ぶりにタイトルを獲得したのが36歳の藤田さいきだった。
事実上2人に絞られた優勝争いは、見事なまでのバーディ合戦になった。首位から出た鈴木は4バーディ、2ボギーの「69」で最終日を回り、通算20アンダーまで伸ばした。ただ、藤田が「67」で回り通算21アンダーで逆転。最終18番で1.2mの微妙なパーパットを沈めると、その場にしゃがみ込んで涙を流した。
来季も若手が牽引するツアー全体の構図は変わらないだろう。金田や藤田とったベテランたちの優勝はシーズンの年間タイトル争いなどへの影響は小さいかもしれない。ただ、ベテランたちが見せる意地や執念は、多くの人たちの心を打つドラマになり、ツアー全体を引き締めるスパイスとなるのだ。
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