昨年のオーガスタナショナルGC。2年連続で予選落ちを喫したブルックス・ケプカの苛立ちは限界を超えた。ボロボロの膝が言うことを聞かない。プライドはズタズタだった。「もうゴルフをやめよう…」。宿舎の駐車場で車の窓ガラスを殴り割ろうとした。
批判を結果で黙らせてきた自負がある。「メジャーで優勝する方が簡単だ」。かつてこんな発言でバッシングを浴びた。毎週のようにある通常のトーナメントよりメジャーは照準を合わせやすい、という意味での発言だった。口数は少なく、うまい弁明もしない。失言からかPGAツアーではヒール役だった。そんなキャラクターが一層に不甲斐なさを募らせた。
2017〜19年の間にメジャー4勝をマーク。しかし左膝の手術に始まり、2021年に右膝も手術した。手首や腰も痛めた。身体の状態は「地獄」。21年2月を最後に鋼の肉体を持つ男は、勝てなくなった。
昨夏LIVゴルフに移籍した。サウジアラビア政府系のファンドが支援し法外な移籍金でPGAツアーの選手らを勧誘する姿勢に批判が殺到していた。試合フォーマットも議論の対象でPGAツアーやメジャー大会より18ホール少ない3日間54ホール競技で破格の賞金がかかった。「金に魂を売った」「競技者としてのキャリアは終わった」。ケプカのもとにも批判が届いた。
プロゴルファーが個人事業主である以上、彼らの選択の自由は尊重されるべきだろう。天秤がお金であっても。ただケプカにはお金だけではない理由があった。
「間違いなくLIVのスケジュールが手助けしてくれたんだ」。そう頷いたのは、膝の状態が改善に向かった理由を問われたとき。試合が詰まるPGAツアーと比較して、日程にゆとりがあったLIVゴルフは魅力的だった。
ゴルフ界を二分する勢力のわだかまりは薄まったとは言え、いまだ渦巻く。「全米プロゴルフ選手権」でLIV勢としてのメジャー初優勝、そして自身4年ぶりのメジャー優勝を遂げたケプカは、周囲の雑音を黙らせるかのようにこう言った。「LIVゴルフにとって意味のある優勝だと思う。でも俺は個人で戦い、そしてメジャーで勝てたことが嬉しいんだ」。
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